つい先日のブログ(2016.5.17)でタンノイ・オートグラフ(国産箱)試聴に関する記事を掲載しておいた。
持ち主のMさん(大分市)の「音ではなくて音楽を優先した鳴らし方」に感銘を受け、もし(Mさんが)我が家にお見えになった時は「ユメユメ鬼面(きめん)人を驚かすようなコケオドシの音は出さないようにしよう」と、固~く心に誓ったわけだが、そのMさんがとうとう我が家に試聴にお見えになった。
ご一緒されたのは「アルテックA5」を愛好されている真空管アンプビルダーのNさんで、オーディオの猛者(モサ)のお二人を交えての試聴会にはじめからチョッピリ緊張した(笑)。
「ひっそり、しめやかな、そして質感の高い音」を心がけるとともに他人の耳が加わると新たな発見に恵まれることが多いので秘かに胸を弾ませたわけだが、やっぱりというか、とてもタメになったので後日のために記録に残しておくことにした。
それにしても、この日にMさんが持参されたのは何とも再生の難しい意地の悪いCDだった。
「モダン・ジャズ・カルテット」といえば、ヴィブラフォン(ミルト・ジャクソン)が有名だそうだが、これをウェストミンスターのシステムで聴いたところ蒼くなってしまった。
低音域と中音域の繋がりが悪くて実におかしな音になったのである。ヴィブラフォンという楽器の再生はシステムのアラをたちどころに露わにしてしまうようだ。お客さんのMさん、Nさんも無言のうちに首を傾げるばかり。
そのときのシステム構成は次のとおり。
CDトランスポート(dCS) → DAコンバーター(dCS) → (プリアンプ抜きの直結) → パワーアンプ「71APP」
そしてスピーカーは3ウェイのオールホーン式、ネットワークはYL音響製。
低音域(~1100ヘルツ) → フィリップスの口径30センチのダブルコーン型(箱はウェストミンスター)
中音域(1100~9000ヘルツ) → グッドマンのミダックス・ドライバー(オリジナルホーン付き)
高音域(9000ヘルツ~) → JBL「075」(ステンレス製の特注ホーン付き)
周波数の分担域に応じてそれなりの適切なユニットを配置している積もりだし、他のCDならそこそこの音なのにヴィブラフォンの再生となるとなぜこんなにおかしな音が出るんだろう?
「お前はそんなに駄耳なのか」という評価が恐ろしくて(笑)、「10分ほど時間を貸してください」と、即行動に移った。
急遽、3ウェイから無難な2ウェイへと方向転換してバタバタと結線のやりかえ。な~に、ドライバー工具1本あれば済む話。
YL音響製の3ウェイ式ネットワークに替えて、パイオニアの2ウェイ式ネットワークのリリーフ登板と相成った。クロスオーバーは4000ヘルツ。低音域はそのままに、4000ヘルツ以上をFane社(イギリス)のコーン型ツィーター(口径10センチ)へと変更。
「いやあ、随分繋がりが良くなりましたよ!」と、一同ご満足のご様子。これでホット一息。
3時間ほどの試聴を終えてお客さんたちが帰途につかれた後でようやく「ヴィブラフォン騒動」の原因らしきものに思い至った。
ウェストミンスターの箱を使って2ウェイや3ウェイにするときはオリジナルユニット以外はクロスオーヴァーを1000ヘルツの設定にしたのが大間違いのもとだったようだ!
あの独特のフロント・ショートホーンの形状がキーポイントでカタログの仕様ではクロス1000ヘルツとされているもののそれはあくまでも同軸2ウェイを使ったときの話で、別のユニットを使うときは少なくともクロス3000ヘルツ以上に設定しなければいけなかったみたい。
道理で、これまでJBL3ウェイシステム(クロス500ヘルツ)がうまく鳴ってくれなかった筈で「今ごろ気付くなんて」と自分のアタマを小突いてやった(笑)。
これで我が家のオーディオは1歩も2歩も前進(?)。
翌日はクロス4000ヘルツをそのままに、コーン型ツィーターからJBLの「075」に変更。能率が110dbとメチャ高いのでアッテネーターの位置は11時ごろと随分控え目に。
駆動するアンプの方も「71APP」からより高域に透明感がある「71Aシングル」(インターステージトランス入り)に代えたところこれが大正解。懸案事項だったシンバルの響きが冴えわたった。
これでクラシックもジャズも何でもござれだ(笑)。
メーテルリンクの童話にチルチル(兄)とミチル(妹)の「青い鳥」という戯曲がある。幼い頃に読んだことがある方も多いことだろう。
ひとくちに言えば、「探していた宝物は意外にも身近に手の届くところにあった」というオチだが、これまでツィーターには散々試行錯誤し迷いぬいてきたが、やっぱり昔から使ってきたこの「075」が一番だったようだ(笑)。