久しぶりにマンガの本を2冊買った。
1つは、メビウスの「B砂漠の40日間」という作品でもう1冊はアニメーション映画「パブリカ」「東京ゴッドファーザーズ」「千年女優」の監督でも有名な今敏さんの「海帰線」という作品だ。
メビウスは20年以上前からの僕のヒーローであり、地平線がバーンと見える空間に観たことの無い生き物や機械が出てきて、アジアや古代ヨーロッパの装飾的民族服を着た人間が手描きの線で鮮やかな説明の出来ないイメージの世界を展開させている。
僕は、メビウスは「気」で絵を描いているように思う。太極拳や気功のように、気の流れを目と手とに感じて、自由に描いている気がするのだ。そして、脳に与える刺激がちょうどいいのだ。描くべきところは濃密に繊細に描き、フォーカスから外れた部分は大胆におおざっぱな描写をしている。だから、観るものにストレスを与えない。しかも、今作品は線画のみなので(カラー作品は上品だがけっこうサイケデリックでカラフルなものが多いが)、さらにそれが徹底している。ページ数が多くてあくまでメビウスのイメージの世界を描いた大作なのに疲れないのだ。よくある作家のこれでもかーというようなエゴを感じないのだ。
今敏さんの「海帰線」は、この1冊が1本の映画だった。絵が上手すぎる。しかも繊細で大胆な紙面はメビウスの上品さにも似ている。脳に心地いい描きこみで、説明的台詞を極力減らしている。こっちは、リアルな人間の金や権力に対するエゴと人間性の戦いだ。ファンタジーや伝説との融合を見事に描ききっていた。やはり映画だ。しかも、日本映画だ。
メビウスも今さんもホワイトスペースの妙を知っている。おそらく水墨画を描かせたらめちゃうまいだろう。
マンガに久しぶりに感動し贅沢な1日だった。