見もの・読みもの日記

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速報・若冲展!/承天閣美術館

2007-05-14 00:27:33 | 行ったもの(美術館・見仏)
○承天閣美術館 足利義満600年忌記念『若冲展』

http://jakuchu.jp/jotenkaku/

 いまさら説明不要だとは思うが、後年のために書いておく。若冲と深い縁故を持ち、「釈迦三尊像」を持つ相国寺承天閣美術館が、本来はこの「釈迦三尊像」を荘厳するために描かれ、現在は宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵する「動植綵絵」30幅を借り受け、両者の120年ぶりの再会を演出した展覧会である。

 初日(日曜日)の朝、京都駅から地下鉄烏丸線に乗ると、おお!吊り広告が全て若冲展のポスター(群鶏図)で埋まっている。嬉しいけれど、こんな大宣伝をして、人が集まり過ぎないかな、大丈夫かな...と、内心やきもきする。開場の20分ほど前に相国寺に到着。美術館の前には、既に人の列ができていたが、私はまあまあの位置(鐘楼の横くらい)に付けることができた。承天閣美術館には一度来たことがあるが、そんなに広いと思わなかった。しかも、確か靴を脱いで上がるはずである。この大人数をどうするんだろう、と思っているうち、門が開き、係員の誘導で、我々は建物のまわりをぐるぐると歩かされた(仮設テントの回廊が出来ている)。そして、美術館のちょうど裏側に特設の入口が待っていた。係員(イベント屋さんだろう)のお兄さんに「今日は何人くらい予想しているんですか?」と尋ねたら、「5000人から、1万人弱くらいですね」と教えてくれた。

 会場は第1展示室(後)と第2展示室(先)に分かれており、第1→第2に戻ることはできない、というルールになっている。最初の「第2展示室」(確か)の見ものは、鹿苑寺大書院障壁画だ。名品だけど、いつでもここ(承天閣美術館)で見られるんだから、と思って飛ばす。その後ろに、若冲作品がたくさん並んでいるが、目新しいものはないな、と思って、ここもすぐに切り上げた。実は1件だけ、新発見の「厖児戯帚図」(→日経新聞:2007/02/17)が出ていたそうなので、これだけはよく見てくればよかったが、またの機会があるだろう。

 今回の目的は「釈迦三尊像」と「動植綵絵」を見ること――それも、率直に言えば、「動植綵絵」は、昨年、三の丸尚蔵館の特別展で味わい尽くしているので、今回は両者が同じ空間に並ぶという、その雰囲気を体験することに尽きる。

 そして、第1展示室。はやる気持ちを抑えて入口を入ると、意外に少ない観客に拍子抜けした。そりゃまあ、まだ開場から20分も立っていないのだし。私より先に入った観客の多くは、行儀よく最初の展示室を見ているのだろう。照明を落とした、比較的天井の低い四角いホール。正面には、「釈迦三尊像」三幅対が飾られ、その左右に「動植綵絵」が15幅ずつ掛けられている。

 私は、あまり混んでいないのをいいことに、釈迦三尊像の前に、三尊にお尻を向けて立ってみた。三尊の目線で、会場を見てみたかったのである。あ~見渡す限り、若冲の浄土! なんという幸せ! それから、逆に「動植綵絵」の蛸や雀や鸚鵡の側にも立ってみた。すると、三尊の慈悲深い視線が彼らに注がれているのを感じることができる。

 「動植綵絵」は確かに名品であるが、あまりにも美しすぎて、とらえどころがなくて、これだけを見ていると、どんどん精神が拡散していく「危うさ」がある(そこが現代的な魅力なのだけど)。しかし、こうして「釈迦三尊像」のもとに置いてみると、画中の小さきものたちが「落ち着きどころ」を得たように感じられる。できることなら、ずっとこのまま、一緒にしておいてあげたいものだ。今頃、観客の去った夜の展示室で、彼らは何をひそかに語り合っているのだろうか。
コメント
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