伊勢すずめのすずろある記

伊勢雀の漫歩…。
 伊勢の山々から志摩の海までの、自然史スポット&とっておき情報など…。
  感性の趣くままに-。

「伊勢すずめ」の名水紀行

2010年09月12日 | 伊勢志摩旅情

五十鈴川・法度口

 

伊勢志摩~奥伊勢に「涼」を求めて

 今年は、9月に入っても、残暑が衰えないどころか、夏の北太平洋高気圧の勢力が強烈で、日本列島をすっぽりと覆ったまま真夏の猛暑を長引かせ、いまだに熱中症を発症させている。とにかく、「涼」を求めて自然の真っ只中に出たい。さて、何処へ行こうか ・・・ となると、あまり人のいない静かな水辺となる。海・山のシーズンが過ぎたのに、週末や連休には、伊勢志摩のビーチには避暑やレジャーに訪れる人々が後を絶たない。山間の渓流や滝、観光鍾乳洞などもみな同じであろう。

 昨今は、「○○百選」とか、「△△紀行」とかのフレーズがよく目につき、里山や里野(さとの)や里海(さとうみ)、人里離れた千枚田(棚田)、古街道の並木道や峠路、山野辺の径(こみち)など、古風で鄙びた自然環境への憧憬と旅情が、乾ききった庶民の心中を魅了し、行楽へと誘っている。とにかく「涼」と「水」を求めて、伊勢志摩から奥伊勢にかけての各地を巡ってみた。

 

まず、「伊勢志摩・奥伊勢の三名水」を紹介しよう。

  1. 天の岩戸・水穴の流水(鍾乳洞の地下水流)・・・ 当地は、志摩市磯部町恵利原にある神話にまつわる散策の名所。神聖視されている鍾乳洞(瀧祭窟)の洞内滝より豊富な地下水が流出し、日本名水百選に選定されている。但し、弱度の硬水である。当地を訪れ、飲用に採水してゆく人も少なくない。
  2. 伊勢市宇治今在家町高麗広手前の湧水 ・・・ 高麗広に至る五十鈴川左岸の道路際に湧き出ており、癖の無い良質の湧き水である。口コミでその場所が知れ渡っており、車横付けの採水者が絶えない。眼下の渓流には、「鮑石」(鰒石。あわびいし、又はあわびいわ。さらに川上の「鏡石」とともに、五十鈴川上流の古来の名所)がある。内宮前から剣峠に至る県道を2.4km程入ると、すぐ右手に見える。
  3. 度会郡大紀町木屋の手前の湧水 ・・・ 水道水を飲み慣れている者には、とにかく冷たくて美味しい湧き水である。道路際の断層破砕帯の崖から湧き出ており、地元の木屋では昔から貴重な飲み水として利用している石清水(いわしみず)である。土砂崩れが頻繁な県道の道路際ゆえ、最近、この破砕帯を含む岩盤や崖錐から成る崖面全体がコンクリートでコーティングされ、頑丈な防護壁が出来たが、昔ながらの湧水はそのまま保存され、以前からあった地蔵尊を祀る為の小さな祠も、崖にくりぬかれている。正に「知る人ぞ知る」、霊験あらたかな「超名水」と言える。車を乗りつけ、ポリタンクをいっぱい持った遠方からの採水者が絶えない。場所は現地に行けばすぐ分るが、木屋の久保橋の手前約500mの地点である。

木屋の湧水

度会郡大紀町木屋の手前の湧水

 

次に、伊勢志摩近郊の五大瀑布を紹介しよう。

養命の滝

  1. 大 滝(伊勢市宇治今在家町高麗広、神路山)・・・ 神宮宮域林の山中にあり、地元の参詣者にしか知られていないが、伊勢志摩地方最大の古来の名瀑。赤色チャートの造瀑岩(ぞうばくがん)に懸かり、落差は目測で約20m。白布を垂らしたような見事な滝である。内宮前から高麗広の大滝口(当地には、高麗広公民館がある)までは、約8.4kmである。
  2. 養命の滝(伊勢市前山町)・・・ 前山町の「式部塚」から約1km村道を上った、亀谷郡川の源流付近の細暗い小谷にある小滝(大・小二つある)。滝壺のある左側の大きな滝が本来の「養命の滝」で、目測での落差は約4m。以前は縄注連縄が張られていたが、今はない。鼓ヶ岳の西麓にあたり、石墨千枚岩の岩盤に懸かり、古来、神聖視されている。当地へは、要所に道しるべがあるが、山に入る林道風の一本道をジャスト1km行くと、伊勢自動車道(高速道路)を跨ぐ陸橋に出る。陸橋を渡った所までは普通車が入るが、あとは山道を徒歩。約100m歩けば、右下に見える小谷奥の小さな二つの滝に行き着く。
  3. 飛 滝(伊勢市横輪町)・・・ 横輪町の山里散策名所のひとつ。以前はそばに「真如院」と記されたお堂があったが、今は崩壊している。目測での落差は約10mの小さな滝であるが、名前の通り造瀑岩の中ほどに突き出した岩棚に懸かり、飛び跳ねて落下している。横輪の在所奥のはずれから、北方の小谷に入る林道を約1.3 km進み、さらに車止めスペースから少し険しい山道を300m程辿る。(詳しくは、ブログのバックナンバーを参照して下さい)
  4. 切原の白滝(度会郡南伊勢町切原)・・・ 切原の山中にある、目測での落差は約15mの小滝。五ケ所川の上流にあり、あたり一帯は林間の閑寂な散策地として整備され、「白滝-大広山自然公園」となっている。白滝への道は、切原の在所から剣峠への県道を辿ると、分岐点等、要所に道しるべがあるので分かりやすい。白滝は不動尊を祀ることから、別名「不動滝」とも呼ばれているが、褶曲構造を伴うチャート層に懸かる構造性(断層)の滝で、造瀑岩に穿たれた滝幅は約2m。瀑頂部は節理や裂罅(れっか)に支配され、数段の階段状になっている。滝壺は長径約7m、短径約5mの勾玉形で、深さは通常1m程度であるが、底が小礫で埋まっている。(詳しくは、ブログのバックナンバーを参照して下さい)
  5. 白 滝(度会郡度会町野原新田)・・・ 宮川の支流、七洞岳(海抜778.3m)から流れ出る尾合川(おごうがわ)の上流にあり、林道際の岩壁に懸かる姿の美しい滝。落差は10数m程であるが、周囲の木々とよくマッチし、滝しぶきとともに、目栄えのする名瀑である。野原新田の在所から尾合川沿いの林道を5.5km程遡るが、桜のシーズンか紅葉の頃が良く映え、一度は眺めておきたい。

 

続いて、河川水のきれいな趣のある納涼地・三選を記すと、

  1. 愛洲の郷(度会郡南伊勢町五ヶ所)・・・五ヶ所川の河畔にある山城の跡地で、剣祖「愛洲移香斎」にちなんだ自然公園。用水路(水濠)として掘られた素掘りの隧道とともに、古井戸の跡などが見られる。(詳しくは、ブログのバックナンバーを参照して下さい)
  2. 彦山川の滝の堰堤(度会郡度会町火打石)・・・ 彦山川の谷川にある最大落差の石積みの堰堤(元は滝であった)。当地を訪ねると、すぐそばに用水路への導水路があり、ごく浅い素掘りの隧道が見られる。当地へは火打石の在所から、彦山川右岸の林道火打石線を400m程遡り、トタン小屋(倉庫)の所から藪道を少し下る。水音が聴こえるので、瀬音のする右下への藪道を行く。眼下に巨大な滝壺があり、スリル満点であるが、滑りやすいゆえ足場に要注意。
  3. 五十鈴川上流の法度口(はとぐち)・・・ 宇治橋の上流約800mの地点にある、五十鈴川の古名所。以前は清流の早瀬に、自然石の簡素な飛び石状の堰が築かれていただけであったが、現在は大幅に改修され、飛び石だった堰も隙間無く整然と並べられ、河床にも大きな自然石が敷き詰められ、落差のあった早瀬は、自然石を積み、両サイドに魚道を備えた独特の堰堤となっている。特に夏の朝夕は、河筋を渡る涼風とせせらぎが心地よい。ここは、かつて、これより上流は神域につき「不浄厳禁の法度」が立っていた所で、汚れを濯ぎ身を清める為の、内宮神域近くの古からの御手洗場(みたらいば)でもある。

 

最後に、よく整備された河川の親水公園を二つ紹介しよう。

  1. 藤川河畔の西の瀬公園(度会郡大紀町藤)・・・ 藤の在所にある西の瀬橋付近の河川敷を利用した親水小公園。地元では桜の名所として知られているが、最近護岸工事等の整備が成され、程良い水遊びの場となった。
  2. 松阪市森林公園内の堀坂川河畔(松阪市伊勢寺町)・・・ 森林公園内の水遊びの場として、堀坂川の川床を含めた河川の改修と整備がきれいに成されている。

 

 以上の他、あまり人の行かない隠れた池沼や溜め池なども含めて、さらに探ってみると、もっとよい場所が見つかるかも知れない。

彦山川・堰堤横の素掘りの導水路左・彦山川・堰堤横の素掘りの導水路
下・藤川河畔の親水小公園

藤川河畔の親水小公園

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