カルテ番号 ふ・5（18）
院長は少し困ったような顔をして
「まぁ、とりあえずマットに仰向けになって下さい。
気功をしながら、お話をしていきましょう」と言った。
気功をしながら、話をしてくれると原さんからも聞いていた。
仰向けになると、そっとお腹に触れ
「いいですね。とてもやわらかですよ」と褒めてくれた。
院長は少し考えた後、藤川良恵に訊いた。
「藤川さん、ヨガ実践者というのはどういう人なのでしょう？」
「ヨガという実践哲学を学び続ける人です」
「そうですね。いわば求道者ですね。
道を求め続ける人ですね。
その道は、真実の道かもしれないし、調和の極みへの道かもしれません」
藤川良恵は黙って聞いていた。
「私の師匠にあたる人は求道者として、生活の中で暮らしています。
特別な環境や特別な方法ではなく、暮らしの中でヨガを実践しています。
ヨガは普通の生活の中に活かしてこそ、ヨガである、という考えです。
ヨガ教室は入り口かもしれませんが、ヨガではない、という考えです。
師匠は素晴らしい人です。ですが、私は不肖の弟子を自覚しています」
（登場する人物・組織・その他はフィックションです）
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