「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

名画「羊たちの沈黙」の放映

2016年10月24日 | 独り言

本日(10月24日)、NHK BSプレミアム(21時~23時)で名画「羊たちの沈黙」(1991年)が放映されます。

同年のアカデミー賞として「作品部門」「監督」「主演男優」「主演女優」など主要5部門を総なめにした作品ですが、ミステリーとしても非常に良くできた映画だと思います。まだご覧になっていない方は是非~。

このブログでも9年前に次のように紹介しています。(再掲)
  
概  要

サイコ・スリラーの傑作である。猟奇殺人犯を追うFBI女性訓練生クラリスは、かって同様の事件を起こして服役中の天才博士レクターに助言を請いに監獄を訪ねるが・・・・・。

感  想 

冒頭のシーンでFBIの訓練学校の入り口近くの木に「”苦しみ、悶え、痛み”を愛せ」という標語が掲げてあるのが印象的だった。自分自身が楽をしたがる性質(たち)なので戒めとして強烈に記憶に残っている。もちろん、実行はできなかったが(笑)。

貧しい家庭に育った利発なクラリスはFBIの訓練課程で立派な成績を残し、それがもとで教官から見出され、監獄にいる殺人鬼レクター博士の尋問に向かう。

ここでクラリスはおざなりに備えた靴と、気を入れて買ったハンド・バッグとのグレードの違いをレクター博士から指摘され、はっとする。ただの殺人鬼だとたかをくくっていたレクターが、観察力に優れたインテリであり、その発想には深い洞察が含まれていると知るからである。こうして、クラリスは凶悪犯に、いわば人生の師を見出していく。 

この映画は猟奇的な殺人事件とそれを解決するのにFBIが凶悪な天才犯罪者の手を借りるというのがストーリーの核となっているが、一方でこういう若い女性と初老のインテリとのかかわりを描いた映画としても楽しめる。

どちらかといえば殺人捜査のミステリーの展開に関心が行きがちだが、むしろ、こういう人と人との関わり合いの中で若い女性が成長していく物語としてもよく出来た映画だという思いがした。人生の妙味とは優れた師とのめぐりあいでもある。
 

主役を演ずる、ジョディ・フォスターは知的な雰囲気があって含羞を感じさせる表情が実に豊かで、この映画をみてファンになったが今では押しも押されぬ大女優となっている。これは余談だが、男児を二人生んだ(父親をあかさないが人工授精との噂)そうだが・・・。

また、もう一人の主役アンソニー・ホプキンスも入魂の演技だ。超インテリと人肉を食する凶悪殺人犯との2つのイメージを演じ分けているが、複雑怪奇で不気味な雰囲気を見事に醸し出している。

映画の中程で、警官を惨殺するシーンの直前にバッハの「ゴールドベルク変奏曲」を聴いていたのが知的な静謐と残忍さの両極端を暗示して印象的だった。
 

なお、馬場啓一氏の著書「人生に必要な全てをミステリーに学ぶ」によるとトマス・ハリスの原作ではクラリスが貧しい境遇に育ったことが重要な背景になっており、「貧乏は恐ろしくない、しかし恥じる気持ちが人間を卑屈にしてしまう。」という信念のもとで、さまざまな苦境を乗り越えて雄々しく生きていく若い女性の自立の過程を実にたくみに表現していて、ミステリーでありながら文学作品の香りがすると評されている。  


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