「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

現代ミステリーの金字塔

2015年04月09日 | 読書コーナー

☆ 「ソロモンの偽証」

この正月の帰省の際に娘が持って帰ってきたミステリー「ソロモンの偽証」(宮部みゆき)。

         

読了した娘が「お父さん、とても面白かったよ。私の中ではとうとう<Yの悲劇>(エラリー・クィーン)を越えたね。」と言うから、面白いのは分かっていたが、いつでも読めると思って図書館から借りてきた本を優先していたのだが、このたび図書館が改築の運びとなり休館しているのでやむなく読み方始めとなった。

当初は6冊ともなるとちょっと気が重かったが読み始めてみるとどうしてどうして、一気に読み耽った。

本書の謳い文句「現代ミステリーの金字塔」に恥じない内容でこれにウソ偽りなし。まず、あらすじを紹介しておこう。既に読破した方も多いだろうがお許し願いたい。

1990年雪の舞うクリスマス・イブで舞台は東京の下町。イブの翌朝中学の屋上から落ちた中学二年の男子の遺体を雪の中から同級生が発見する。警察は調査した結果、自殺と判断する。このため事件は落着と思われたものの、亡くなった少年は不良グループ3人に突き落とされたという告発状が校長などに届く。

その告発状をテレビ局の記者が入手し、いじめが裏にあると報道したため事態は一気に急変する。しかも亡くなった少年と同級の少女が交通事故で死亡し。加害者と目される不良グループの喧嘩で一人が大怪我をする事件も絡む。ところが学校側は好調などを辞職させ、事件の決着を図ろうとする。ここまでが第一部「事件」である。

この大人たちの思惑に対し、第二部「決意」は翌91年の夏休み前、死んだ二人と二年生の時に同級でクラス委員だった少女が三年生になっても事件を忘れず、卒業制作を事件の真相解明にしようと級友たちに訴えることから始まる。やがて彼女に賛同する生徒も現れ、卒業制作も不良グループのボスである同級生を告発状どおりに殺人罪で問い、真実を知るための学校内裁判にしようと彼女は決意する。

そして第三部「法廷」は夏休みの8月15日、終戦記念日の朝から20日までの6日間のリーガルサスペンスとなる。

謎解きの面白さに加えて、主役となる思春期の子供たちにつきものの不安、迷いや成長ぶりが実にうまく描けていて、まるで血と肉を与えられたひとりの人間として躍動している感がある。ミステリーは登場人物の人間性がうまく描けていないと台無しだが、本書にはそれがない。

「宮部みゆき」は「東野圭吾」と並んで現代ミステリー界の東西の両横綱であることを改めて確信した。

絶対に読んでみて「時間を損した」と後悔しない一押しのミステリーである。興味のある方はぜひ読んで欲しい。

☆ 逃げる幻

                   

1か月ほど前に図書館から借りてきて、いっさいの先入観なしに読み始めてみたのだが、非常に良くできた精緻なミステリーだった。あらすじを紹介しておこう。

「家出を繰り返す少年が、開けた荒野(ムア)の真ん中から消えた――ハイランド地方を訪れたアメリカ軍人ダンバー大尉が地元貴族ネス卿の娘から聞かされたのは、そんな不可解な話だった。その夜、当の少年を偶然見つけたダンバーは、彼が何かを異様に恐れていることに気づく。そして二日後、少年の家庭教師が殺される――スコットランドを舞台に、名探偵ウィリング博士が人間消失と密室殺人が彩る事件に挑む傑作本格ミステリ。」

自分が書くよりも、もっとうまい読書感想がネットにあったので引用させてもらおう。要は「手抜き」ですが(笑)。

「2015海外本ミス第1位作品。世界史に疎い私にも、この第二次世界大戦終結直後におけるスコットランドの時代背景を無理なく理解させてくれる丁寧な描写が有り難く、戦争が残した罪深い爪痕に語り尽くせぬ犠牲を強いられた人が世界中にいることを再認識させられる物語だった。人間消失や密室の謎は今作において装飾の一部程度ではあるが、終盤のウィリングの真相解明には感嘆の連続で、漏れのない伏線回収の素晴らしさも見事だった。そして全てが明かされた時に訪れるカタルシスには切実な哀しみが内包されている。絶賛に違わぬ本格ものの傑作。」

登場人物の会話に奥行きがあって、犯人の意外性も申し分なし。これは極めて上質のミステリーである。
 


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