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見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2022年12月関西旅行:大原、洛中大通寺

2022-12-05 22:47:59 | 行ったもの(美術館・見仏)

 土曜日、京博のあとは、久しぶりに大原観光に出かけることにした。いったん京都駅に戻って地下鉄で国際会館駅に出て、大原行きのバスに乗る。10年ぶりくらいかなあとぼんやり考えていたが、あとでブログをチェックしたら、2013年の初夏以来だった。

 終点の大原バス停で下り、左(西)へ行くと寂光院、右(東)へ行くと三千院というのは記憶どおりである。まずは寂光院へ向かう。豊かな自然を背景に人家や農地が続く「山里」の風景。このところ、仕事がキツくて高ストレス状態だった精神が少しほどけていく感じだった。

寂光院

 私が到着したときは、正面の本堂の中は拝観客でいっぱいで、お寺の方が熱心に説明をしていた。説明が一段落し、人が減ってから上がらせてもらった。ご本尊は彩色が目に鮮やかな地蔵菩薩立像。そうだ、平成の火災のあとで復刻されたお地蔵様だった。左右の奥に尼僧姿の建礼門院と阿波内侍の坐像がある。案内の方が「このお厨子は、人間国宝の江里佐代子さんが作られたもので、まだ新しいのであまり注目されていませんが、素晴らしい作品です」と絶賛していらした。前扉は金地に大原の野草を配したもの。そして案内の方が懐中電灯でお厨子の中を照らすと、左手の内壁に優美な藤の花が浮かび上がった。阿波内侍のお厨子の右手の内壁は、ススキと桔梗だったように思う。

 建礼門院徳子の大原西陵にも詣でていく。秋はこんなに紅葉がきれいなのだな。

■大原陵

 大原バス停まで戻って、三千院に向かう。門前の茶店で、にしんそばの昼食。おばあちゃんが一人で注文をさばいている小さな茶店だった。関東育ちの私は、たぶん大学生の頃、生まれて初めてにしんそばを食べたのが大原だったと記憶している。

 三千院の門前を素通りして、隣りの大原陵へ。いま大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも注目の後鳥羽院とその第三皇子・順徳院の御陵があるのだ。

 大原西陵もそうだが、ここも外側の出入口は開いていて、御陵の近くまで立ち寄ることできる。基本、平日でないと参拝できないと思っていたが、陵墓によるのかな。あるいは、最近、管理方針が変わったのだろうか。

 向かって右の十三重塔が後鳥羽院陵、左の順徳院陵は円丘であるという。後鳥羽院は配流先の隠岐で没して火葬されたが、侍臣が遺骨を京都に遷し、大原陵に埋葬したという記事が『増鏡』にあるそうだ。勝林院の十三重塔が後鳥羽天皇陵に比定されたのは江戸・元禄の頃らしい(※京都寺社史跡案内:後鳥羽天皇 大原陵・法華堂)。まあ天皇陵の信憑性なんてそんなものだが、敗者の記憶が色濃く残る「大原」の土地柄を感じて、しみじみした。

魚山大原寺 勝林院

 参道の突き当りに巨大なお堂を構えているのが勝林院。お堂から朗々とした声明が聞こえてくるので、何か法事をやっているのかと思って飛び込んだら、録音放送だった。3分間で途切れるように設定されていて「続きを聴きたい方はボタンを押してください」という貼り紙がしてある。金色の大きな阿弥陀如来坐像は、どこか懐かしかった。

天台宗 京都大原 三千院

 靴を脱いで客殿に上がり、長い渡り廊下を歩いて宸殿(本尊:薬師瑠璃光如来=秘仏)を参拝する。それから再び靴を履いて庭に下り、往生極楽院の阿弥陀三尊像を訪ねる。ちょうど話し上手なお坊さんが熱心な説明をなさっていて、いまどき国宝の仏様をこんなに近くで拝観できるお寺は他にない、とおっしゃっていた。むかしは三尊の前に三本の蝋燭を立てていたが、最近は一本にしているとのこと。それでも文化財の管理者には嫌がられる(心配される)そうだ。脇侍の観音・勢至菩薩が「大和座り」と言われるのは正確でなく、すぐに立ち上がろうとする「跪坐」の姿勢である、という説明もあった。

 三千院の参道で見かけた散り紅葉。本州に多いタイプではなく、北海道でよく見たオオモミジ(?)ではないかと思う。

 まだ明るいうちにバスと地下鉄で市中に戻り、もう1か所、行っておきたかったところがある。

萬祥山 大通寺(遍照心院)

 東寺の南側の一角にある真言宗の小さなお寺。鎌倉幕府3代将軍実朝の妻、本覚尼が亡夫の菩提を弔うために創建した寺院だという。最近、大河ドラマ関連の情報を漁っていて、初めて知ったので来てみた。

 お寺のホームページによれば、六孫王経基の子満仲が父の墓所に一宇を建立したのが起こりといわれ、後代には「尼寺」として親しまれ、北条政子も大いにこの寺を援助し、『十六夜日記』の著者の阿仏尼も入寺し、亡夫藤原為家を供養したという。本堂の宝冠釈迦如来像の脇には源実朝像は安置されているらしいが、内部を窺うことはできなかった。いつか参拝の機会があるといいなあ。大晦日の除夜の鐘のときは「檀家様以外の方も広く受け付けています」とのことだが…。

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