見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

仏画三昧/根津美術館

2004-10-04 12:56:19 | 行ったもの(美術館・見仏)
○根津美術館『仏教絵画と垂迹画』

http://www.nezu-muse.or.jp/

 最終日に駆け込みで行ってきた。根津美術館の仏教絵画をまとめて見るのは、2001年の「開館六十周年記念名品展」以来だと思う。そのとき買った図録『根津美術館蔵品選・仏教美術編』(2001.6)を持っているので、いま、眺めなおしているのだが、今回はちょっと出し惜しみ(?)気味で、4年前の名品展ほどのインパクトはなかった。

 でも、嬉しかったのは、朝鮮半島の仏画が多数見られたこと。仏教絵画を見るときに、日本/中国という区別は意識していたのだが、あ、高麗仏画という第三のカテゴリーがあるんだ、と気付いたのは、前回、根津美術館での体験だった。

 頭巾を被った(被帽)「地蔵菩薩像」は、とりわけ印象深かった作品なので、再会できて、とても嬉しかった。若くて体格のいい(やや肥満気味の)青年貴族みたいな地蔵菩薩で、金泥で文様を描いた豪奢な衣装をまとっている。もっと大作のイメージが残っていたので、あれっ?こんなに小さかったかしら?と思って、しばらく記憶の修正に戸惑った。

 高麗仏画って、どことなく、ふわふわしている。衣服の裾とか瓔珞に重みが感じられなくて、無重力の中空にたよりなく漂っているような感じ。それに比べると、日本の仏画は、宝冠や首飾り、腕輪などはもちろん、ずしりとした金属の重量感があるし、風になびく裳裾でさえ、一定の重みと手触りが感じられることが多い。

 日本モノでは、やはり「大日如来」がきわめつけの優品。個人的には「愛染明王像」が好きでした。墨できっちりと輪郭線を引いたうえに、色彩の濃淡で立体感を表現している。これって、劇画のカラーページのスタイルと同じだなあ、と思った。

 小品はどれもよかった。「十二因縁絵巻」の挿絵は、登場人物が男も女も悪鬼まで愛らしく描かれていて、思わず物語を読んでみたくなる。「天狗草紙」は思想史的な視点から全巻通覧してみたいと思っているが、なかなか実現しない。「地蔵菩薩霊験絵詞」は、火炎地獄の中に混じっている蛇が(絵は下手なりに)ものすごくかわいかった。

コメント
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