日本語おもしろ発見

日々の生活から

太宰治作品の特徴を探る―前期「道化の華」、中期「走れメロス」、後期「人間失格」に着目して―

2013-12-10 17:52:12 | 研究演習2013
要旨

抽象的な判断や主観に基づいて語られることの多い作風の変化といった現象を、文長、品詞分類、分類語彙表による分類など、具体的なデータによって実証することを目的としている。

「道化の華」「走れメロス」は50分中の総文字数が1000文字前後であるのに対し、「人間失格」のみが飛びぬけて文字数多いことがわかる。各行の文字数を分布図で表したとき、「道化の華」「走れメロス」は主に20前後で推移しているのに対し、「人間失格」は一文あたりの文字数の振れ幅が大きいことがわかった。品詞の分類では各作品で大きな差がみられず、どの時代でも一定の割合で書いていることがわかった。

『分類語彙表』を用いて、抽象的なものである語の意味を客観的な傾向として表した。品詞の中で最も多くまた作品の特徴やテーマが表れやすい名詞を選択し、『分類語彙表』から、人間、家族、仲間、人物、成員、公私、社会、機関、心、言語、芸術、生活、行為、交わり、待遇、経済の16のカテゴリーに分類した。「走れメロス」では人物の項目が多い。登場人物が多く、メロス、王(暴君)など具体的な人物を表すことが多いためであると考えられる。「道化の華」「人間失格」ともに、人間、心の項目が多い。これは両作品ともに語り手の感情を中心に語られる小説であるからだと考えられる。

各時代の傾向を示すには、データとなるものが三作品、50文と少ないため不完全な部分のある調査となった。しかし、文長や分類語彙表による分類では作品による違いがはっきりとでていたため、今後作品数と文量を増やすことでより有用な結果が得られると考えられる。

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