〇SOI(スターズ・オン・アイス)Japan Tour 2023 横浜公演(2023年4月9日 13:00~、横浜アリーナ)
久しぶりにフィギュア・スケートを生観戦してきた。昨年7月のTHE ICE愛知公演以来である。11月に札幌のNHK杯を見に行くつもりでチケットを取り、宿とフライトも確保していたのだが、身内に不幸があって行かれなかった。まあそんなこともある。その後、プロに転向した羽生くんの怒涛のショーラッシュが続いたが、都合がつかなかったり、狙ったチケット抽選に落選したりしていた。そんな中で、なぜかこのショーは、発売開始からしばらく経ってもチケットが残っていて、楽に取れたのである。
男子は、羽生結弦、宇野昌磨、三浦佳生、友野一希、ジェイソン・ブラウン、山本草太、イリア・マリニン、島田高志郎。女子は、坂本花織、宮原知子、ルナ・ヘンドリックス、三原舞依、渡辺倫果、島田麻央。ペアは、アレクサ・クニエリム&ブランドン・フレイジャー、三浦璃来&木原龍一(りくりゅう)。アイスダンスは、マディソン・チョック&エヴァン・ベイツ(チョクベイ)、パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ。かなり贅沢な面子だと思う。
しかし横浜公演に先立つ大阪公演、奥州公演では、羽生くんが日替わりで「オペラ座の怪人」「阿修羅ちゃん」「あの夏へ(千と千尋の神隠し)」を滑ったことが、圧倒的に話題を独占してしまった。横浜だけ全4日の日程が組まれていたので、千秋楽は何を滑るか、わくわくしながら見に行った。
ほかの出演者については、あまり事前の情報を得ていなかったので、会場でいろいろ発見があって楽しかった。三浦佳生くんの「美女と野獣」は、ショーとは思えない構成とスピードで攻めまくる感じが好き。友野一希くんの「こうもり」は軽快で楽しい。宮原知子ちゃんは、むかしステファン・ランビエールが滑っていたシャンソンの名曲「行かないで(ヌギッパ)」を披露。これが絶品。いま自分のブログを見返したら、知子ちゃんは、2022年のSOI東京公演で引退を表明したのだった。あまり話上手でなく、控えめな人柄なので、プロとしてやっていけるのか?と心配する声があったのが、今となっては嘘のよう。どんどん表現力に磨きがかかっている。
島田高志郎くんの「ムーラン・ルージュ(Come what may)」も、品よく色気があって美麗。ランビエール先生直伝のスピンだなあ、と感じる。さらに宇野昌磨くんは「パダム、パダム」で、全体にフランス成分多めで、会場にはいないランビエール先生の存在感を強く感じた。
「四回転の神」イリア・マリニンくんの演技は初めて見たが、決してジャンプだけの選手ではなく、ダイナミックで表現力豊かで見とれた。群舞では、日本の女子選手たちと一緒にベストにネクタイの制服姿で登場。「ハリー・ポッター」に出てくる男子学生の雰囲気で可愛かった。坂本花織ちゃんは、久しぶりに爽快な「マトリックス」が見られてテンションが上がった。この日はお誕生日で、観客からハッピーバースディの祝福も。三浦舞依ちゃんの「さくら」は、相変わらずあざといくらい愛らしい。小道具の花が文句なく似合う。あと、初めて見た島田麻央ちゃん、難しいジャンプをガンガン跳んでいてびっくりした。応援していきたい。
オーラスの羽生くんは「阿修羅ちゃん」だった。鬼のようなステップ!ステップ!ステップ!で魅せる実験的なプロ。いや、途中で助走もなくきれいなジャンプ(3Lo)が入るのだが、え?跳んだの?というくらいにしか記憶に残らない。あとはひたすら氷の上で高速ステップを踏んで、観客を煽りまくる。私は3階スタンド席だったけど、会場中が大喜びの大盛り上がり。これは、プル様の「セッボン(sex bomb)」の景色を思い出すなあ…と思った。このプログラム、超人的な運動量だと思うのに、フィナーレで再登場したら、さらっと4T跳んで見せてくれたのにも驚いた。いま、体力的にも技術的にも最高に油が乗っているんだろうなあ。
それから、大阪・奥州・横浜10公演をSNS発信で盛り上げてくれたジェイソンには深く感謝したい。出演者たちが退場口に消えたあと、最後に羽生くんとジェイソンが二人でリンクに戻り、手を取り合って挨拶していたのには納得。本当に楽しいショーだった。