水上陽平の独善雑記

水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」

「風間陽水の依頼簿(カルテ)・307」

2014-08-21 19:28:19 | Weblog



カルテ番号 に・6(13)

院長の話は更に続いた。
「病は気づきのメッセージ、という言葉があります。
気づきはキッカケで、気づきだけでは意味がありません。
そこから行いで何かを変えて、初めて意味が起こります。
つまり、気づきは行いとセットになっています。
時々、気づきが大切だと思い込む人もいますが、主体は行いです」

西本功はその言葉を聞いたことがあった。
「それを当てはめて病というものの存在を考えてみました。
すると病は単純に表現すると、変化の為にある、となります。
つい、病になったことが不幸や間違いと思いがちですが、そうでもないようです。
特に健康の反対を病と考えてしまうと、この落とし穴にはまってしまうようです」

西本功はその言葉が素直に入ってきた。
今までの健康と病に対する考え方が狭かったのではないか、と思った。
今の自分の状態が解明されたわけではないが、もう少しで解りそうな気がした。
決して正食法は間違っていたわけではなく、ただ、狭かったのかもしれない。
健康の反対側を病だと決めつけていた。
病というものの姿を、固定概念でとらえていた。

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・306」

2014-08-20 19:15:40 | Weblog



カルテ番号 に・6(12)

「検査でハッキリしてから治療に来られてもいいですよ。
あるいは、別の治療を受けてもかまいません。
私の気功治療はどんな治療法とも併合できるのも特徴です」
西本功は今日はこれで帰ります、と言った。
もし再検査で癌ではなかった場合、気功で消えたと言うかもしれない。
癌など最初から無いのに、気功を受けるのもしっくりとこない。
癌と判明した時点で、もう一度考えてみようと思った。

「先生、一つ質問があります」
「なんでしょう?」
「例えば、予防、あるいは健康に気をつけていても癌になるのですか?」
院長は即座に言った。
「どんなことをしていても、病気になる場合もあります。
不摂生をすれば、その確率が高くなります。
健康に気を使えば、その確率が低くなります」

「どうして病気になるのでしょうか?」
院長は少し困った顔をした。
「これは私の考えですが・・・
通常、病は因果という原因が先にあって、その結果として不調になります。
ところが、何かを変える必要があり、通常の原因が起こらない場合。
先に病になり、そこから変化を迫られる場合もあるようです。
例えばブッダという人はお腹を壊して亡くなりました。
おそらく不摂生はないと思います。
でも、亡くなる為には病が必要だったのだと思います」


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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・305」

2014-08-19 19:17:04 | Weblog



カルテ番号 に・6(11)

「もっとも、病名を他人に告げていいのは西洋医学のドクターだけです。
病名というのは医者の符丁なのです。
東洋医学も病名をつけますが、西洋医学とは全く別の名前になります。
つまり、西本さんが自分で自分を風邪になった、というのはかまいませんが、他人を風邪だと診断するのは医師法に違反します。
私も、氣の感覚として癌と感じます、というのが正しい言い回しになります。
最初に説明したように、あくまでも氣の感覚としての診断です。
その先は信用おける病院でキチンとした検査を受けて下さい」

西本功は、最近検査を受けて、癌の疑いがあり再検査をする予定だと話した。
「そうですか。それなら結構です。
ただし、検査は治療ではありません。
自分で今の状態を納得し、そこから先を計画する為です。
重要なのは、その先にある治療回復への道です。
病からの脱却は幾つもの道があり、選択し実践するのは本人なのです。
病院任せ、治療者任せにしてしまうと、どんな道でも歩みが遅くなります」

その言葉は西本功が今まで思って実践してきたことと同じだった。
健康は自分で作りあげるもの。
病になっても、自分で回復する行いが無いと効果が薄い。
だから正しい食というものを実践してきたのだった。
同じ意味を言われたが、実践してきた自分が癌になったのはどうしてだろう。
解らないから正食を実践していたことは、まだ院長に話さなかった。


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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・304」

2014-08-18 21:03:59 | Weblog



カルテ番号 に・6(10)

高速道路を使えば1時間で行けるが、ゆっくりと一般道を走った。
運転しながら、いろいろ考えた。
だが、頭は堂々巡りばかりしている。
考えても何の解決も結論も出ないのに、悩む時は無駄な時間を過ごす。
そして、県北の山の中といってもいいような場所に着いた。

院長は西本功よりも若いようだった。
インチキくさくなく、特別に変な格好もしていなかった。
声も穏やかで、普通の静かな人にしか見えない。
簡単な記入事項を書いて、早速マットに仰向けになった。
事前に質問もほとんどなく、気功中は話しながらでもいいという。

西本功は最初から正食の事は話さないでおこうと思った。
本当に癌があるのか、それが気功で判るのか、と訊いた。
「ありますね。小さいけれど」
1分くらい触っただけで、院長はあっさり言った。
あまりに簡単だったので、インチキではないかと思った。
「でも、癌は怖くないですよ、結構簡単に消えますから」
ますます、インチキではないかと思った。

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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・303」

2014-08-17 19:26:45 | Weblog



カルテ番号 に・6(9)

妻も心配して、いろいろな情報を持ってきた。
男と女の違いだろうか。
功は正食のこだわりから現実を受け入れられない。
妻は正食へのこだわりから切り替えて考えているようだ。
男は理屈や理想への執着があるから現実の対応が遅れる。
女は何よりも現実に生きている。

妻の友人からの情報だ。
気功で難しい病が回復するという。
前々から知っていたらしいが、以前なら功に聞く耳はなかったろう。
健康は食で決められると思っていたのだ。
気功や他の健康法に頼らなくてもいいと思っていた。

もちろん気功といって、それをする人によるだろう。
どの業界でもそうだが、ピンからキリまである。
健康関係はインチキや詐欺まがいだって多い世界だ。
怪しい場合もかなり多いだろう。
功は正直、あまり乗り気ではなかった。
だが、妻の必死さに押されてしまった。


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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・302」

2014-08-17 15:11:42 | Weblog



カルテ番号 に・6(8)

西洋医学では癌は治らない。
西本功はそう思っている。
正しい食を学ぶほど、西洋医学の欠点が見えてきた。
癌は食で治る。
正しい食なら、癌にならない。
だが、癌の疑いが出てきた。
それでも、西洋医学では治らないという思いは変わらない。

検査は病院が適していると思っている。
ハッキリ病気だと数値が示してくれる。
だが、外科や緊急医療以外の多くの病に適しているとは思えない。
特に生活習慣病は食で治すのが最適だと思っていた。
とはいえ、その正しい食がわからなくなった。
西洋医学以外で、癌を克服したい。

インターネットで調べると、幾つもの方法がある。
あるが、インターネットは自画自賛で好きなように書いてある。
どれが信用できるのかは、その人の判断になる。
評判や評価がお金で付いている現状をしると、評判は当てにならない。
評判を前面に出しているところは、かえって怪しいくらいだ。
それは様々な店や企業なども同じだ。
利権がからむネットの情報は全く信用できないのが現状なのだ。


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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・301」

2014-08-15 18:35:34 | Weblog



カルテ番号 に・6(7)

2週間経っても体調は戻らなかった。
同じ症状が2週間以上続く場合は、何らかの病とみていい。
といって、近くの病院で店に来てくれる人と顔合わせは出来ない。
かなり離れた総合病院で検査を受けることにした。
自分に失望したようだった。

検査の結果が出るまでが、また悩みの期間でもあった。
正しい食から、心身が健康になる事は間違いないと思っている。
ただ、自分が何か勘違いしていたのかもしれない。
まだ知識が中途半端だったのかもしれない。
少し調子に乗りすぎて、見落としがあったのかもしれない。
もっと、勉強しなおさなければならない。

そして、検査結果が出た。
更に詳しい検査が必要だった。
癌の疑いがある、というものだった。
癌自体よりも、癌など絶対ならない食方法だったと自負していた。
それを30年もしてきたのだ。
なるはずがない・・・
西本功の精神は揺れて、不安定が増していった。


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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・300」

2014-08-14 19:25:43 | Weblog



カルテ番号 に・6(6)

どうしてなんだろう。
店だって、料理だって、食材だって良い。
一般に売っている食材とは大きく違うのだ。
それで調理した料理だ。
深い味わいがあるのに・・・
正しい食から正しい人格が形成されるはずなのに・・・
そんなことは息子だって充分に解っているはずなのに・・・

「マスター、最近顔色が悪いですよ」
従業員からも言われた。
息子の事や店の事などを知っている妻も、やはり心配しているようだ。
「アナタ、一度病院で検査受けてみたら」
会社を辞めてから、検診はしていない。
「大丈夫だ」
そう答えたが、自分でも胃のあたりが重く時々痛い。

お客さんには正しい食事なら病気にならない、と言ってきた。
それなのに自分が病になったらどうしよう。
正しい食事で病は治ると言っていた。
毎日正しく食べているのに、少しも楽にならない。
これまで信じていたものが、どんどん崩れているのを感じる。


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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・299」

2014-08-13 18:58:45 | Weblog



カルテ番号 に・6(5)

結婚を意識しているのだろう。
一緒に連れてきた彼女は、明るいが我が家の体型とは違う。
食べ物にこだわらない、と言っていた。
顔も丸く、体型もふくよかといっていい。
気持ちの良いのは判るが、正しい食生活ができるとは思えない。
そういう彼女を紹介した事もショックではあった。

店主の不調は店にも影響する。
何しろ正しい食材と調理で健康になるというコンセプトだ。
一家で約30年も実践して、自分達が証明だと言っていた。
西本功が早期退職を決意するまで、息子も同居していた。
その時までは、一家で痩せ型ではあるが、健康家族だと自負していた。

現代の基準からいえば、息子の体型は標準範囲だ。
だが西本功からみれば、健康的な体型とは思えない。
正しい食事をしていれば、余計な肉などつかないのだ。
正しい食事を普及させるのが、自分が知った健康への恩返しだと思っていた。
それが、身内から崩れていくのを感じていた。


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「風間陽水の依頼簿(カルテ)・298」

2014-08-12 19:28:41 | Weblog



カルテ番号 に・6(4)

西本功は最近、胃が重いと感じていた。
もちろん口には出さない。
胃の不調に良い食材と調理法も実践している。
それなのに少しも改善されない。
食べ物が原因のはずはなかった。

夜の寝つきも悪くなった。
更に途中で目が覚めると、なかなか眠れない。
思い当たる事はある。
店の経営状態だ。
そして、一年ぶりに帰省した一人息子の変貌だ。

都会に出て、一年で8キロ太ったという。
当初、食事は出来るだけ自炊していた。
正食を出す店も幾つかある。
だが、それにこだわるのは大変でもあったのだろう。
そして、何よりも子供時から一切食べさせなかったモノがあふれていた。
それらに興味があったのだろう。
ジャンクフードなど続けるはずがない、と思っていた。
本物の味を知っているから、すぐに嫌な味に感じるはずだ、と。
それが違っていたと本人から言われ、とてもショックだった。


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