カルテ番号 ふ・5（20）
藤川良恵は笑った。
「不マジメに深い意味があるのでしょうね。
先生がヨガ行者の道を歩んでいないのはわかりました。
では、先生は求道者でなければ、何を目指しているのですか？」
院長は即座に答えた。
「楽道ですね。
私は不マジメで、無精者ですから、道を楽しむ事を目指しています」
藤川良恵はその言葉を聞くとショックを受けた。
道は選択して歩むものだと思っていた。
その選択は、人により違うだろう。
だが、何らかの目的の為に選択して生きている。
あるいは、より楽な道、あるいは、より困難な道。
楽な道を選ぶのではなく、道そのものを楽しむ。
そんな考え方は、今まで無かった。
特にヨガにこだわってからは、より真実の道を求めた。
少なくても、道を間違わないように選択し続けた。
道の先を常に意識していた。
だが、院長の言葉は、道の先を意識していない。
（登場する人物・組織・その他はフィックションです）
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