○永青文庫 平成24年度冬季展示『武蔵と武士のダンディズム』(2013年1月5日~3月10日)
少しご無沙汰していた永青文庫。2011年夏季展『細川家の本棚から』のあと、8ヶ月間の工事休館があって、2012年4月にリニューアル開館したのだが、春・夏・秋の展示は、何かと紛れて見逃してしまった。久しぶりに訪ねた同館は、工事休館があったことなど、まるで脳裡に浮かばないほど、時間の流れとかけ離れた佇まいを見せていた。
館内に入って「4階の展示室からご覧ください」という表示を見たとき、記憶にへんな混乱があった。4階なんてあったかしら? 2階が小さな展示室とサロンで、3階が主展示室だったはず。ファンタジー・ノベルなら、ここで時空の裂け目に入り込んでいくところだが(実際、そんな裂け目があってもおかしくないお屋敷)、3階に上がってみると、ちゃんと4階への階段が伸びていた。ようやく、長い工事休館期間があったことを思い出す。
上がっていくと、窓のある見晴らしのよい休憩スペースになっており、突き当たりにソファが置かれている(たぶん座ってよいもの)。左奥が、2012年7月にオープンした「新展示室」である。2階・3階の展示室に比べると格段に広くて、天井が高い。いま、大きな屏風が3点(『宇治川・一ノ谷合戦図屏風』の宇治川隻、『老松牡丹図屏風』六曲一双)が展示されているが、見栄えがする。
正面には、後陽成天皇の宸翰『龍虎』。昨年、京博の『宸翰 天皇の書』で見たものだとすぐに分かった。両側には細川家伝来の鎧兜。『黒皺革包黒糸威二枚胴具足』の兜は、怒髪天を突くごとくピンと立った羽根飾り(?)の左右に円弧を描いて張り出した頭立も付いている。「細川斉茲(ほそかわなりしげ)所用」とあったが、あ、あの『領内名勝図巻』を作らせた殿様か(※『細川家の至宝』展)
圧倒されて、ぽかんと眺めているうち、この室の展示ケースは、展示台の位置が、普通の美術館より高いことに気づいた。それもそのはず、展示ケースの下半分の薄暗がりに、時代劇に登場するような、巨大な長持が収納されているのである。おおお、これはGJというか、グッドアイディア。いずれも大きく家紋(細川家の九曜紋以外もあり)が描かれており、「衣第四号」「火消装束」など、内容物を示す張り紙がそのまま残っているものもある。何も説明がないのかなと思ったら、出口の横に「ここに展示している長持は最近まで実際に使われていたものです」云々という説明パネルがさりげなく掲げられていた。
室内には、専用(?)ガラスケースに収まった『乾隆玉座』も展示されていたが、以前は「むき出し」に置かれていたものだ、と思うと可笑しかった。その様子は、ホームページ「当館概要」でまだ見ることができる。
3階展示室は今季の特集展示。刀の拵(こしらえ)と刀掛、鍔、三所物など。どれも品があって、美しい。宮本武蔵の描く水墨画はよく分からないなあ。特別感心もしない。武蔵作と伝わる彫像・不動明王立像は、思ったよりも小さい。剣を体の横に構えて足を踏み出したところが、打席に立つ野球選手のようにも見える。2階は工芸、陶磁器のほか、白隠の書画が出ていて嬉しかった。達磨図もあった。
少しご無沙汰していた永青文庫。2011年夏季展『細川家の本棚から』のあと、8ヶ月間の工事休館があって、2012年4月にリニューアル開館したのだが、春・夏・秋の展示は、何かと紛れて見逃してしまった。久しぶりに訪ねた同館は、工事休館があったことなど、まるで脳裡に浮かばないほど、時間の流れとかけ離れた佇まいを見せていた。
館内に入って「4階の展示室からご覧ください」という表示を見たとき、記憶にへんな混乱があった。4階なんてあったかしら? 2階が小さな展示室とサロンで、3階が主展示室だったはず。ファンタジー・ノベルなら、ここで時空の裂け目に入り込んでいくところだが(実際、そんな裂け目があってもおかしくないお屋敷)、3階に上がってみると、ちゃんと4階への階段が伸びていた。ようやく、長い工事休館期間があったことを思い出す。
上がっていくと、窓のある見晴らしのよい休憩スペースになっており、突き当たりにソファが置かれている(たぶん座ってよいもの)。左奥が、2012年7月にオープンした「新展示室」である。2階・3階の展示室に比べると格段に広くて、天井が高い。いま、大きな屏風が3点(『宇治川・一ノ谷合戦図屏風』の宇治川隻、『老松牡丹図屏風』六曲一双)が展示されているが、見栄えがする。
正面には、後陽成天皇の宸翰『龍虎』。昨年、京博の『宸翰 天皇の書』で見たものだとすぐに分かった。両側には細川家伝来の鎧兜。『黒皺革包黒糸威二枚胴具足』の兜は、怒髪天を突くごとくピンと立った羽根飾り(?)の左右に円弧を描いて張り出した頭立も付いている。「細川斉茲(ほそかわなりしげ)所用」とあったが、あ、あの『領内名勝図巻』を作らせた殿様か(※『細川家の至宝』展)
圧倒されて、ぽかんと眺めているうち、この室の展示ケースは、展示台の位置が、普通の美術館より高いことに気づいた。それもそのはず、展示ケースの下半分の薄暗がりに、時代劇に登場するような、巨大な長持が収納されているのである。おおお、これはGJというか、グッドアイディア。いずれも大きく家紋(細川家の九曜紋以外もあり)が描かれており、「衣第四号」「火消装束」など、内容物を示す張り紙がそのまま残っているものもある。何も説明がないのかなと思ったら、出口の横に「ここに展示している長持は最近まで実際に使われていたものです」云々という説明パネルがさりげなく掲げられていた。
室内には、専用(?)ガラスケースに収まった『乾隆玉座』も展示されていたが、以前は「むき出し」に置かれていたものだ、と思うと可笑しかった。その様子は、ホームページ「当館概要」でまだ見ることができる。
3階展示室は今季の特集展示。刀の拵(こしらえ)と刀掛、鍔、三所物など。どれも品があって、美しい。宮本武蔵の描く水墨画はよく分からないなあ。特別感心もしない。武蔵作と伝わる彫像・不動明王立像は、思ったよりも小さい。剣を体の横に構えて足を踏み出したところが、打席に立つ野球選手のようにも見える。2階は工芸、陶磁器のほか、白隠の書画が出ていて嬉しかった。達磨図もあった。