見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

常設展の名品/中国書画精華(東京国立博物館)など

2018-09-03 23:05:06 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館・東洋館8室『中国書画精華-名品の魅力-』(2018年8月28日~10月21日)

 秋の恒例「中国書画精華」が始まったので、混み合う平成館と本館を避け、東洋館と法隆寺館をゆっくり参観してきた。この特殊陳列は、主に東博コレクションの中から、中国書画の名品を一挙公開するものである。年によっては特定のテーマをサブタイトルに掲げることもあるが、今年は「名品の魅力」とド直球だなあと思いながら見にきた。

 冒頭には、山梨・久遠寺蔵、伝・胡直夫筆の『夏景山水図軸』(南宋時代)。梁楷の『雪景山水図軸』2福に『出山釈迦図』の組み合わせ。愛らしい伝・趙昌筆『竹虫図』に加えて、元時代の『草虫図軸』2幅。仏画は、京都・清凉寺蔵の『十六羅漢図軸』(北宋時代)から3件、金大受筆『十六羅漢図軸』(南宋時代)から4件など。どれも一度は見たことのある作品だが、めったに会えないので嬉しい。

 壁に沿ってひとまわりしたあと、低い展示ケースを覗き込んで、おや!と驚いた。低いタイプのケースには、画帖や画巻が展示されることが多いのだが、ここに李迪筆『紅白芙蓉図軸』や伝・馬遠筆『寒江独釣図軸』などが入っている。これはありがたい。壁のケースに比べて、作品との距離が近いので、近眼の私でもしっかり細部を観察することができる。『紅白芙蓉図軸』の紅芙蓉には花蕊がわずかに描かれているが、白芙蓉には描かれていないことに気づく。伝・毛松筆『猿図』は、目・鼻・口をとりまく繊細で写実的な皺の表現に感心した。常盤山文庫蔵、伝・趙昌筆『茉莉花図軸』は、団扇形の絹本に描かれたもので、けっこう厚く絵具を置いており、今も色彩が鮮やかだ。

 なお、例年の「中国書画精華」は、前期が宋元画で後期が明清画中心だった気がするのだが、展示替え予定によると、今年は後期(9/26-)にも宋元の名品が出るようだ。これは得をしたようで嬉しい。いや明清絵画も好きだけど。

 書もいろいろ名品が出ているけど、大きな禅院額字、張即之筆『東西蔵』と『解空室』(京都・東福寺蔵)それに無準師範筆『釈迦宝殿』が好き。一部の作品は、中国語の音声ガイドに対応していることに気づいてしまった。ヒアリング練習のため、ちょっと試してみたい。

■東洋館3室(西域の美術)

 中国・朝鮮の美術を見ただけで帰ってしまうことも多いのだが、久しぶりに「西域の美術」に寄った。実は、先週、龍谷大学で図書館の貴重資料の展示を見せていただき、さらに入澤崇学長(前・龍谷ミュージアム館長)の「龍谷の至宝」と題した講演を聴く機会があった。大谷光瑞と大谷探検隊については、近年、新たに分かってきたことがいろいろあるそうだ。大谷探検隊ゆかりの資料は、中国、韓国、日本に分かれてしまっており、学長はいつかこれを一堂に集めて展覧会をしたいと考えているそうだ。

 学長が「たいへん珍しい貴重な品」と紹介された、ホータン出土の胴造の如来像頭部がちょうど出ていた。西域における最初期金銅仏像の遺品である。そのほかにも、大谷探検隊由来の品のなんと多いこと。今年は大谷光瑞(1876-1948)遷化70年にあたり、龍谷大学では記念国際シンポジウムが予定されているそうだ。聴きにいけないけど、その成果は何らかのかたちで知りたい。出版してほしい。

■法隆寺宝物館

 はじめに多くの金銅仏に囲まれる至福。次に第3室の「伎楽面」は長期の常設展示だが「金・土のみ公開」というスタイルを取っており、前回(今年の春?)来館時は見ていないかもしれない。飛鳥時代の古面が30件以上あって壮観だった。鎌倉時代の鬼面が1件混じっているが、これも古色を感じる。伎楽面は、真面目な役も笑いをとる役も、ほぼ例外なく鼻が強調されているのが不思議である。
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