8/28に偶然にも原発関連の番組が夜から深夜にかけていくつかあった。そのうちの一つNHK教育のETV特集「ネットワークで作る放射能汚染地図③」について長くなるけど記録として残すために書いておこう。
まずは被爆には「外部被爆」と「内部被爆」がある。
外部被爆は人の環境が放射能に汚染されていて、そこに長く居ればいるほど被爆量が増える。内部被爆はチリやゴミや水や食べものに放射能汚染物質がついていて、それを吸ったり、飲み込んだりして体の内部から汚染されていくことを指す。
この番組は、福島第一原発事故の緊急時避難準備区域に指定された福島市、二本松市、郡山市(原発事故の中心地域から多くの避難してきた人たちが住んでいる町でもある)での、元理化学研究所の所員で「被爆」の研究をされた木村真三さんと岡野眞治さんの放射能汚染地図づくりと外部被爆と内部被爆の調査、そして、放射能の除染の活動のドキュメントだ。
放射能汚染図づくり
まずは放射能汚染地図づくりだ。自治体が山林部を除けた主な市民の居住地域を地図上で区分する。それを木村先生と自治体職員の人が調査する。調査は地上1mくらいの空間調査が主だが、カウンターの値が高いところは地層を掘って専門機関に送って汚染土を検査してもらう。だいたい地下5cmくらいが汚染されていることがわかった。
次に調査した値から地区ごとに分けた地図に、汚染度の値によって色を塗り分けていく。すると市全体の汚染の様子がつかめる。
外部被爆と内部被爆の調査
次に汚染値は高い地区に行って戸別訪問を行なって一軒一軒汚染度を測る。
特に妊婦さんや赤ちゃんや子どもがいる家庭は念を入れて測る。カウンターを一人一人に持ってもらって、家族全員をひとりひとり1日分の放射線量を計測し、合計3日計る。すると同じ家族でも値が違うことから、おもに長く居る場所の汚染度が分かる。家族ごとの年間被爆量も推定できる。年間被爆推定量が基準値より高いようであればその家から避難したほうがいいということになる。
また放射能の影響を受けやすい子どもをお持ちの家庭では、学校までの通学路やその周辺の子どもたちが立寄りそうな場所も放射線量を調査しなければならない。放射線の被爆量はそこにある放射線量かける時間で計算できる。つまり3・11以後現在までの被爆量は3・11以後移動した場所にどれだけの放射線がありそこに何時間いたかをかけることで推計するしかない。だから。福島第一原発付近から福島市に避難している佐藤健太さんという若者が3・11以後の子どもたちの移動記録を記載するノートのモデルを作り、自治体に制作を提案され、それが通って被災地の小学生たちに配られていた。
佐藤さんは自分がどれくらい内部被爆したか知りたくて放射線医学総合研究所までわざわざ車で出向いて2時間かけて調べてもらったが、「安全です」としか教えてもらえなかった。被爆量の具体的数値や記録書ももらえなかった。ただ、被爆者としてのデータを取るモルモットのように扱われた。NHKがあとで取材することでその被爆量が伝えられた。つまり、公の内部被爆を調べる機関はデータは取るが、被験者を安心させる機関ではないということだ。
国は被災者を護らない。山川さんは一向に被災者に助けを出さない国に不信感を持った。
山川さんが作ったノートは今後子どもたちの医療やもし発病したときの賠償の証拠のひとつとして使えるかもしれない。なにより、その子どもが大人になったとき、真実が知りたいと思ったときの一つの確認できる記録になるだろう。
さらに内部被爆の調査だ。木村先生と岡野先生たちは簡易型の持ち運びができる内部被爆計量機の発明に成功していた。それで、今回調査させていただいた赤ちゃんやお子さんをお持ちの家庭の方の内部被爆を検査していた。子どもさんがぐっと切腹みたいにせんさーの先をおへそのあたりに押し当てるとモニターにグラフがでてきてすぐに被爆値が分かる。
先に書いた山川さんも内部被爆量の検査を受けていた。検査する木村先生と話すことで微笑がもれていた。検査値はセシウムがでていた。3・11から検査の日までの外部被爆量は分からないが、これから1年後の内部被爆量は推定でき、モニターで値を確認できた。こうした国民一人一人の安心を提供できるようにすることが、国や自治体の存在価値になるだろう。
除染
国の放射能対策を待っていられないと二本松市は独自に除染活動を開始した。
除染は汚染された地域の土などを削って移動させ居住地の放射線量を下げることだ。
まずは家の内外の放射線量を測る。特に放射線量の高いところの地層を切ってさらに放射線量を測る。地表から5cmくらいまでのところが汚染されていることを確認。
汚染された表土を深さ5cmくらい削って耐水性の土嚢袋につめる。ひたすら削ってつめる。
土嚢に詰まっているのは放射線汚染物質であるからかってに捨てることはできない。自治体が指定する場所に仮安置する。今回の場合土を削った家庭の土地で耕作放棄地に置いていた。自治体ごとに正規のこういう放射線汚染物質の置き場を指定する作業が急がれる。
さらに屋根部分の除染も行なわれた。瓦を高速で水を発射できる放水機で洗い、雨どいにたまった、土やごみを取り除く。この雨どいの土がかなり放射線濃度が高かった。この屋根の除染はかなり重労働のようだ。
最後に家の内外、各部屋の除染後の放射線量を計る。今回の除染で放射線量は半分に減った。この除染後の家に住めるかどうかがを判定すればいいということになる。ちなみにこの家は赤ちゃんも住めそうということになった。
どちらにしても自分がここに住んでいてもいいのかどうか、除染で住めるようになるのかどうかを早く判断しなければならない。なぜなら、放射線量かける時間が被爆量になるからで、ながく居続ければ居るだけ、命を危険にさらすことになり、赤ちゃんや子どもは親が護るしかないのだから。国はまだしばらくは動かないだろう。
原発被災地の自治体は独自に汚染地図を作って市民に公表し、除染チームの編成と汚染度の保管地の確保をすべきだ。さらに木村先生たちの内部被爆の計量器を早くたくさん作って、医者などに被爆量の計量の仕方を教え、各地の病院で内部被爆を確認できるようにしたほうがいい。そうしないと、自分たちで自分たちや子どもの命を護れなくなると思う。
福岡の人も、福島の事故を他人事と考えず、玄海原発1号機が古いタイプで日本で一番壊れやすいこと、一年の三分の二くらい玄海町から西へ風が吹いているらしいということ(高島福岡市市長がテレビで言っていた)。距離的には糸島半島が飯館村(計画的避難区域つまり全員非難したところ)と同じで、玄海原発と福岡市の距離も福島原発と除染が必要な地域がある福島市の距離より近いことは知っておくべきだ。
僕たちが愚かなままでいてはいけない。原発が事故を起こした場合のマニュアル作りと避難経路、被爆の検診と子どもへの対策など自治体がシュミレーションしておくことが大切だと感じた。九大に防災の専門家もいる。
原子力発電所は廃炉をしても安全ではない。発電後の核燃料廃棄物はこの地球上どこにも捨て場所は無い。放射能を出さないようになるまで何万年もおそらく廃炉した原発内に安全に管理し続けなければならない。何万年分も負の遺産を残すことで、今の便利な生活や経済活動を優先する僕たちを、未来の日本人が許すわけが無い。安全に放射線を管理する新技術ができるまで、原発は止めるべきだろう。
おそらく数年後福島付近の県から甲状腺がんの子どもや白血病の子どもがでてくることが予想される。時間がたてば経つほどその数は増えることも予想できる。今、野田総理が誕生した。5ヶ月間、菅さんは何もしてこなかった。組閣や予算とか具体的対策が動くまでに早くとも冬以降になる可能性がある。どうして、こんな大事なときに菅さんが総理をしていたのだろう。政府のスピードが遅すぎる。
国会はそれでいいと思っているが、国民はそれでいいのかということだ。この番組は木村先生や岡野先生や山川さんなど個人の活動が一部自治体を動かしているドキュメントだ。どうやって、子どもを護るかの一つの方法のを示したと思う。さすがNHKだ。もっと多くの知恵のある人、お金を持っている人が集まれば未来の子どもの命を救えるのではないかと思う。義援金をこういう活動に早く使うべきだ。
祝島のばあちゃんたちは何と言うだろう。