見もの・読みもの日記

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新たな空也上人像/遊行寺の什宝(遊行寺宝物館)

2010-02-22 22:35:17 | 行ったもの(美術館・見仏)
遊行寺宝物館 特別展『遊行寺の什宝-伝えられた仏教美術の優品-』(平成22年1月1日~2月15日)

 風邪をひく前の週末の話である。久しぶりに神奈川県藤沢市の時宗総本山、遊行寺(清浄光寺)に行ってきた。紅梅、白梅、さらに早咲きのサクラまでが咲きこぼれる境内。無人の本堂では、色彩鮮やかな『大涅槃図』を公開中。

 宝物館の2階では、かの有名な『後醍醐天皇御像』(南北朝時代)が公開されていた。肖像の上部には、左から「春日大明神」「天照皇大神」「八幡大菩薩」という三神の名号を書いた長方形の別紙が貼り付けられている。解説によれば、これは「三社託宣」(→参考:西野神社)の思想に基づき、室町時代になって貼られたものと推測されているそうだ。ところが、同図の模本(江戸時代)では、なぜか「春日大明神」と「八幡大菩薩」が左右入れ違っている。理由は「調査中」だそうだが、ちょっと気になる。この模本は、今回初めて展示されたものだそうだ。

 古い絵画資料には、熊野信仰にかかわるものが多いように見受けた。熊野って、さまざまなバリエーションの"遊行する信仰者"を包み込む聖地だったのかな…なんてことを漠然と思った。『熊野垂迹西国三十三観音像』(室町時代)は、最上段に熊野三神を表わす三貴人を描き、その下に三十三観音像を配した珍しいもの。でも、第一番那智山(青岸渡寺)、第三番の粉河寺はともかく、第二番の寺号は「清見寺」と読める。これは静岡県静岡市の清見寺(清見興国禅寺)のことだろうか? 謎が尽きないなあ。

 最後に入口に戻り、初公開の『木造空也上人立像』にあらためて向き合う。遊行寺什宝の調査によって新たに発見され、解体修復のあと、展示に至ったものだ。京都・六波羅蜜寺の空也上人像と同様に、半開きの口からは、南無阿弥陀仏の六字を表す六体の仏像がハリガネにつながって浮かんでいる。六波羅蜜寺の御像(康勝作)が座高117cmなのに比べると、こちらは48cmだから、かなり寸詰まりな印象。しかし、小さいながらも玉眼。眉間や額のしわが目立ち、苦痛に顔を歪ませているようで、怖いような、その分、滑稽な表情をしている。鹿杖、鹿皮の帯(足の部分を体の前で結ぶ)、金鼓、撞木などのアイテムはそっくりだった。

 Wikiによれば、空也の彫像は、六波羅蜜寺のほか、月輪寺(京都市)、浄土寺(松山市)、荘厳寺(近江八幡市)所蔵が代表的であるそうだ。関東地方では初の発見だったりするのだろうか。まとめて比べてみてみたいなあと思った。

コメント
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