「物の弾み」(もののはずみ)という言葉がある。
広辞苑によると、「その場のなりゆき。ことの勢い。」とある。今回は「物の弾み」が、結果的には凄い効果をもたらしたという話である。
その顛末を記してみよう。
あまり気が進まなかったがオーディオ仲間たちに唆されてウェストミンスターにタンノイのオリジナルユニットを収めたところ、想像以上の成果にホッと一息。これからこのユニットでずっと行こうと決心するのにさほど時間はかからなかった。
その反面、手持ちのJBLのD130ユニット(口径38センチ)を使う機会を失ったことによる喪失感も確実に残った。とにかくこのD130は常にアタマの片隅にある気になるユニットなのである(笑)。
一念発起して、よ~し、いっそのことD130用の新しいエンクロージャーでも作ってみるかと、クルマで50分ほどの大分市の大型DIY施設に下見に出掛けてみた。木材の品ぞろえがとても豊富で目移りしたが、「厚さ1.5センチ」の合板のヒノキ材というのが目に入った。お値段も手ごろなので「ヨシ、これに決めた」。
自宅に戻るとグッドマンのエンクロージャー並みの大きさというのがずっとアタマにあったので、きちんと寸法を測り図面を描いた。やり直しは利かないので何度も寸法を確認しながら、翌日、再度出掛けてその寸法どおりにカットしてもらった。
ただカットしてもらったのはいいものの、そのうち厚さ1.5センチの板に重量感のある38センチ口径のユニットを付けるなんて大丈夫だろうかと漠然と不安感が持ち上がった。
そこで、万一ダメなときのために「AXIOM80」(グッドマン)も聴けるようにしようと方向転換。よし「バッフル」の入れ替えが自由に出来るようにしようと決めたが、そのうちD130のことはすっかりアタマから離れて期待感は「AXIOM80」オンリーになってしまった。
グッドマン指定のエンクロージャーに容れておくのも悪くはないが、このユニットはもっと凄い能力を秘めているような気がして仕方がないのだ。そしてこの予感はズバリ的中することになる!
ことほどさように、なりゆきというものはまことに恐ろしい(笑)。
それにしても、これまで「にわか仕立て」で沢山SPボックスを作ってきたが、今回ばかりは慎重にいこうと大分市のNさんの手を借りることにした。とても器用な方でこういう緻密な作業にはもってこいの方である。
「ネジを使ったら箱の響きが悪くなるのでいっさい使わないようにしましょう。全体をボンドで接着することになるので締め付用のルトを持って行きます。」
感謝感激である。さあ、作業当日は朝から夕方まで二人で文字どおり大奮戦。
その結果、ようやくこういう形になった。
よく乾燥させてから、次の段階へ移った。
厚さ1.5センチということもあって、補強材は欠かせず、みっちりとネジ止めしている。ここまで来ると、7割方完成といったところで、後はバッフルへのユニットの取り付けを残すのみ。
なお、バッフルを簡単に入れ替えられるようにネジ受け用の「鬼目」を10か所打ち込んだが、1.5センチとの狭い隙間に埋め込むのだからとても大変だった。
翌日は独りでバッフルに「AXIOM80」の取り付け作業を行い、試行錯誤の結果ようやく午前中に完成した。
ペンキ塗りは後回し。いい音が出てくれれば塗るし、そうじゃないときはそのまんまにしよう(笑)。
なお、「AXIOM80」は「内側からマウントするよりも外側からマウントする方が断然音がいい。」と、かねがね聞いていたのでその通りにやってみた。ただし、もともと内側からマウントするように作られたユニットなので正直言って取り付けに苦労した。自分で言うのも何だが、かなりのノウハウが必要になる。
また、肝心の「ARU」は底板に穴を開けて自作の細かい網目状のネットを張り付けている。
さあ、いよいよ音出しだ!
そして、出てきた音を聴いてビックリ仰天!(笑)
以下、続く。