見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

一遍と歩く(東京国立博物館)+常設展

2015-11-13 00:00:09 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館・本館 特別1室・特別2室 『一遍と歩く 一遍聖絵にみる聖地と信仰』(2015年11月3日~12月13日)

 特別展と一緒に見てきた常設展。この秋、横浜方面で国宝『一遍聖絵』(一遍上人絵伝)の展示があることは聞いていたが、東博でも関連展示が行われているとは知らなかった。東博の展示リストには『一遍聖絵 巻第七』(国宝)があがっている。え?東博が『一遍聖絵』を持ってるんだっけ?と思った私の疑問は、「1089ブログ」で担当研究員さんの解説を読んで氷解した。そもそも国宝『一遍聖絵』全12巻は神奈川県の遊行寺(清浄光寺)が所蔵する。しかし巻七だけは、遊行寺と東博に2巻伝わっているのである。上記のブログによれば「もとは1巻だったのですが、これがいつしか分断され(絵巻にはよくあることです)、模写で補われつつ、2巻に仕立てられました」とのこと。だから、どちらも「本物」である。

 『一遍聖絵』は、上人らの信仰者集団らしい真摯な表情もいいし、変化に富む風景描写もいいし、人々の暮らしのすぐそばに自然に描き込まれた病者の姿も好きだ。巻七は特に出色の巻で、全面開けてあるのが嬉しい。太っ腹に撮影も可。東博の国宝室で展示されたこともあったみたい(2006年の記事)。なお、各館のスケジュールは以下のとおり。

・遊行寺宝物館(2015年10月10日~12月14日)11/16まで全12巻展示(全段ではない)11/20より1, 7, 11, 12巻展示
・神奈川県立歴史博物館(2015年11月21日~12月13日)4, 5, 6, 10巻展示
・神奈川県立金沢文庫(2015年11月19日~12月13日)2, 3, 8, 9巻展示

 4館制覇すると遊行寺宝物館で景品がもらえるスタンプラリーも開催中。東博で台紙をもらって、最初のスタンプを押してきた。

 その他、今月の常設展示は珍しい作品が出ていて見どころが多かった。国宝室には平安時代(12世紀)の『千手観音像』。輪郭線を目立たせず、暈かしで表現された丸みのある腕が生々しい。現地では十分に見えなかったが「e国宝」のサイトで見たら、冠も瓔珞も、一面に截金を用いた衣も華やか。院政期の美学を感じさせる。向かって右に婆藪仙(ばすうせん)、左に功徳天(吉祥天)を従えるが、婆藪仙の顔が小さすぎて、バランスが狂っているのが妖しい。国立博物館に入るまでの由来がよく分からないのだが、誰が持っていたのだろう。

 東洋館8室の『中国書画精華-日本における受容と発展-』(2015年9月8日~11月29日)は絵画が展示替えになった。『猿図』とか『栗鼠図』とか梁楷筆『出山釈迦図』『雪景山水図』など、宋元絵画は見慣れた作品が多かったが、目についたのは明清絵画のほうだった。明・張路筆『漁夫図』(護国寺蔵)は、画面右上に三角形の黒い岩が張り出しており、その背後を漁夫を乗せた小舟が横切っていく。まさに網を水面に投げようとする漁夫。竿で舟を操る連れの者。

 清・銭杜筆『撫宋元明諸家山水図冊』も嬉しかった。先日、大和文華館の『蘇州の見る夢』展で『燕園十六景図冊』という作品を見て、名前を覚えたばかりの画家だったので。この作品もいいなあ。大好き。


コメント (1)
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