おはようございます。読売新聞は本日の社説で、TPP問題について、「首相は、慎重派の意向を尊重しつつも、やはり、ここは不退転の決意で参加を表明すべきだ」と、催促しています。ジャーナリズムが寄って立つべき「民主主義のルール」をかなぐり捨てた社説を掲載することに何のちゅうちょもありません。
生き生き箕面通信1067(111110)をお届けします。
・反対を押し切ってのTPP参加表明――日本の民主主義が問われる日
野田首相は本日、反対論に包まれながら、「TPP交渉に参加する」と表明すると見られています。国論が真っ二つに割れているなかで、オバマ大統領に「日本を差し出す」と決断するわけです。
民主党の経済連携プロジェクトチーム(PT)は昨夜まで50数時間かけて討議しましたが、結局、両論併記になり、すっきりした結論を出せませんでした。
両論併記ですが、「慎重派」の立場に考慮して、TPの提言は「慎重な意見が多かった」と書き込みました。これをどう受け取るかですが、慎重派は当然のことながら、「首相は簡単に賛成と言えなくなった。首相は提言内容にしばられる」と解釈。一方、「賛成派」は、提言の内容は「首相の判断をしばるものではない」と受け取りました。
つまり、賛成派は「慎重な意見が多かったけれど、ここは『国益』を考えると、交渉参加に踏み切らざるを得ない」という判断です。野田首相も、そう判断するのでしょう。
しかし、ことは「民主主義政治」の進め方です。反対や慎重な意見が強く、国論が真っ二つに割れている時は、拙速に結論を出さず、徹底的にさらに議論を深めるべきです。今の段階では最終判断を下すための情報があまりにも不足しており、どう判断すべきか、迷っているのが実態です。もっと判断材料を提供すべきです。
そもそも、どんな理屈で「国益にプラス」といえるのか。またたとえば、カナダ政府やメキシコ政府がアメリカ企業に訴えられ、どのような賠償金を取られたのか。そこに何があったのか。現在、韓国ではどんな議論が行われているのか。ISD条項やラチェット条項は、どのように運用された実態があるのか、ほとんど知られていません。
不平等条約を押し付けられて、どれほど国益を失ったか、その不平等を解消するためにどれほど屈辱的な歴史をたどってきたか。結局は、日米戦争まで突っ込んだのです。
今回のTPPも、「日米同盟を深化」するどころか、結局は日米間の対立の火種になることが想定できます。
そして現在の根本的な問題は、日本が民主主義政治を機能させ得ているか、です。統治の本質が問われています。