「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

秋の夜長の読書~3冊~

2018年10月21日 | 読書コーナー

天高く馬肥ゆる秋は「音楽&オーディオ」にもってこいの季節だが読書だって負けてはいない。秋の夜長に任せて最近読んだ本を3冊ほど挙げてみよう。

☆ 「最高齢プロフェッショナルの教え」 

             

漫画家、パイロット、ギター職人など、「その道」を極めた最高齢のプロフェッショナルたち15名の人生哲学を収録した本だった。

最高齢というだけあって、年齢的にも最高が103歳、90歳代が5名、80歳代が7名と後期高齢者が大半を占めるが、さすがに、並外れた苦労を実際に積み重ねて来られた方々だけに、その人生観も浮ついたものがなくズシリと胸に響いてくるものがある。

いずれの方々ともに、若い頃に人生設計とかの細かい計算をせずに、ただ「無我夢中になって打ち込む」、「人との出会いを大切にする」、「破天荒とも思える冒険をする」、そして「結果なんて後からついてくる」という前向き思考が共通点だった。

また男性陣は年齢からして若い頃に「兵隊」にとられた方が多くて、あのときの理不尽な鍛われ方に比べると、どんな苦労だって”へっちゃら”という言い方が目に付いた。

こういう「たくましい」人たちの話に触れると「自分はマダマダ甘い」とツイ反省してしまう(笑)。
 

一番興味を惹かれたのは「ギター職人」の「矢入 一男」氏〔78歳)。

「ヤイリギター」の創設者で、これまでギターのブランドには疎くて「ギブソン」ぐらいしか知らなかったが、「ヤイリギター」は海外の著名人も使っているブランドと初めて知った。

コメントの中にこういう行(くだり)があった。

「そのへんの安いギターは丈夫な合板でできています。でもヤイリギターのもとになるのは、天然の木そのままの無垢材です。そうなると、いい音で鳴るギターを作る以前に、壊れないギターをつくることが問題になります。」

「壊れないということは丈夫だということだ。しかし、丈夫だということは、ギターがよく鳴らんということでもあります。そこで試行錯誤しなけりゃならない。いい音で鳴る繊細な”つくり”をしていて、しかも壊れないギターが目標です。」

ポイントは「丈夫さ」と「いい音」とは基本的に両立しないことが当たり前のこととして実体験的に述べられていること。

楽器とスピーカーは似たようなものなので、これは何だかオーディオにも通じるような話。

たとえば許容入力が大きくて、まるで工業製品みたいな頑丈なユニットからは大味な音しか出てこない。

したがって「丈夫さ」と「繊細な音」の両方が簡単に手に入ると考えるのは間違いで、このあたりは「オーディオの盲点」ではなかろうか、とさえ思う。

その点、我が「AXIOM80」は、なんて書き出すと「我田引水」となって読者から嫌われるだけなのでこれで打ち切り~(笑)。


☆ 「黒い家」 

                 

貴志祐介氏の作品はほとんど読んでいるが、どうしてこんなに面白いんだろうと、堪能しながら息もつかせず読ませてもらった。

第4回日本ホラー小説大賞受賞作だが、「恐怖の連続、桁外れのサスペンス、読者をいまだかってない戦慄の境地へと導く衝撃のノンストップ長編」という宣伝文句は決して誇張ではない。

主人公は生命保険会社で保険金支払いの査定を担当しており、保険金を騙し取ろうというワルたちと次から次に対面する。

そして、とうとう、ある顧客の家に呼び出され、子供の首吊り死体の第一発見者になってしまう。それからが信じられないような悪夢の連続。
 

この顧客が悪魔のような人物で、保険金目当てに自分の子供を殺して自殺に装ったり、夫の両腕を切断して保険金詐欺を目論んだりという極悪非道ぶり。

最後には命をかけた凄惨な対決となるが勧善懲悪で終わるのがせめてもの救い。とにかく、途中であまりの怖さに該当部分をつい飛ばし読みするほどの迫真性がある。

また著者は作家になる前に社会で組織勤めをしたことがあるだけに、仕事への取り組み方とか上司と部下の間の機微に触れる描き方が実にうまい。

「ホラー小説大賞」に恥じない作品なのでまだ読んでない方は一読されても損はなし。

☆ 「作家の値段」(2010.10)

                

著者の「出久根 達郎」氏はたしか作家と古書店主をかねておられる方。

本書は「藤沢周平」氏から「吉行淳之介」氏まで24名の作家たちの初版本を中心に市価の状況を詳細に記した本。

基本的に初版当時のままの美本、帯付きの状態での価格になるが、どなたの家でも意外と押入れの中から簡単に発見できそうな本が実は何万円もしているというのが新鮮な驚き。

本書を読むと、とても十把ひとからげで古書を廃品回収に出す気になれず事前に綿密に調べたくなるほど。

ちなみに、高額な値のついた主な作品を興味のある作家、一作品に絞って挙げると次のとおり。

大仏次郎(「ふらんす人形」昭和7年新潮社刊、帯付きで60万円以上)

谷崎潤一郎(「小説二編」大正4年、三生社刊、函付きで50~60万円)

芥川龍之介(「羅生門」大正6年、阿蘭陀書房刊、25~30万円)

井上靖(「闘牛」昭和25年、帯付きで35万円前後)

なお中年以降の誰もが「青春の書」として挙げるであろう「あすなろ物語」(新潮社)は昭和29年の帯付きで2万~2万5千円。これなんか、もしかするとどこかにありそうな感じ。

松本清張(”或る小倉日記伝”収録の「戦国権謀」昭和28年、15万円前後)

萩原朔太郎(「月に吠える」大正6年初版本で200万円)

井伏鱒二(「父の罪」大正13年、60万円)

与謝野晶子(「みだれ髪」明治34年、130~150万円)
 

中原中也(「山羊の歌」70~80万円) 

開高健(「あかめであ めらんこりあ」昭和26年、40~45万円)

手塚治虫(「新宝島」初版500万円)

さすがにこの辺のレベルになるとやっぱり「在りそうに無い」のが「稀観本」たる所以かなあ。


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