見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

挿絵本のたのしみ/うらわ美術館

2005-12-26 12:35:23 | 行ったもの(美術館・見仏)
○うらわ美術館 『挿絵本のたのしみ-近代西洋の彩り』

http://www.uam.urawa.saitama.jp/

 3連休の1日くらい、遠出しようと思っていたが、結局、昼まで寝過ごしてしまったので、比較的、家から近いこの展覧会に出かけた。初めて行く美術館だったが、駅前の大通りに面した瀟洒なビルで、ホテルやレストラン、ショッピングモールが同居している。ちょっとびっくりしたが、これはこれで、なかなかよろしい。

 この展覧会は、19世紀から20世紀初頭の挿絵本を集めたものである。博物学の図譜、旅行記、子供向きの歴史絵本、詩集、観光案内、カリカチュアなど。いや~美しい。オリエンタリズム、ジャポニズム、アール・ヌーヴォー、アール・デコ、モダニズムなど、さまざまな「モード(流行)」が錯綜する。

 初期の挿絵本は、多くが手彩色である。18世紀の色彩印刷は複雑で、女子供に手仕事で彩色させるほうが安上がりだったらしい。19世紀になるとカラー印刷が増える。1852年、オーストラリアで特許を取得した「ネイチャー・プリント」という技法は、細密な原画を再現できるもので、各種のボタニカル・アート本に用いられた。コロタイプとか、ポシュワールとか、よく分からないけど、印刷用語って響きが可憐である。

 私が西洋の挿絵本の美しさを知ったのは、80年代の荒俣宏氏の仕事に手引きされてのことだった。同氏の『絵のある本の歴史-Books beautiful』(平凡社, 1987)は、もちろん私の愛蔵本である。しかし、荒俣さんが熱烈な賛辞を添えて紹介していた挿絵本のホンモノに、20年を経て、出会うことができるなんて、思ってもいなかった!

 最初に記憶がよみがえったのは、シドニー・H・メティヤード(かな?)画『黄金伝説』という本。朝焼け色に全身を染めた、翼ある乙女たちが、白い雪山を越えて行く図版が開いているのを見て、ああ、これは、数ある”Books beautiful”の中で、私がいちばん好きだった挿絵だ!と思い当たった。

 それから、マリオ・ラボチェッタ画の『ホフマン物語』。写真パネルにある表紙は、まさに『絵のある本の歴史』の表紙に使われていた図版である(現物は別のページが開けてある)。さらに、グランヴィル画の『星々』『生きている花々』は、本を立てて展示してあるので、装丁の全体を眺めることができて感激。19世紀半ばの刊行だが、すごく状態がいい。大事にされているんだなあ。展示品のほとんどは「個人蔵」とあったけど、一体、誰の持ち物やら?

 残念なのは、どの本も見開き1ヵ所の挿絵しか見ることができないこと。閉じられたページの奥に、まだまだ、どれほど豊穣な世界が広がっているのか、想像すると羨望と焦燥に駆られる。でも、全てを味わうことは本の持ち主だけの特権なのね。

コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ぜいたくなノート/ナショナ... | トップ | 翻訳-自己を映す鏡/漢文脈... »
最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
伴睦人コレクション (挿絵好き)
2006-01-02 22:54:51
伴睦人さんという方の蔵書だと知ってびっくりしました。

http://www003.upp.so-net.ne.jp/ehon/

を見てください。

結局、どんな人かはわからないけど。
返信する
ありがとうございます。 (jchz)
2006-01-07 12:03:13
あ、伴睦人さん!って、実体は、私もよく知りませんが、この名前は、荒俣宏さんの本でも出会った記憶があります。SF作家のヴァン・ヴォークトをもじった名前なんですよね。
返信する
教えて (挿絵好き)
2006-01-27 07:44:33
荒俣さんが、伴睦人さんのことを書いてるとは知りませんでした。よんでみたいなぁ、なんという本ですか。
返信する
もうちょっとお待ちを (jchz)
2006-01-31 00:07:43
すいません。アイマイな記憶をたよりに発言してしまったのですが...。でも、「伴睦人」という名前に記憶はあるのです。探してみますので、どうか気長にお待ちを。
返信する
Unknown (Unknown)
2007-08-20 17:13:02
伴睦人さんは、ほとんど無名の映画監督です。
古井由吉氏原作の「杳子」を監督したことで、ちょっとだけ知られています。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

行ったもの(美術館・見仏)」カテゴリの最新記事