嘗ての弟子、植村友之助は病を患った。
その体で、愚鈍だが人の善い為七を助ける。
5千石旗本の長男の凶刃を一本の畳針で防いだ。
根岸流の手裏剣の名手でもあったからだ。
小兵衛は病身の弟子に見舞いする。
そして、その後の旗本一派から守った。
今回の事件で亡くなった御用聞きの富五郎。
彼も元気な頃の植村に助けられた一人だった。
そうして事情を充分知った小兵衛だ。
故金貸し幸右衛門からの遺言で預かった家と金。
その家を植村に任せ、50両を富五郎の妻に見舞金として出した。
剣で人助けをした植村に、も一つ褒美を渡す。
そこには、古びた畳針が一つ。
「昔、わしが紙を綴じるのに使っていたものよ、見覚えあろう」
「せ、先生・・・」ありがたく、押いただいた植村。
他の人には変哲もない古びた針だが、弟子には宝物だ。
「ゆっくりと、お前が辿った道を書きしたためてみるがよい。
その一枚一枚を綴じる畳針じゃ」
「かたじけのうございます」植村の両目が潤んだ。
剣の師匠として、剣で人を助ける弟子に育った事。
教えの真髄を理解してくれた事。
小兵衛も嬉しかったのだ。
「真の師弟というのは、よいものじゃのう」
ワシもいつか、師匠にこう言ってもらえるようになろう・・・
(「いのちの畳針」より)
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