伊勢すずめのすずろある記

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三重県下のペグマタイト鉱物の主産地を回想「 北勢地方・その1」

2022年07月31日 | 三重県下の鉱産地


水晶谷登山道の中腹に残存する 「蛍石坑」(日産鉱山)の跡 ~ 昭和50年頃に撮影 ~ 昭和50年頃に撮影

 三重県下で、鉱物採集を本格的に開始した昭和40年頃以降は、休み毎に産地に出向いていた。当時はまだ県内に、金属鉱山以外にもかなりの鉱山があり、その殆どはペグマタイト鉱脈の珪・長石を採掘していた小規模鉱山であった。

 三重県は南北に長く、東に長々とした海岸線を持ち、山地と平地が半々ぐらいの、農・林・水産業の盛んな県であり、当時の鉱業と言えば、大規模な金属鉱山として紀州鉱山(全国屈指の著名な銅鉱山)があっただけである。それ以外の大規模鉱山となると、いずれも非金属鉱山で、石灰岩を採掘していた北勢の藤原鉱山と国見山石灰鉱山(度会郡南島町村山)、そして苦灰石の北山ドロマイト鉱山(いなべ市北勢町北山)の3箇所に過ぎない。
 後は中・小規模の各地のマンガン鉱山や、丹生の水銀鉱山、チタン鉄鉱を露天掘りの潅水法で採掘していた名張鉱山ぐらいであり、他には珪・長石の採鉱場や亜炭坑、粘土山、磨き砂やバラストの採石場などは各地に幾つかあったが、その殆どが個人経営の細々とした稼行であり、鉱業とは程遠いものであった。


1962年・三岐鉄道発行の冊子 「北伊勢地方の自然」 ~ 鉱物採集情報満載


上載の冊子に掲載の 「路線略図」 ~  宇賀渓 鉱物採集とある.


 そんな訳で、昭和年代の鉱物採集は、どうしてもペグマタイトの珪・長石鉱山や鉱山跡に集中していたが、これらの鉱山では鉱石の石英・長石類以外にも、脈石として随伴するきれいな結晶鉱物や、複数種の希元素鉱物が多産していたので、何度行っても飽きる事はなかった。

 珪・長石鉱山以外にも、県内各地にペグマタイト鉱物の産地がいろいろと知られており、かつて探訪した主な産地を回想しながら、北勢地方から順に、何回かに分けて、三重県下のペグマタイトの主産地を列挙してみようと思う。


昭和50年頃に撮影の 「石榑南地方の風景」 ~ 中央右側の山が鈴鹿山脈の 「竜ヶ岳」


◆ 員弁郡大安町石榑南、宇賀渓 ~ 砂山 ~ 水晶谷一帯の産地
 当地方は、すぐ北の青川と共に、県内では古くから著名な鉱物採集の大産地である。青川の上流には、かつての大規模な銀・銅山であった治田鉱山跡があり、各種の金属鉱物と共に、スカルン鉱物やペグマタイト鉱物も産し、出向く度にいろんな鉱物が採集出来た。黄銅鉱や磁硫鉄鉱の鉱塊の転石は重たくて高品位であり、特に石榴石類は晶洞や晶腺にきれいな結晶を産した。


筆者の描いた 「地学研究」 誌に掲載の 「石榑南地方の地図」


 又、宇賀渓の入口付近には、ペグマタイトを掘った廃坑があり、支流のコハゲ谷ではスカルン鉱物も採集出来たし、何と言っても、砂山の登山道でトパーズや水晶、きれいなカリ長石の晶洞を探すのは楽しみであった。特に、水晶橋から登る裏登山道の谷沿いには「蛍石坑」の跡(日産鉱山跡)があり、残存していた谷川のズリからは、パンニングによって、きれいな蛍石を幾らでも採集出来た。


旧道の 「水晶橋」 手前から登る 「砂山登山道」 の入口 ~ 平成初期に撮影


砂山登山道のカッティンクに露出した 「蛍石脈」 ~ 昭和50年頃に撮影


 当地の「蛍石」は、保育社発行の「原色鉱石図鑑」(木下亀城 著)に、「ガドリン石」と共にカラー写真で掲載されていた事もあり、既に全国的な著名産地となっていたが、当地方は早くから藤原岳と共に三岐鉄道の観光地の目玉でもあり、同社発行冊子「北伊勢地方の自然」(1962年)には、鉱産地としての関係記事がかなりのウェイトを占めている。


筆者の採集した 「石榑南地方の鉱物標本」 の一部


青川産の 「灰鉄石榴石」 のきれいな標本 ~ 左右幅約6cm


 後年になって、蛍石坑下の水晶谷の奥で緑柱石を含む晶洞に出会い、アクアマリン級の緑柱石を10数本採集する事が出来たのは、その上方斜面の水晶の大晶洞の掘削と共に、忘れがたい回想である。
 当地には今も鉱物採集者が絶えず、県内きっての花崗岩ペグマタイトの大産地である事に変わりはない。
水晶の付いた宇賀渓のかつての土産物品「ミニチュア石灯籠の置物」 ~ 高さ約6㎝

◆ その他の北勢地方 (北部) のペグマタイト鉱物の産地
 福王山の周辺、朝明渓谷 ~ 釈迦ヶ岳の周辺、湯ノ山の周辺



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