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見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2017年春@東京展覧会拾遺

2017-05-02 20:22:29 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京写真美術館 総合開館20周年記念『夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史総集編』(2017年3月7日~5月7日)

 平成18(2006)年度から隔年で開催してきた4つの地方編の総まとめとなる展覧会である。私は古写真が好きなので全て参観している。2007年春の「関東編」、2009年の「中部・近畿・中国地方編」、2011年の「四国・九州・沖縄編」、そして2013年の「北海道・東北編」は、ちょうど北海道に引っ越す直前に見た。なので今回は、ああ、これ見た、と記憶のよみがえる写真が多かった。文久の遣欧使節一行がパリのナダールの写真館で撮影した大判の鶏卵紙プリント、一高ベースボール選手のしゃれた記念写真、京都や鎌倉の観光地写真、甚大な被害を赤裸々に伝える三陸大津波などの災害写真。

 小さな名刺判の肖像写真をひとつずつ覗き込んでいくと、思わぬ有名人が写っていたりするのも楽しい。土方歳三、近藤勇、岩崎弥太郎、吉田東洋など。小説や歴史の教科書でなじんだ人々が、ちゃんと肉体をもって存在していたと知るのは不思議な感覚である。江戸時代の武士の体形について、なで肩に見えるのは首の筋肉が発達しているから、という説明がついていたのには、へええと思った。あと相撲をとる男の写真があって、その肉体が筋肉質で黒々としているのが印象的だった。お相撲さんといえば白い肌というのは近代の印象かもしれないなあ。

山種美術館 企画展『花*Flower*華-琳派から現代へ-』(2017年4月22日~6月18日)

 直球の企画だが、楽しかった。展示は、春→夏→秋→冬の順に推移する。春は、奥村土牛の『木蓮』が印象に残った。赤紫のなんともいえない妖艶な深み。土牛の『醍醐』は、自分が年齢を重ねるにつえ、ますます好きになってきた。満開の桜の枝の「軽やかな重み」を確かに感じる。最近話題の渡辺省亭の『桜に雀』は、葉の出始めの桜で、若い葉の桜色っぽい紫が花の純白を引き立てている。初夏は、日本画作家が、菖蒲・杜若・クレマチスなど寒色系の花を好むのに対して、梅原龍三郎、中川一政など油彩画家はバラなんだなあ、という対比が面白かった。和洋を挟んで、中央の展示ケースに田能村直入の『百花』(本展のポスターになっているもの)が広げられているが、巻末に全ての花の名称を記し、春花30種、夏花36種、秋花22種、冬花12種と分類していうことに初めて気づいた。

 秋、酒井抱一『菊小禽図』はちょっと若冲ふうだった。賛を記している亀田綾瀬は誰かと思ったら鵬斎の子供だった。冬の花といえば私の好みは水仙だなと思って探していたら、小茂田青樹の『水仙』に出会う。開いた障子が左右に少し見え、竹藪の地面に雀の群れと水仙の株が点在している。伝統的な舞台装置なのに斬新で面白い作品。第2室は牡丹を描いた作品ばかり8点が集めてあった。安田靫彦の描く牡丹は、歴史画の靫彦だと思うせいか、人の顔に見える。王者のように猛々しい牡丹。渡辺省亭の牡丹の繊細さは、童話や古い少女マンガに出てくるお姫さまのドレスのようだ。イギリスの絵本のイメージ。鈴木其一の大作は、伝統的な中国絵画をよく学んでいると感じられた。

※以下、3月に見て感想を書きそびれた展覧会をメモしておく。

■根津美術館 特別展『高麗仏画-香りたつ装飾美-』(2017年3月4日~3月31日)

 昨年秋、京都の泉屋博古館で開催された展示の巡回展だが、もう一回、行ってきた。京都展が優美な水月観音像(楊柳観音像)推しだったのに比べると、東京展は、王者の風格のある阿弥陀如来や地蔵菩薩の印象が強かった。興福寺の梵天・帝釈天像もまだ展示されていて、確か春のお彼岸に見に行ったのだが、お寺にいるような落ち着きを感じた。

■東京都美術館 特別展『ティツィアーノとヴェネツィア派展』(2017年1月21日~4月2日)

 ティツィアーノ作品7点(うち2点はティツィアーノと工房作品)を展示。見どころの『フローラ』は春の女神を描いたものというが、若い娘らしい美しさに見とれる。
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