見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2018年7-8月@東京&関西展覧会拾遺

2018-09-01 23:47:36 | 行ったもの(美術館・見仏)
レポートを書いていない展覧会が溜まってきたので、ものによっては簡単に。

太田記念美術館 企画展『落合芳幾』(2018年8月3日~8月26日)

 この夏、東京では二人の浮世絵師、落合芳幾(よしいく、1833-1904)と月岡芳年(よしとし、1839-1892)の展覧会が妍を競った(ヘンかな、この表現)。本展は開催趣旨に、落合芳幾は「月岡芳年や小林清親、河鍋暁斎などの著名な絵師たちの影に隠れ、その名前はほとんど注目されておりません」「本展覧会は、落合芳幾の知られざる画業の全貌について、代表作を含む80点以上の作品を通して紹介する、世界で初めての展覧会です」という。私は、1999年(古い!)に東京大学総合研究博物館で開催された『ニュースの誕生』展で「新聞錦絵(あるいは錦絵新聞)」というものを知って以来、落合芳幾は気になる名前だった。2008年には千葉市美術館で『芳年・芳幾の錦絵新聞』という展覧会を見ているが、確かに芳幾の名前が冠された展覧会は、これくらいしかないようだ。

 芳幾といえば、思い浮かぶのは「血みどろ絵」である。市井の事件に取材した新聞錦絵に加え、弟弟子の月岡芳年と競作した『英名二十八衆句』では、歌舞伎や講談の殺害場面を取り上げている。太田記念美術館は外国人のお客さんが多いので、大丈夫かな?とちょと反応を窺ってしまった。しかし、芳幾は血みどろ絵ばかり描いていたわけではなく、血みどろ表現のない武者絵や合戦絵、美人画、役者絵、名所・風俗画、動物や金魚に人の顔を合わせた戯画など、多様な作品があることを初めて認識した。新しい風俗も描いているけど、芳年に比べ、最後まで浮世絵の伝統に忠実な絵師だったように思う。

練馬区美術館 『芳年-激動の時代を生きた鬼才浮世絵師』(2018年8月5日~9月24日)

 芳年は、昨年、太田記念美術館と横浜市歴史博物館が取り上げたことで、だいぶ知られるようになったのではないか。本展は前後期で263点を展示する、かなり大規模な特別展。『英名二十八衆句』のほか、名作は網羅されている。『誠忠義心伝』2件、『魁題百撰相』13件のカッコよさよ。明治20年代の縦型2枚続きのシリーズも好き。『雪月花』(岩倉の宗玄、毛剃九右衛門、御所五郎蔵)は目立つ位置に飾られていて嬉しかった。西郷隆盛ものが3件あったが、どれも無念の敗者として描かれており、怖かった。海に降臨する『隆盛龍城攻之図』は、平家一門との親近性を感じさせる。数は少ないが、画稿や素描を見ることができたのも貴重。コラボ商品の『玉兎 孫悟空』のTシャツもGET。

MIHOミュージアム 2018年夏季特別展『赤と青のひみつ 聖なる色のミステリー』(2018年6月30日~8月26日)

 古代から近世における日本そして世界の美術品に表された赤と青を取り上げ、人々が古より「色」とどのように関わってきたかを考える。クイズやワークショップ、分かりやすい解説(たとえば展示品の制作年代は「私は〇〇才(今からどのくらい前に作られたか」で表示)で子供を飽きさせない工夫がされている。しかし展示品には名品が混じっていて、鎌倉時代の丹生明神坐像(女神像)や室町時代の『稚児大師像』(絵画)、二月堂練行衆盤、根来の瓶子なども見ることができた。私は、というか古い日本文化は「青」より「赤」に聖性を感じてきたのではないかと思う。

■浜松・遠鉄百貨店 髙島屋史料館所蔵『日本美術と髙島屋~交流が育てた秘蔵コレクション~【特別展示】豊田家・飯田家寄贈品展』(2018年6月23日~7月8日)

 7月初めにアイスショー観戦で浜松に泊まったとき、駅前の遠鉄百貨店で見たもの。時間つぶしになればいいか、くらいの気持ちだったが、なかなか面白かった。髙島屋という企業が明治以降の近代日本画家たちの活動に強い関わりをもっていたことがよく分かった。誰でも知っている竹内栖鳳の名作『アレ夕立に』は髙島屋史料館の所蔵なのか。まさか旅先の浜松で遭遇しようとは。遠鉄百貨店が髙島屋のグループ企業だというのも初めて知った。

■泉屋博古館分館 『うるしの彩り-漆黒と金銀が織りなす美の世界』(2018年6月2日~7月16日)

 住友家に伝わった日本、琉球、朝鮮、中国の漆工芸品より、茶道具や香道具、近代に製作された華やかなおもてなしのうつわを紹介。近代の漆工芸品に見応えがあった。

※あと、上記に記録できていないのだが、やっぱり東博やMIHOミュージアムは常設展をゆっくり見ると発見が多くて好き。京博も早く展示場問題を解決して、常設展をちゃんと常設にしてほしい。
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