九州大学大学院工学研究院の清野先生のごあいさつと、今回のイベントの趣旨説明でスタートしました。
今回のイベントの趣旨は、きれいな海の自然に恵まれた糸島半島の海岸付近の環境を歩き回って調査した人々や専門家の情報を聴き、糸島半島の環境の問題点と活用の可能性を海辺からの視点から話し合おうというものでした。
次は日本で漂着物にとても詳しい漂着物学会の林重雄さんの、ビーチコーミング(ビーチコーミングとはビーチ=海岸、コーミング=櫛ですく という2語が合体してできた言葉で,海岸を櫛で削るようにじっくり見ていくこと)の講演でした。いろいろお話いただいたのですが、種子島に長崎や熊本のごみ多く漂着する話(あまり知られていない南下する海流があるそうです)と、アオイガイというオーム貝みたいなカイダコ(軟体部)が殻を着た貝の話がとても新鮮でした。アオイガイの殻の糸島半島への漂着は2013年4月4日に初めて確認されたようで4月から5月にかけて285個の漂着を確認しているとのこと。僕も、この春海岸を探してみようと思いました。
上のサイズで左右20cmくらいです。
林さんはアオイガイに魅せられた感じですが、自分なりの漂流物観察の楽しみを見つけてほしいとのことでした。漂流物学会に興味のある方は[漂流物学会]で検索してみてください。
次に、「姉子浜鳴き砂を守る会」の森田季久さんが、姉子浜の現状を報告してくれました。鳴き砂を実際にどんぶりに入れて持ってきてくれて小型のすりこぎ棒で砂を突くとグッとかキュッというくぐもった音が聞こえました。姉が浜の清掃活動を近隣の地域の方がいくつかの地域ごとにチームを作って月一で輪番制で行われているそうです。清掃の予算が年間4万円しかないので、ごみを出すにも十分な予算がないとのことでした。
また、地元の小学校や中学校の生徒さんが授業の一環として年に1回海岸清掃活動をしてくれているとのことでした。地元の人たちが教育の現場の人や子供たちも一緒になって地元の環境に関心が持てるよう流れを作っていることに地元愛をとても感じました。
次に「糸島植物友の会」の平野照美さんが「海岸の植物(砂浜)」という演題でまずハマボウの732本の群生が天然記念物に選ばれたことから始まりました。次にご自身が52年前の糸島高校2年の時に行った「幣(にぎ)の浜」の調査の話がありました。この調査は幣の浜を4つのブロックに分けてどんな植物が生えているかを調査するだけでなく、砂や土壌の塩分調査もされたそうです。その結果が糸島高校が発行する機関誌「糸校文琳第14号1965年」に記載されているそうです(一部をパワーポイントで見せていただきましたが字が小さいせいかとても細かく緻密なモノに見えました。)。
浜に近い砂浜にはいろいろな植物の種が漂着し芽を出すものがありますが、3か月たつと砂浜から消えてしまう種(グンバイヒルガオなど)があることを知りました。
また一貴山川河口周辺に現在も生えている植物をパワーポイントでたくさん紹介していただきました。ケカモノハシとか、ハナウツボとか知らないものばかりでした。松がなぜ砂浜に適しているか、砂浜に生えないハマビワとの対比で紹介してくれました。つまり、葉っぱに風で砂が当たっても傷が付きにくい松は大丈夫で、広葉樹であるハマビワは飛んでくる砂に傷つきやすく傷がつくと光合成が出来なくて枯れるからだそうです。
それから2000km以上旅をする蝶として知られる、アサギマダラが食草とするスナクチソウも幣の浜にはえていることも初めて知りました。
平野さんの最後のお話は福吉の一貴山川河口にレッドブックに絶滅危惧種の指定を受けたハマサシという希少種が冬場赤いじゅうたんのように群生しているのが観られるというものでした。
糸島には希少な植物ががまだ生きられる環境なんだと再認識させられました。
しかしこういうことを平野さんは50年以上もずっと興味をもって調べられていたのですね。
最後の講演は九大への留学生の耿舒圓さんの研究発表でした。
日本人もやっていない糸島半島にある海岸のごみの調査をされていました。耿(こう)さんは中国の南海島出身で海を通じて日本の関係が知りたかったとのこと。
耿さんは糸島半島の長浜、唐泊北、金山(大口)海岸、芥屋、福ノ浦、新町、深江、大入の8つ海岸を調査されていました。
どんなゴミがどんな量で漂着してるかを分類してデータ化されていました。博多湾側の長浜海岸と玄界灘側の芥屋海岸を比較されていました。たとばペットボトルが国産なのか外国の国別の分類など興味深かったです。こういう地道な調査が継続的に続けられるとすごい資料になりそうに感じました。
しかし、一番注目されたのはドローンで撮られた金山海岸の映像で、みなさんドローンの映像の威力に食いついていました。面白いですね。
最後にシンポジウム形式で、正面に並んだ講演者と参加者が質問やその解答、講演者の感想など最後まで熱心に話し合いが続きました。
漂流物学会の林さんが漂流物でアート作品を作る活動もされていて子どもたちの初心者には誰でもできるのでモビールが人気とおっしゃっていました。また。鳴き砂は冬場に大波に洗われることが大事とのことでした。
また福吉の方の話によると自分が子供のころ福吉小学校では春の遠足に姉子の浜に行っていたそうです。3kmの距離があるが、6年生が1年生の手をつないで行くのが恒例だったそうです。
糸島植物友の会の平野さんからは、近年、幣の浜の植物のデータベースづくりの中に、標本づくりを加え、小学校の生徒さんたちといっしょに行っているそうです。この標本づくりが写真を撮るより、DNAが残せるので資料としてこれからものすごく貴重になっていくのだそうです。
深江の地元の松原を保全されている方たちから年4回、福吉小学校の5・6年生が「松葉かき」という作業を手伝ってくれていることなどが紹介されました。深江地区では学校の土曜のカリキュラムの中に授業の一環として地域の環境整備が組み込まれているので、こういうことができるとのことでした。大人たちがよく考えて、よくカミュニケーションが取れるところは、子どもたちも含めて、地元愛を高めるこういう活動ができるのだと思いました。
会場(深江公民館)には珍しい漂着物の展示もありました。
少し、多くの情報や問題点が出すぎた感じもありましたが、今後横との連携をもっとした方がいいなあと思いました。また、地域の人だけが頑張るのではなく、もっと国や県、市の行政との連携も含めて、総合的に問題解決した方が、未来にいい環境の海岸が残せるように思いました。
また子供たちにこういう問題が起きていて、大人たちが熱心に考えて、取り組んでいることを伝えることが大事だと思いました。とくに、こういうイベントに中高生が誰も参加していないという糸島の現状も少し考えた方がいいと思います。たった一人もいないことを教育の現場の人やPTAの人は考えたほうがいいし、田舎から子供がみんな出て行って過疎化していることと10年後20年後、30年後の糸島のことを考えてほしいと思いました。
最後に大口海岸で夏の海水浴シーズンの多量のゴミが出るらしいのですが、グループでバーベキューをして、そのまま人間だけが神隠しにあっていなくなったような状態で、ごみを残していく人たちがいるとのことでした。こういうことをする残念な人が増えているのも事実なんでしょうが、みんなで浜を守る側の人を増やす活動が大事なんだと思います。
本当に最後です。平野さんの「糸島植物友の会」への入会申し込みや問い合わせはこちらです。だいたい毎月第4ン日曜日に観察会があり、事前に連絡先に集合時間と集合場所をお聞きください。参加費は確か400円で保険代です。歩きやすい恰好でお弁当と飲み物持参してください。お昼に、平野さんがコーヒーを飲ませてくれるかもしれません。
参考:http://blog.goo.ne.jp/itoitoisland/e/2bd06c1269ebeb221b99d92e6d5773fa