伊勢に生まれ住んで数十年が経った。 しかし、伊勢神宮(内宮・外宮)の事となると、この町に伊勢神宮があって当たり前だという感覚で、物心のついた時分から育って来ているので、その起源(成立時期)や立地選定の謎などについて、これまで深く考えてみた事はなかった。
しかし、よく考えてみると、いつ頃からなぜこの地に二つの大神宮がセットであり、「天照皇大神」(アマテラスオオミカミ)を祀る皇大神宮の内宮(ないくう)と、「豊受大神」(トヨウケノオオカミ)を祀る外宮(げくう)が程近い場所(直線距離で北西に約4km)に鎮座し、伊勢市内には倭姫宮(皇大神宮別宮)を初め、月讀宮(皇大神宮別宮)や月夜見宮(豊受大神宮別宮)のほか、猿田彦神社、二見興玉神社等の立派な神社があるのだろう … 。
さらに近隣地域も見回すと、伊勢神宮に密接した摂社・末社や、伊雑宮(志摩市磯部町)や滝原宮(度会郡大紀町)など、格式の高い大きな別宮(大神の遥拝所)がある事も、不思議でならない。
既得の知識と言えば、両神宮共に20年に一度の御遷宮があり、事前に内宮の宇治橋の架け替えや、御用材等を運ぶ「御木曳き」と「白石持ち」(地元伊勢では、「白石曳き」とも言う)が、かつては神領民であった伊勢市民らが総出でとり行われて来た事と、唯一神明造りの本殿の千木や鰹木の形と数が内宮と外宮では違う事、そして金釘を全く使わずに造築が成されている事ぐらいである。
さらに、内宮は皇室(天皇家)に縁のある皇祖神でもあり、外宮はそのミツケガミ(食物の神 ・稲の女神)とされ、後年に丹波の国から、山頂に三重県下で最大の古墳がある高倉山(海抜116m)の北麓に移された事。 そして、古(いにしえ)には、天皇の名代であった斎王の館「斎王宮」が、内宮から西北西約20km程の所にあって、大神宮への古道の途中に離宮院(伊勢市小俣町にある斎王群行の休息地 ~ 現在は跡地が「離宮院公園」となっている)のあった事、… ぐらいであろうか。
又、後からのこじつけであろうが、内宮の東方に聳える朝熊ヶ岳(朝熊山・海抜555m)の山上(内宮からの直線距離約5km)には、空海によって開かれた「金剛證寺」があり、皇大神宮の鬼門を守る寺院とされている。
さて、この二つの大神宮(内宮・外宮)の起源については、いろんな文献や書物に詳しく記述が成されているが、「日本書紀」によると、元々大和の宮中に祀られていた皇祖アマテラスのご神体を、十代の崇神(すじん)帝の時、神威を畏れ、宮廷外の笠縫邑(かさぬいのむら)に遷され、さらに次代の垂仁天皇の折に、アマテラスの鎮座地をその皇女「倭姫」(やまとひめ)に探らせ、鎮座の地を求め大和の宇陀、近江、美濃をはじめ各地を巡り歩いた結果、伊勢に至り、五十鈴川のほとりに斎宮(いつきのみや)を建て、磯宮(いそみや)と名づけたとあり、これが伊勢神宮の起源だという。
神宮文庫の「神宮年表」には、それは垂仁天皇27年(BC 3年)で、「皇大神宮(内宮) 伊勢の地に鎮座」とあり、日本の歴史書によれば、弥生時代後の倭国が小国家に分立していた時代である。
そして、大和時代の雄略天皇23年(479年)に、「豊受大神宮(外宮)鎮座」とある。
そう言えば、倭姫の巡行地と称する場所が、畿内から東海にかけての各地にかなりたくさんあり、伊勢市に隣接する度会町川上の「乙女岩」(露岩)もその一つで、伝説では倭姫の腰掛けた巌(いわ)とされているし、当地の谷間には倭姫縁(ゆかり)の湧水(川上の名水)や休息地(和井野の神社)があって、伝説や伝承は後を絶たない。
さらに、伊勢神宮の周辺や近隣には、五十鈴川、宮川のほかに、祓川(はらいがわ・多気郡明和町)や西五十鈴川(伊勢市矢持町菖蒲)、日向(ひなた・度会町)、火打石(ひうちいし・度会町)、天の岩戸(「外宮」背後の高倉山山頂の古墳、及び志摩市磯部町の鍾乳洞「滝祭窟」)、天の岩屋(二見町立石崎・二見興玉神社の境内)、清渚(きよきなぎさ・二見町)などと言った特殊な地名があり、又、伊勢市内には御園(みその)や神園(かみその)、豊川(とよかわ)、二俣(ふたまた)、宮前(みやまえ・小俣町)、宮町(みやまち)、宮後(みやじり)、神社(かみやしろ)、お祓町(おはらいまち)など、大神宮に縁のある地名が幾つかある。
類似した地名群は九州の宮崎県にもあり、又、「元伊勢神宮」と称する場所等も全国各地にあるようだが、この内、特に京都府福知山市の大江山付近の場所は、内宮の立地選定の謎に迫る程、注目に値する。
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