「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「147ヘルツの警鐘」

2012年09月03日 | 読書コーナー

「読書の醍醐味」といえば人によって様々だろうが、まずは中身につい引き込まれてページをめくる手が”もどかしく”思われるほど我を忘れて読むことが挙げられる。とにかく読んでいて面白いことが第一。そして、それに匹敵するほどの存在なのが自分の好みに合った作家を(新聞などの書評に頼らずに)独自に発掘する喜び。

人後に落ちぬミステリー狂を自認しているが、「147ヘルツの警鐘」(2012年7月)が、まさにそれだった。

                           

例によって隣町の鄙びた図書館で見つけた新刊書だが、「147ヘルツ・・・」という題名を見ただけで、とても見逃すわけにはいかない。

人間の可聴帯域とされる周波数20ヘルツ~2万ヘルツの世界を、意識、無意識にかかわらず日夜、気にしているのがオーディオ・マニアと言われる人種。

「147ヘルツ」なんて数字を見ると、「ビオラの最低音域ぐらいかなあ」と連想しつつ、もしかして大好きなオーディオが絡んだミステリーかもしれないという期待を持ったのは言うまでもない。

31日(金)から2泊3日の博多行きに伴い、退屈なJRの車中で読もうと道連れにしたわけだが、読み始めてみるとこれがなかなか面白い。片道2時間、まったく時間を忘れて読み耽ったが、ちょうど真ん中あたりまで読み進んだところで博多駅に到着。カミさんから急かされるままにようやくホームに降り立ったが、着くのが早すぎる!(博多から別府の帰りの車中(2日)でようやく完読)

こんな面白い本を書く著者とは、いったいどんな人なんだろうと巻末の「著者略歴」を探ると「川瀬 七緒」(かわせ ななお)という女流作家だった。読者をこれほど引き込む筆力からして、とてもズブの素人ではあるまいと踏んだが、案の定、2011年「よろずのことに気を付けよ」で第57回江戸川乱歩賞を受賞と記載されていたので納得。

この乱歩賞は賞金1千万円の魅力もさることながら、ミステリー作家の登竜門とされており、過去にも東野圭吾(「放課後」)、高橋克彦(「写楽殺人事件」、井沢元彦(「猿丸幻視行」)など、錚々たる作家たちを輩出している歴史あるもの。

ミステリーなので種明かしは厳禁だが、許される範囲で本書の中味を紹介すると、「147ヘルツ」とは「ハエ」の羽ばたく周波数のことで、ちなみに他の昆虫たちからもっとも警戒される「ハチ」の羽ばたく周波数が「150ヘルツ」。

このように、ほとんど同じ周波数を持つことによって、他の昆虫たちが警戒し寄り付かなくなり、何ら武器を持たない「ハエ」が生存確率を高めているというわけだが、この独自の周波数が事件の解決に役立つというストーリー。

犯罪現場において犯人や被害者の遺留品とともに、残された昆虫の生態を分析することで捜査に役立てようとする女性「法医昆虫学捜査官」の活躍という新機軸に大いに感心した。才能に恵まれている!後は読んでのお楽しみ~。

ただし、ミステリーの掟の一つである「犯人はかなり初めのうちから登場しておくこと」に反するし、殺人の動機がちょっと弱いが、そう目くじらを立てることもあるまい。

その夜、「おい、川瀬七緒というスゴイ女流作家がいるぞ。」と、同じようにミステリー好きの娘に話すと、1日(土)に「福岡市総合図書館」に連れて行ってくれた。図書カードを持っているので、もし著者の作品があったら借りるという。この図書館は環境抜群のところにあった。

               

しかし、残念なことに肝心の蔵書数が全体的にイマイチで、この著者の作品もいっさい無かった。そこで今度は、福岡の中心地「天神」の大型書店に連れて行ってくれた。

すぐにミステリー専門の書棚に行ったところ、お目当ての「よろずのことに気をつけよ」(2011年8月)がちゃんとあった。

                         

題名が洒落てるし、「謎が謎を呼ぶ、呪術ミステリーの快作」なんて、なかなか気を”そそる”うまい宣伝文句。

なにせ乱歩賞受賞作なので”十中八九”内容にハズレが無いなのは充分承知している。これまで乱歩賞受賞作品はすべてと言っていいほど読み尽くしているから、これだけは自信を持って言える。

しかし、このところ5年ばかり娯楽本は図書館からの借り入れ専門にしており、購入はいっさいしないことをモットーにしている。さ~てどうしようかと、しばし迷っていると、娘が散々渋っているオヤジの背中を押すように「私が(本代を)出してもいいわよ。お父さんが読んだ後でもいいから」と殊勝な申し出。どうやら娘も読みたいらしい。

「本代はどうだっていいが、これ以上、蔵書が増えるとイヤだしなあ。そうだな、今回は”想い出づくり”のために購入するとするか~。お金はいい。」と、ちょっと恰好をつけてみた(笑)。

ところで、この川瀬さんという作家は1970年生まれで福島県のご出身。作家とはまったく畑違いの「文化服装学院服装科」をご卒業されているところにちょっと興味を引かれた。

「学歴」に関することは、いっぱしの社会経験のある方ならすでにご承知のとおり、自他ともにあまり触れないことが世渡りのコツのひとつでもあるが、東大(理一)を出ても、支離滅裂な言動を繰り返している「鳩山由紀夫」(政治家)さんみたいな例もあるし、学歴だけではまったく人を評価できないことをつくづく思い知らされる。

さて、次回のブログは、つい最近、新しいマンション住まいを始めた娘に譲り渡したオーディオ装置について触れることにしよう。実は今回の旅行のハイライトだったので”いの一番”に取り上げる予定だったのだが、思いもかけぬ面白い「ミステリー」の出現で計画変更に至ったという次第。

                      

 

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