○うらわ美術館 『挿絵本のたのしみ-近代西洋の彩り』
http://www.uam.urawa.saitama.jp/
3連休の1日くらい、遠出しようと思っていたが、結局、昼まで寝過ごしてしまったので、比較的、家から近いこの展覧会に出かけた。初めて行く美術館だったが、駅前の大通りに面した瀟洒なビルで、ホテルやレストラン、ショッピングモールが同居している。ちょっとびっくりしたが、これはこれで、なかなかよろしい。
この展覧会は、19世紀から20世紀初頭の挿絵本を集めたものである。博物学の図譜、旅行記、子供向きの歴史絵本、詩集、観光案内、カリカチュアなど。いや~美しい。オリエンタリズム、ジャポニズム、アール・ヌーヴォー、アール・デコ、モダニズムなど、さまざまな「モード(流行)」が錯綜する。
初期の挿絵本は、多くが手彩色である。18世紀の色彩印刷は複雑で、女子供に手仕事で彩色させるほうが安上がりだったらしい。19世紀になるとカラー印刷が増える。1852年、オーストラリアで特許を取得した「ネイチャー・プリント」という技法は、細密な原画を再現できるもので、各種のボタニカル・アート本に用いられた。コロタイプとか、ポシュワールとか、よく分からないけど、印刷用語って響きが可憐である。
私が西洋の挿絵本の美しさを知ったのは、80年代の荒俣宏氏の仕事に手引きされてのことだった。同氏の『絵のある本の歴史-Books beautiful』(平凡社, 1987)は、もちろん私の愛蔵本である。しかし、荒俣さんが熱烈な賛辞を添えて紹介していた挿絵本のホンモノに、20年を経て、出会うことができるなんて、思ってもいなかった!
最初に記憶がよみがえったのは、シドニー・H・メティヤード(かな?)画『黄金伝説』という本。朝焼け色に全身を染めた、翼ある乙女たちが、白い雪山を越えて行く図版が開いているのを見て、ああ、これは、数ある”Books beautiful”の中で、私がいちばん好きだった挿絵だ!と思い当たった。
それから、マリオ・ラボチェッタ画の『ホフマン物語』。写真パネルにある表紙は、まさに『絵のある本の歴史』の表紙に使われていた図版である(現物は別のページが開けてある)。さらに、グランヴィル画の『星々』『生きている花々』は、本を立てて展示してあるので、装丁の全体を眺めることができて感激。19世紀半ばの刊行だが、すごく状態がいい。大事にされているんだなあ。展示品のほとんどは「個人蔵」とあったけど、一体、誰の持ち物やら?
残念なのは、どの本も見開き1ヵ所の挿絵しか見ることができないこと。閉じられたページの奥に、まだまだ、どれほど豊穣な世界が広がっているのか、想像すると羨望と焦燥に駆られる。でも、全てを味わうことは本の持ち主だけの特権なのね。
http://www.uam.urawa.saitama.jp/
3連休の1日くらい、遠出しようと思っていたが、結局、昼まで寝過ごしてしまったので、比較的、家から近いこの展覧会に出かけた。初めて行く美術館だったが、駅前の大通りに面した瀟洒なビルで、ホテルやレストラン、ショッピングモールが同居している。ちょっとびっくりしたが、これはこれで、なかなかよろしい。
この展覧会は、19世紀から20世紀初頭の挿絵本を集めたものである。博物学の図譜、旅行記、子供向きの歴史絵本、詩集、観光案内、カリカチュアなど。いや~美しい。オリエンタリズム、ジャポニズム、アール・ヌーヴォー、アール・デコ、モダニズムなど、さまざまな「モード(流行)」が錯綜する。
初期の挿絵本は、多くが手彩色である。18世紀の色彩印刷は複雑で、女子供に手仕事で彩色させるほうが安上がりだったらしい。19世紀になるとカラー印刷が増える。1852年、オーストラリアで特許を取得した「ネイチャー・プリント」という技法は、細密な原画を再現できるもので、各種のボタニカル・アート本に用いられた。コロタイプとか、ポシュワールとか、よく分からないけど、印刷用語って響きが可憐である。
私が西洋の挿絵本の美しさを知ったのは、80年代の荒俣宏氏の仕事に手引きされてのことだった。同氏の『絵のある本の歴史-Books beautiful』(平凡社, 1987)は、もちろん私の愛蔵本である。しかし、荒俣さんが熱烈な賛辞を添えて紹介していた挿絵本のホンモノに、20年を経て、出会うことができるなんて、思ってもいなかった!
最初に記憶がよみがえったのは、シドニー・H・メティヤード(かな?)画『黄金伝説』という本。朝焼け色に全身を染めた、翼ある乙女たちが、白い雪山を越えて行く図版が開いているのを見て、ああ、これは、数ある”Books beautiful”の中で、私がいちばん好きだった挿絵だ!と思い当たった。
それから、マリオ・ラボチェッタ画の『ホフマン物語』。写真パネルにある表紙は、まさに『絵のある本の歴史』の表紙に使われていた図版である(現物は別のページが開けてある)。さらに、グランヴィル画の『星々』『生きている花々』は、本を立てて展示してあるので、装丁の全体を眺めることができて感激。19世紀半ばの刊行だが、すごく状態がいい。大事にされているんだなあ。展示品のほとんどは「個人蔵」とあったけど、一体、誰の持ち物やら?
残念なのは、どの本も見開き1ヵ所の挿絵しか見ることができないこと。閉じられたページの奥に、まだまだ、どれほど豊穣な世界が広がっているのか、想像すると羨望と焦燥に駆られる。でも、全てを味わうことは本の持ち主だけの特権なのね。
http://www003.upp.so-net.ne.jp/ehon/
を見てください。
結局、どんな人かはわからないけど。
古井由吉氏原作の「杳子」を監督したことで、ちょっとだけ知られています。