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いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

「ごっこ」の世界を続けたいとき

2006年07月24日 20時57分31秒 | 日本事情
話は簡単だ。

1990年に『昭和天皇独白録』が出た。寺崎英成の娘の手元にあったもの。公開当初この『独白録』の独白の目的は何か?議論をよんだ。伊藤隆はただの回顧であり政治的目的はない、と主張したのに対し、秦郁彦が東京裁判向けの文書であり英訳がある、と主張した。伊藤は「秦さんの言う英訳が出てきたらカブトを脱ぎます」といったが、果たして英訳文書が発見された。発見されたどころか、日本文と英訳の差異から何を目的としていた文書かはっきりした。(『東京裁判への道、上』粟屋憲太郎

その、『昭和天皇独白録』は、昭和21年3月から4月にかけて、以下5人、松平慶民(宮内大臣)、松平康昌(宗秩寮総裁)、木下道雄(侍従次長)、稲田周一(内記部長)、そして寺崎英成(御用掛)が、陛下から張作霖爆殺以来の敗戦までの回顧を聞き、まとめたもの。(『昭和天皇独白録』

この文書はまとめられ、占領軍とパイプをもっていた寺崎から占領軍に提出された。目的は昭和天皇の免訴に他ならない。つまりは、そもそも昭和天皇は「平和」主義者であり、かつ昭和天皇は立憲君主国の天皇であるから、内閣に対して拒否権はない。もし内閣が決定した開戦を是認しなければ、クーデターや内戦がおき、殺されたであろうというロジック。戦争の責任は内閣にある。だから昭和天皇は責任なし。

悪いのはA級戦犯だ。

A戦犯はケガレなのだ。

この論理は、戦後民主主義という神話と美しく共鳴している。つまり、「侵略」戦争は軍国主義者の内閣が起こしたものだ。これは一部の軍国主義者が起こしたもので、国民はだまされていたのだ。こんな軍国主義が跋扈するようになったのは民主主義がなくて、軍国主義者の存在を許したからだ。一部の軍国主義者を駆逐すれば、元の善良で美しい国家になるにちがいない。この国民に天皇も加えて欲しいと昭和天皇の側近5人組みは言っているだけのことである。平和主義での一君万民というまどろみ!

天皇も国民もA級戦犯の被害者なのだ。

さて、一部の軍国主義者が極悪で、国民はだまされていた被害者であるという神話は、占領軍が作ったものであり、のちの日中国交回復の大前提となる神話でもある。

こういう見え透いて、底の浅く、信じるのには相当な蛮勇が必要である神話を戦後のぬほんずんは信じることなしに、戦後を生きることができなかったのである。

でも、おかしいだろう!? 昨日まで大元帥として馬上にあった昭和天皇が「平和」主義者かい!? 昨日まで米英撃滅国民大会を主催して、大本営発表を垂れ流し、戦争貫徹を叫んでいた朝日、読売、毎日ら新聞社が民主主義かよ!? 戦争中中国でアヘン製造・販売していたらしい大平正芳が日中友好かよ! 八紘一宇の加藤紘一さんがデモクラッツかい?(これは蛇足だ。でも加藤のオヤジはお調子者ということがよくわかる。名づけは怖いね。)

いまいちど確認すると、こういう見え透いた神話が存続できたのは、その神話によって戦勝国である米中が日本をくいものにできたからに他ならない。

天皇免訴=なさけはひとのためならじ。

戦後民主主義を担っていたのは旧社会党や共産党が主流と考えるのは間違い。戦後民主主義は天皇を中心に対米従属、媚中の自民党こそがその最大の担い手であったのである。

だって、昭和天皇が「発布」した、マッカッサー憲法の前文が詫び状、日本以外全世界は平和を愛する諸国民、1条が天皇中心の日本政治、9条が武装放棄である。その憲法で戦後政治をやり続けているのが自民党。

で、こういう戦後民主主義のいか@サマにまどろむ戦後日本に火を付けたのが、松平永芳宮司である。

「松平の子の今の宮司がどう考えたのか 易々(やすやす)と 松平は平和に強い考(え)があったと思うのに 親の心子知らずと思っている」との言は、5人組のひとりである松平慶民宮内大臣の息子がよりによって、ケガレの象徴であるA級戦犯を合祀したとは何事か!という怒りである。

もちろん、「松平の子の今の宮司がどう考えたのか 易々(やすやす)と 松平は平和に強い考(え)があったと思うのに 親の心子知らずと思っている」と誰が言ったかは知らないが、その言の主旨はこの記事の解釈で理解される。平和主義の一君万民にまどろむ、平和「ごっこ」の世界の存続へのかちこみに対する不安と怒りである。

つまり、これは、昭和天皇は平和主義者で戦争責任は一切ない、という神話が、今にいたって、平和「ごっこ」が順調にすすんでいる今に至って、わざわざ、A級戦犯という「ケガレ」によって侵されそうなことに対する神話創作派からの怒りである。念のためいっておくと、A級戦犯という「ケガレ」という無意識の前提で徳川義寛侍従長で生きていたであろうが、もちろん、ひろひとさんのことはわからない。

ただ、ひろひとさんが靖国に行かない事実と、富田メモが事実と仮定するなら、論理的につなげるためには、上記5人組の神話とA級戦犯は「ケガレ」という認識を持ち込まざるを得ない。


 平和主義者&民主主義者「ごっこ」の世界を続けたい、実は米英撃滅国民大会を主催した、朝日・読売。

ミソゲばいいんでしょ、ミソゲば!by 朝日、読売

「ごっこ」の世界を続けたいとき、神話存続のため、<怪文書>が現れる。


 ■もっとも、「私心」は天皇のこころにあらず、と突っぱねればそれで、おわりなのではあるが.......。