見もの・読みもの日記

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光琳、抱一、曜変天目/金銀の系譜(静嘉堂文庫美術館)

2015-11-18 00:46:41 | 行ったもの(美術館・見仏)
静嘉堂文庫美術館 『金銀の系譜-宗達・光琳・抱一をめぐる美の世界-』(2015年10月31日~12月23日)

 2014年春から約1年半、休館していた静嘉堂文庫美術館がリニューアルオープンした。まずはめでたい。久しぶりの二子玉川駅バス乗り場もすっかりきれいになって、少しまごついてしまった。バス停「静嘉堂文庫」で下車し、記憶を確かめながら門を入って、坂道を上がる。道筋に曜変天目をデザインした「静嘉堂文庫」のバナー(旗)が飾ってあったのが目新しかった。庭園の銀杏はまだ緑色だった。

 展示室の入口には、伝・光琳の『鶴鹿図屏風』。金地の二曲一双屏風で、右隻に鹿と桜、左隻に鶴と紅葉を配する。光琳にしては、樹木の造形に力がない感じがするが、少ない色彩が金地に映えて鮮やか。展示室の中に入ると、嵯峨本とか京焼とか蒔絵とかいろいろあるのだが、ぐるりと立てまわした屏風が目につく。松花堂昭乗の『勅撰集和歌屏風』はあまり記憶になかった作品。きれいだな~。金箔と銀箔、それに緑色を散らして、幻想的な遠山の景色を描き、和歌の短冊(これも形がさまざま)を貼り付ける。解説によると、二十一代集の巻頭歌と巻末歌だそうだ。なんと美しい教養の誇りかた。「伊年」印の『四季草花図屏風』は右隻のみだったが、大根?サトイモ?など美味しそうな草花が混じっているのが可愛い。

 今回の目玉『源氏物語 関屋・澪標図屏風』は、画面構成(色構成)がダイナミック。少し離れて、全体を視野に入れたほうがいいと思う。「関屋」の金地に蓋をするような、キッパリした緑の置き方。「澪標」の大胆にうねる白い帯(白砂?)。遠近感など歯牙にもかけない人物の大小もいい(船の舳先の小さな人物!)。2006年の展覧会『国宝 関屋澪標図屏風と琳派の美』の記事を読み直したら「どちらが右隻・左隻か分かっていない」と書いているが、今回は「左:澪標-右:関屋」で置かれている。本作品は、このたび徹底的な修理を施されたようで、その様子もパネルで紹介されていた。

 酒井抱一の『波図屏風』は2006年と、2012年にも見ている。今回、驚いたのは、ゆるゆると場所を移しながら見ていると、照明と屏風の角度によって、うっすら見えた墨線が、次の瞬間にははっきり濃くなるという変化を体感できたこと。同時に地の銀色も輝きと色調が微妙に変化する。

 そこで気づいたのは、今回の改修で照明設備がかなり改善されたのではないか。同館は展示ケースに照明が映り込んで見にくかったような記憶があるのだ。ちなみにYahoo!ニュース(2015/10/30配信)には「空調・防火・照明・防犯などの施設内設備を中心とした大幅な改修と、展示品の修繕を目的に休館していた」とある。リニューアルオープン第1弾に「金と銀」を持ってきたのは、新しい展示施設への自信の表れではないかと思う。実際、どの金色も銀色もしっとりと美しかった。

 あとは光琳の『立葵図』がよかった。丸くてくしゃくしゃした白い八重の立葵が、写実ともデザインともいえない絶妙さ。これだけは「個人蔵」の特別出品である。

 そして展示室外のラウンジには『曜変天目』と『油滴天目』が並んでいる。全く期待していなかった上に、窓からの自然光に曝される状態の展示でびっくりした。私は演出過剰の空間で見るよりも、こういう環境のほうが好ましい。曜変天目の明るい青色が美しかった。
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