伊勢すずめのすずろある記

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伊勢志摩・名物岩、謂れ石あれこれ

2010年05月22日 | 伊勢志摩国立公園の自然と風物

五十鈴川の神足石

勢州と志州

 伊勢・志摩地方は、昔はそれぞれ勢州(せしゅう、又はせいしゅう)、志州(ししゅう)と呼ばれていました。

県のほとんどが勢州

 かつての伊勢の国は、今の伊勢市のみならず三重県の北勢地方にまで及び、その殆どが勢州であり、外宮、内宮のある山田や宇治の町は、明治初期には度会県に属し、鳥羽は志摩国(志州)の一部でした。

勢州八奇石

 さて、江戸時代の古文書(古い文献)に、「勢州八奇石」なるものが記録されており、そのうちの幾つかは、伊勢志摩地方に集中しています。著名なものからあげると、「夫婦岩」(めおといわ・二見ヶ浦)、鸚鵡石(おうむいわ・磯部町のものが特に有名、他に度会町南中村にもある)、鏡石(かがみいわ・五十鈴川上流)でしょう。

鏡 石

 鏡石は、仙人下橋付近の五十鈴川の右岸にありますが、伊勢神宮の宮域ゆえ、昔のように見物に立ち入ることは出来ません。「伊勢参宮名所図会」や「神都名勝誌」など、昔の観光ガイドブックや郷土誌・史には必ず出ています。この岩の鏡の面(石鏡・いしかがみ)は、断層に伴う鏡肌(スリッケン・サイド)であり、昔は人の顔が写るほどピカピカだったと言います。このような名物岩は全国各地にありますが、「石鏡」と書いて「いじか」と読む地名が鳥羽市にあります。この漁村の沖合いには、岩礁のひとつに「鏡石」があって、崇拝の対象にもなっているようです。

奇岩・怪石の伝承

 さて、伊勢志摩で他の「石・岩」にまつわる話を続けると、ちょっとした名物岩に「獅子岩」(横輪町、横輪口バス停付近)、兜岩(矢持町下村)、鮑石(あわびいわ・五十鈴川上流)、立石(阿児町立神)、天狗の力石(二見町三津)、興玉石(二見町・立石崎の沖の海中)、不動岩(鳥羽市神島)などがあり、それぞれに言い伝えや謂れがありますので、地元を訪ねて、これらのエピソードを聞いてみるのも面白いと思います。

神足石

 さらに謂れのある石(奇石)を、取り上げてみると、五十鈴川の宇治橋付近の川原で江戸時代に発見されたと言う「神足石」(しんそくせき、又はじんそくせき)があります。これは小石の一部にV字形の欠刻を持つ、人の足の形やハート形をした特殊な礫(転石)です。形のよいものはなかなか見つかりませんが、今でも拾えますので、宇治橋より下流の川原で見つけて下さい。

信仰のみならず

 又、朝熊山の金剛証寺の境内に行きますと、崇拝の対象となっている「仏足石」がありますし、伊勢市古市の麻吉旅館(中之町)の下には「つづら石」があります。又、度会町には「火打石」(ひうちいし)という地名があり、かつての発火道具である火玉石(燧石・ひうちいし・ここの岩石はチャートです)の産地として知られています。

石に宿る思い入れ ~石の民俗誌~

 このような神石(しんせき)は全国各地にあり、道祖神のようなものから、神社や仏閣の御神体、時には天然記念物となっている巨石や露岩まで、色々です。果てには、隕石や特殊な鉱物、化石までもが登場し、昔の人々にとって石や岩はごく身近なものでもあり、その現れ方や形状によっては不思議な自然物として崇められ、謂れ話が出来、後世に言い伝わったのではないでしょうか。日本の国歌にも「さざれ石」(礫石と書く。但し、国歌に歌われている礫石は石灰角礫岩である)の巌となりて・・・ と、堆積岩が詠みこまれていますが、このような地質現象の経過を国歌にしているのは、世界中でわが国だけでしょう。

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