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見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

祝・20周年/見仏記ガイドブック(いとうせいこう、みうらじゅん)

2012-11-12 21:35:58 | 読んだもの(書籍)
○いとうせいこう、みうらじゅん『見仏記ガイドブック』 角川書店 2012.10

 オビに小さく「仏像ブームは彼らから始まった! 20年間で見仏した169の寺を一挙掲載!」とある。20年前、雑誌「中央公論」1992年9月号で連載が始まったのが、「見仏記」が世に現れた最初であるそうだ。

 私は、雑誌連載には気づいていなかったので、1993年刊行の単行本『見仏記』が最初の出会いになる。社会人生活も落ち着き、学生時代から好きだった寺めぐり・仏像めぐりに時間やお金を投資して、楽しむようになっていた頃だ。ご朱印集めも始めていたし、仏教史や仏教美術に関する研究、展覧会にも関心が向いていた。書店で見つけた『見仏記』を何気なく手に取って、一番びっくりしたのは、ヘンなイラストレーターだと思っていたみうらじゅん氏が、少年時代から筋金入りの仏像好きだと知ったこと。そして、よく分からないクリエーター(笑)だと思っていた、いとうせいこう氏の文章に感激して、まわりの友人に「とにかく読んでみて!」と熱く勧めたりしたものだ。

 あれから20年の間、仏像好きを公言するタレント、漫画家、小説家などによって、さまざまなガイド本が書かれ、メディアに取り上げられてきたが、個人的な共感度で見仏記シリーズを超えるものはない。なんだろうなあ、軽くてユルいようでいて、本質はとても真面目な、人生へのかかわりかたに共感するのかもしれない。

 本書は、二人が訪れた169の寺(※日本国内のみ)を「奈良」「京都」「東北」「中部」「関東」「近畿」「四国」「中国」に分け、見どころと基本データ(連絡先、交通情報、拝観料など)をMAP付きで掲載している。当たり前だが、見どころ紹介は、どの寺でも寺伝や建築・庭園より仏像に重点を置く。200字ちょっとの記事だが、読んでいると「見仏記」のあのシーン、このシーンが浮かんできて、懐かしい。

 また、既刊『見仏記』シリーズに掲載のイラストや文章も、一部そのまま再録されている。と思ったら、読んだ記憶のない文章に出会って、あれ?と思った。調べたら、『見仏記:ぶらり旅篇』の刊行(2011.3→文庫版、2012.8)を全く見落としていた。不覚~。近年、テレビ番組になったり、DVDになったり、「e見仏記」になったりと、活躍の幅が広がりすぎて、チェックが追い付いていなかった。

 読んで楽しかったのは、特別企画「20年目の見仏対談」である。わずか6ページだが中身は濃く、美術鑑賞でも信仰でもない、でも、どちらにも融通無碍にシフトできる「見仏」の極意が示されている。仏様への挨拶だと思うと、自然に手を合わせることができるようになったとか、仏像の周りに付随するものを全て体験することが見仏であるとか、こちらが頭を低くするとお厨子に近寄らせてくれる、など、いちいち同感できることが多い。若いうちは数をこなしたほうがいいけれど、最近は(拝観できなくても)「縁かな」と感じるようになった、というのも、彼らと同じくらい長い間、見仏を続けてきた者としてよく分かる。

 見仏は一人でもできるが、仏友がいればなお楽しい。なかなか仏友が見つかりきません、という読者の声(そんな声があるのかw)に対して、十代、二十代はまだあきらめるな、三十代になったら急に仏友ができるかもしれない、というのには笑った。そうそう、私の仏友たちも、だいたい三十代以降のつきあいだ。大人になってからの友人は、意外と長く続くのである。見仏はオフの楽しみではなく、「あっち(浄土)がオンだから」というのには、笑い泣きしてしまった。みんな、いつか「オン」になるための、長い準備時間が現世なのだ。

 六人のご住職が登場する「イケ住(イケてる住職=心にグッとくる住職)に聞いてみた」アンケートも面白かった。最近の訪問先を思い出して、あの方かな~と思い当たるお寺もあれば、まだ訪ねたことのないお寺には、お会いしに行ってみたいなあ、と気持ちが動いた。
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