見もの・読みもの日記

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極上のアクション/映画・孫文の義士団

2011-04-30 13:25:57 | 見たもの(Webサイト・TV)
○ピーター・チャン制作/テディ・チャン監督『孫文の義士団』(シネマスクエアとうきゅう)

 気になっていた映画をようやく見ることができた。2009年、中国では、建国60周年を記念し、大作映画の制作が相次いだ中で、いちばん見たかった作品である。原題の『十月圍城(十月囲城)』で検索をかけ続けたが、なかなか日本公開の情報が上がってこない。ちょっと忘れかけていたら、こんな日本語タイトルで公開が始まっていた。

 舞台は、1906年10月、イギリス領香港。日本亡命中の革命家・孫文が、中国各地の同志と会談するため香港を訪れる。その情報を聞きつけた西太后は、香港に総勢500人の暗殺団を放つ。一方、香港の活動家たちは、孫文を守るための手立てを打つ。港から密談の場所まで孫文を送り届け、そのあとは、影武者を載せた人力車を引いて、孫文の母の家へ向かうと見せかけ、暗殺者との死闘を1時間耐えぬく決意を固めた。

 前半は、この孫文ガード計画にかかわることになった人々の人間模様が描かれる。国家の将来を憂い、心から革命蜂起を支持する活動家もいれば、むしろ友情や家族愛に引かれて、計画を支援せざるを得なくなった者もいる。孫文が何者であるかも知らないまま、ただ自分が愛し、信頼する者のため死地に赴く者。ずっと死にどころを求め続けていた者。暗殺団の首領にも、清朝国家に忠誠を誓った「義」がある…。むろんこの前半にも、豪快なアクションシーンが随所に挟まれていて、飽きない。

 後半、いよいよ孫文が港に到着し、暗殺団が牙をむくと、動体視力が追いつかないようなアクションシーンの連続。爆発シーンもあるけど、基本的には肉体勝負のカンフーとソードアクション(殺陣)である。うう、すごい。見せ方がすごい。そして、ボディガードたちは、ひとり、またひとりと倒れていく。この乾いた感じが好きだ。

 ネタバレをすると、死闘の前面に立った若者たちは全て死し、中年過ぎの活動家と老年の商人だけが残される。革命同志との会談を終えた孫文は、何事もなかったかのように帰っていく。最後の画面に、翌年以降、中国各地で相次いだ蜂起と、辛亥革命に至る年譜が表示され、この日の孫文の会談が実を結んだこと、したがって、若者たちの死が無駄ではなかったことが、なんとなく示される。とは言っても、その後の日々を、遺された家族たちが、どう過ごしたかは分からない。基本はエンターテイメント作品なので、あまり気にする必要はないのだけど、大文字の「歴史」に対する諦念みたいなところが、中国の伝統的な死生観に連なっている感じがする。好みは分かれると思うが、私は好きだ。

 どこかの映画評ブログにも書いてあったけど、男性客が多かった。やっぱり女性には受けないのか、こういう映画。実はイケメン俳優も出てるんだけど、見事に汚れた格好してるものなあ。ニコラス・ツェー(謝霆鋒)は車引きのあんちゃんだし、レオン・ライ(黎明)なんか道に寝転ぶレゲエのおじさん(ホームレス)ですからね。私はフー・ジュン(胡軍)が好きなんだが、今回は暗殺団の首領役で、見事に怖い。

 見どころとして落とせないのは、20世紀初頭の香港の街並みを再現した美術のすごさ。公式サイト(日本語)の「特別動画」によれば、当時の写真を参考に8年かけて(!)構想されたもので、各棟の住民の数、家族構成まで、細かく指定されており、カメラに映らない部分まで完璧を期しているという。私は一度だけ香港に行ったことがあるので、お、あの坂道には見覚えが…なんて、古い記憶をたどっていたのだが、全てセットだった。こういうものを「つくる」ことに対して、中国人の本気はすごい。保存は気にかけないのが国民性なんだけど。

『十月圍城』公式サイト(繁体中文版、簡体中文版、英語版へ)
ん? 繁体中文版(大陸向け)と、簡体中文版(台湾向け)・英語版で、BGMが異なるのが面白い。

中国語:百度百科「十月围城」
配役、見どころ、原型となった人物と事件などについて、詳しい。

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