見もの・読みもの日記

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2020年11月関西旅行:国宝粉河寺縁起と粉河寺の歴史(和歌山県博)+粉河寺

2020-11-28 21:44:49 | 行ったもの(美術館・見仏)

和歌山県立博物館 創建1250年記念特別展『国宝粉河寺縁起と粉河寺の歴史』(2020年10月17日~11月23日)

 先週末、行ってきた展覧会。国宝『粉河寺縁起』をはじめ、連綿と制作され続けた粉河寺のさまざまな縁起絵巻や縁起絵の数々を展示するとともに、かつての粉河寺領に伝わる仏像・仏画・古文書もあわせて紹介し、縁起の寺・粉河寺の豊饒な歴史と重厚な宗教文化を紹介する。同館は、特別展の開催されるこの時期に訪ねることが多く、今年も「わかやま県ふるさと誕生日」(11月22日)の入館無料日に当たってしまった。来ても年に1回なのに申し訳ない。

 最初の展示室には仏像が数体。目立つのは、伏し目がちの千手観音立像(平安時代)。衣の襞は目立たず、全体に穏やかな雰囲気。脇手には後補と思われる色付きの持物がにぎやか。この夏、京博の『聖地をたずねて』展にもおいでになっていた、本堂の裏観音である。像高100センチ弱の二十八部衆と風神雷神像(江戸時代)は本堂内陣の須弥壇に安置されているというが、よく覚えていない。洗練された造形で、妙法院(三十三間堂)の二十八部衆と風神雷神像によく似ている。と思ったら、粉河寺は、後白河法皇と浅からぬ縁があることがだんだん分かってきた。粉河寺北東の上丹生谷の庚申堂に伝わる四天王像のうちの二天像は、ずんぐりした体形に力感があふれ、表情も生彩に富む。こういう仏像を見ることができるのは、地方の展覧会ならでは。

 あと絵画資料である『伝聖徳太子旅装像(童男行者像)』(石川県・本誓寺)は、童男行者(粉河寺の千手観音の化身)と聖徳太子のイメージの混淆が見られ、前日に中之島香雪美術館の『聖徳太子』展を見ていたこともあって、興味深かった。

 続く展示室では、はじめに国宝『粉河寺縁起』を展示。後期は後半(長者娘の病を治す霊験譚)の展示だった。それから数々の写本、さらに、もうひとつの縁起である『粉河寺観音霊験記』の諸本も展示されていた。私が面白いと感じたのは、『粉河寺縁起』前半(粉河寺創建譚)で、猟師にもとにふらりと現れた童男行者が一晩泊めてもらったお礼にと、七日七夜、庵にこもって等身の千手観音像を刻み、立ち去る物語。江戸時代の写本では、原本になかった場面、庵の扉を細めに開けて半身だけ見せる童男行者の姿が描かれていており、それがまた次の写本に受け継がれていく。

 参詣曼荼羅(桃山時代、江戸時代)や、絵画の素人っぽい『粉河祭礼渡御図』(江戸時代)も魅力的だった。粉河寺は葛城修験と関係が深く、修験道や密教系のあやしい仏画・仏像も有しているようだ。また、南宋・金大受本を写した美麗な『十六羅漢像』があり、十禅律院に伝わったものと説明がついていた。

 ロビーに飾られていた、千手観音立像と並んで写真が撮れるパネル。実は京博『聖地をたずねて』展のリサイクル。背景、台座には『粉河寺縁起』が使われている。

■西国第三番 風猛山粉河寺(和歌山県紀の川市)

 調べたら2012年、2008年、2005年に参詣しており、しばらく時間が空いて8年ぶりになる。和歌山から粉河(和歌山線)は、いちおう日中1時間に2本の列車があった。粉河駅から粉河寺まではシャッターの下りた店が多く、人もあまり歩いていなかったが、粉河寺の境内には、さすがにグループや団体の参拝客を多く見かけた。みんなバスや自家用車で来るのだろうな。

 長屋川を右手に見ながら参道を歩いていくと、左手に童男堂。12月18日の終い観音の日にあわせて童男会(どうなんえ)が開催され、秘仏童男行者の年一回のご開帳がある旨、看板が立っていた。

 ひときわ高い位置にに立つのは、絶対秘仏の本尊を安置する本堂。今回は外陣からお参りするだけ。

 本堂の右手奥にある十禅律院。2008年と2005年に参拝したことがある。和歌山県博で『十六羅漢像』を見た縁で、敷地内に入ってみた。参道の右側に拝観受付があったので、御朱印をいただき、建物にあがらせていただく。

 もとは由緒ある寺院だったのだろうが、きれいな文様の連なる水色の壁紙もところどころ破れていて、維持の苦労がしのばれた。縁側からの眺望がよく、和泉葛城山を借景にした庭園(洗心庭)が見どころだが、案内してくれた奥様の話では、崖下の竹林が伸びすぎて山が見えなくなってしまったとのこと。「どこも若い人がいなくなってしまって」と寂しそうだった。奥様は、15年前にも案内していただいた方ではないかと思う。またお会いしたいので、どうぞお元気で。

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