〇三井記念美術館 『国宝雪松図と吉祥づくし』(2022年12月1日~1月28日)
新春恒例、国宝『雪松図屏風』がメインだが、吉祥づくしには、意外と中国美術が多かった。「長寿」「富貴」などの吉祥主題を好む伝統と、日本において唐物が貴重な贅沢品であったことが影響しているのかもしれない。冒頭の工芸品には、堆朱や堆黒の香合、青磁瓶、白磁皿など。あと、これは絶対に唐物だろうと思うと、永楽保全らの「〇〇写し」だったりする。
和ものの『牡丹蒔絵太鼓胴』は珍しかった。鼓胴は何度か見たことがあるが、太鼓胴(ケーキ型みたいな円筒)にも、こんなに装飾の美しいものがあるのだな。『玳玻天目(鸞天目)』(南宋時代)は、小ぶりで、逆三角形にキュッと締まった愛らしい茶碗。外側は黄茶に濃茶の網目を載せたような鼈甲文様。内側は同じ色調で、二羽の尾長鳥と蝶、梅を表現する。落ち着きのある高級感にうっとりした。
書画の展示室は、中央正面に応挙の『雪松図屏風』を立て、左右に和漢の絵画と工芸品を並べる。右側に沈南蘋の『松樹双鶏図』『藤花独猫図』2幅があるなと思ったら、左側にも沈南蘋が4幅。全て北三井家旧蔵で、表具も統一されており、一連のシリーズらしかった。ただ、どの作品も画面が簡素で、あまり沈南蘋らしいアクの強さは感じられなかった。真筆かどうか疑わしいと思ったが、野暮なことは言わないほうがいいのかもしれない。
右側の最奥には、伝・徽宗筆『麝香猫図』という作品があって驚いた(ただし、明時代・16~17世紀と付記)。体は白毛で尻尾は黒、額に黒丸があり、額から尻尾まで黒い線がつながっているのが、スカンクかハクビシンか、別の動物を思わせる。前足で竹の枝(?)を押さえてじゃれているようだが、あまり愛嬌はない。それでも解説に「尻尾のもふもふ感はなかなかのものだ」とあって笑ってしまった。本展、ときどき気になる解説文があった。
あとは、伝・牧谿筆『蓮燕図』『柘榴図』や、伝・梁楷筆『布袋図』などもあったが、これらもおおらかな気持ちで見るのがよいかと思う。ちょっと変わっていたのは、伝・秋月等観筆『寿老人図』で、なぜか四角い料紙に円を描き、その中を塗りつぶすように寿老人の姿を描いていた。三井家の歴代当主たちも七福神をよく描いているが、みんな巧い。絵画は必須の教養として習ったのだろうか。