○北田暁大、白井聡、五野井郁夫『リベラル再起動のために』 朝日新聞出版 2016.6
現在の政治状況に関して、安倍政権に対抗する立場から、積極的な発言や活動をおこなっている三人の学者、北田暁大さん(1971年生まれ)、白井聡さん(1977年生まれ)、五野井郁夫さん(1979年生まれ)の鼎談。五野井さん自身の整理では、北田さんがリベラル、五野井さんが左翼、白井さんが極左ということになるそうだ。
安倍政権が自由と民主主義にとって危険な存在であることは、三人の共通認識なので、敢えて多くは語らない(三人が個別に寄せた文章に少し語られている)。むしろ、その共通認識を前提に、どうすれば有効な対抗軸がつくれるかという問題をめぐって、真剣な討論が戦わされている。民進党(旧民主党)に何が期待できるか。共産党はどうなのか。日本には、社会民主主義政党がないという話から、なぜ社会党(懐かしいな)は弱体化したか、歴史的パースペクティブを白井さんが解説する。
結局「もっと経済政策を」という点を強調するのは北田さん。白井さんは「どうやって定常経済(経済成長を目的としない経済)でやっていけるシステムに日本を組み替えるか」という発言もしているけれど、あとのほうで五野井さんは「経済成長路線は唱えたほうがいい」「低成長と聞いて喜べるのはエコロジカルな左派と一部の経済音痴な保守派だけ」と厳しい。
前半で北田さんが「白井さんの考える幸せ像は?」と詰め寄って、白井さんが「僕には他人の幸せを構想するという発想がない」と答えに戸惑う場面がある。私は「人が幸せかどうかは、他人が判断することではない」という白井さんに近い考えなので、不毛な議論だなあと思いながら読んでいた。しかし、政治家というのは「こういう生活したいですよね、皆さん」という具体的な設計を提示することができなければならない。普通の人なら年収○万。○歳で家が建てられて、退職後は年金○万。そうしたリアルな構想があってこそ、人々は動くのだ。「幸せは人それぞれ」などという観念論で政治は動かない、ということを、あらためて肝に銘じた。
だから、アベノミクスについても「誠実に考えれば、そんなに景気のいいことは言えないはず」という白井さんの評価はわかるけど、庶民は政権の「攻めてる感」「汗をかいてる感」に惑わされているので、景況感は上がっている。これに対抗する批判勢力は、単なるイデオロギーでなく「夢があって実現可能な政策」「一般人の日常的な困りごとに焦点をあてた政策」を打ち出していく必要がある。この提言には強く共感する。
家族、教育、憲法、沖縄など、個別問題の論点を整理し、学者や市民の動きについて触れる。野党がいろんな市民の声に耳を傾けなければならい雰囲気ができ、与党の政策にも影響を与えたことは評価できる。すぐに「勝ち」は手に入らないかもしれないが、将来的にわれわれは勝つと、若い人たちは考えているのではないか、という五野井さんの発言に希望が持てた。議会政治でも勝つためには、議会をとりまく(議会外の)文化をどう変えていけるか、という話を読みながら、先日、SEALDsの諏訪原健さんが言っていた「文化を変えたい」という言葉を思い出した。

安倍政権が自由と民主主義にとって危険な存在であることは、三人の共通認識なので、敢えて多くは語らない(三人が個別に寄せた文章に少し語られている)。むしろ、その共通認識を前提に、どうすれば有効な対抗軸がつくれるかという問題をめぐって、真剣な討論が戦わされている。民進党(旧民主党)に何が期待できるか。共産党はどうなのか。日本には、社会民主主義政党がないという話から、なぜ社会党(懐かしいな)は弱体化したか、歴史的パースペクティブを白井さんが解説する。
結局「もっと経済政策を」という点を強調するのは北田さん。白井さんは「どうやって定常経済(経済成長を目的としない経済)でやっていけるシステムに日本を組み替えるか」という発言もしているけれど、あとのほうで五野井さんは「経済成長路線は唱えたほうがいい」「低成長と聞いて喜べるのはエコロジカルな左派と一部の経済音痴な保守派だけ」と厳しい。
前半で北田さんが「白井さんの考える幸せ像は?」と詰め寄って、白井さんが「僕には他人の幸せを構想するという発想がない」と答えに戸惑う場面がある。私は「人が幸せかどうかは、他人が判断することではない」という白井さんに近い考えなので、不毛な議論だなあと思いながら読んでいた。しかし、政治家というのは「こういう生活したいですよね、皆さん」という具体的な設計を提示することができなければならない。普通の人なら年収○万。○歳で家が建てられて、退職後は年金○万。そうしたリアルな構想があってこそ、人々は動くのだ。「幸せは人それぞれ」などという観念論で政治は動かない、ということを、あらためて肝に銘じた。
だから、アベノミクスについても「誠実に考えれば、そんなに景気のいいことは言えないはず」という白井さんの評価はわかるけど、庶民は政権の「攻めてる感」「汗をかいてる感」に惑わされているので、景況感は上がっている。これに対抗する批判勢力は、単なるイデオロギーでなく「夢があって実現可能な政策」「一般人の日常的な困りごとに焦点をあてた政策」を打ち出していく必要がある。この提言には強く共感する。
家族、教育、憲法、沖縄など、個別問題の論点を整理し、学者や市民の動きについて触れる。野党がいろんな市民の声に耳を傾けなければならい雰囲気ができ、与党の政策にも影響を与えたことは評価できる。すぐに「勝ち」は手に入らないかもしれないが、将来的にわれわれは勝つと、若い人たちは考えているのではないか、という五野井さんの発言に希望が持てた。議会政治でも勝つためには、議会をとりまく(議会外の)文化をどう変えていけるか、という話を読みながら、先日、SEALDsの諏訪原健さんが言っていた「文化を変えたい」という言葉を思い出した。