見もの・読みもの日記

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想像で楽しむ茶室/茶道具取合せ展(五島美術館)

2023-01-20 23:07:55 | 行ったもの(美術館・見仏)

五島美術館 『館蔵・茶道具取合せ展』(2022年12月10日~2023年2月12日)

 まだお正月ののんびりした気分で見に行ったコレクション展。懐石道具・炭道具のほか、小堀遠州を中心とした武将や大名ゆかりの茶道具の取合せを展観する。はじめに豊臣秀吉、千利休、小堀遠州らの仮名書きの消息をきれいに表装した軸がいくつも出ていた。禅僧の墨跡とも平安・鎌倉の古筆とも違って、格段に親しみやすい味わいがある。

 全く忘れていたのだが、同館は2014年の正月にも『茶道具取り合わせ展』を開催している。私は簡単なメモしか残していないが、「古備前の徳利に赤絵金襴手の盃と盃台、祥瑞(染付)の徳利に黄瀬戸の盃」などが出ていた様子。今回は、古赤絵徳利と黄瀬戸盃が私の好みだった。毎回、学芸員さんが楽しんで取り合せていらっしゃるのだろうな。色絵阿蘭陀盃は今回も印象に残った。黄色いお腹の鳥が赤い線で描かれていて、子供のお茶わんみたいで可愛い。「阿蘭陀盃」と呼ばれているけれど、産地は一定しないのだそうだ。おなじみの名品、古伊賀水指「破袋」や鼠志野茶碗「峯紅葉」も出ていた。

 展示ケースの中に、茶室「冨士見亭」「古経楼」「松寿庵」の床の間の模型(原寸大)がしつらえてあったのも珍しくて目を惹いた。同館初めての試みかな?と思ったが、自分のブログで探したら、2013年にも展示されていた。3つの茶室は、いずれも五島慶太が作らせたもので、現在は五島美術館の庭園内にある(松寿庵は古経楼の一部)。「冨士見亭」の床の間は、いちばん伝統的な趣きで、千利休消息「横雲の文」が掛けてあった。「古経楼」は、茶室と思えない幅広の床の間で、無準師範墨蹟「山門疏」が掛かっていた。長文で文字の変化に富む墨蹟である。加賀藩主前田利常が東福寺から金500枚で購入したと伝わるそうだ。取合せは、墨蹟と同じく南宋時代の青磁鳳凰耳花生(砧青磁)。「松寿庵」は少しモダンな雰囲気で、伝・俵屋宗達筆『業平東下り図』に赤絵金襴手角瓢花生(明時代)という、和漢混淆の取合せだった。

 茶入の名品には複数の仕覆(布製の袋)が添えてあったり、名物裂の手鑑が出ているのも面白かったが、第2展示室は「茶の湯と古裂賞玩」がテーマで、かわいい布と布製品をたくさん見ることができて眼福だった。『西湖の茶壺』と呼ばれる陶器壺(明時代)には、口を覆う布製の蓋が付いていて、ドアノブカバーみたいな形状をしていた。赤絵金襴手人物文水注の外箱包み裂は、シンガポールを思い出すようなバティック(インドネシア製)だった。「孔雀イチゴ裂」とか「黒地星珊瑚文」とか、いま、展示品リストの文字面を見返しているだけでも楽しい気持ちになる。

 最後の『桐縫紋緞子貼付幔幕屏風』(江戸時代)は、類例の思い浮かばない珍しいもので、緑・青・赤・黒の四色の地色(×2)の各扇に桐紋をアップリケのように貼り付けた八曲屏風(この説明で合っているだろうか)。古い幔幕をリメイクした祝賀儀式用の屏風と推測されていた。

 展示ケースに全て畳を敷いて茶道具を並べていたのは、2014年と同じ趣向だが、とてもよかった。展示台が低めのせいもあり、茶室に座って、畳の上の茶道具を上から覗き込んでいるような気分になる。いつもこのスタイルがいいと思う。

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