(1)最終処分場は、原子炉内で生まれた死の灰(「高レベル放射性廃棄物」)が詰まった核のゴミ置き場だ。
日本は、原発の使用済み核燃料をすべて再処理する方針なので、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す際に生まれる高レベルの放射性廃液をガラスで固めたものが、高レベル放射性廃棄物となる。
できたてのガラス固化体の表面の占領は、1,500Sv/時。7Sv(人が浴びれば100%死に至る)を20秒ほどで被曝するレベルだ。
最終処分場では、このガラス固化体を金属製の筒に入れ、地下300mより深い地下に埋める。
最終処分に係る法律が2000年に制定され、2002年、原子力発電環境整備機構が全国の市町村を対象に受け入れ先の公募を始めた。処分費用は電気料金からまかなわれる仕組みだ。ところが応募はなく、内々に検討していた場所も、東日本大震災で白紙状態に戻った。
かかる状況を受け、政府は2013年、地層処分の進め方の見直しにカンする議論を始めた。
(2)地層処分は、ほんとうに有効なのか。
ことに地震や津波が多い日本のような場所での処分は世界でも例がない。事前の調査で火山や断層を避けるといっても、完全に予測できるほどの技術精度はない。処分場を選定したうえで、安全性を確かめながら勧めていかざるをえない。
(3)廃炉を進めるにしても、放射性廃棄物の問題から逃れられない。
日本の法規制では、原子炉の寿命は原則40年。安全基準に合わせた設備投資を検討すると、経済性の見地から廃炉の決断を迫られる原子炉が出てくるのは必至だ。日本も「廃炉の時代」を迎えざるをえない。
廃炉作業は、運転終了後、使用済み燃料を取り出し、施設内の放射能の分布を確かめ、除染しながら取り壊しを進めていく。基本的な工程は、世界中で同じだ。
(4)国内の商業炉が初めて廃炉を決めたのは、1998年に停止した東海発電所(茨城県東海村、日本原子力発電)。2001年から廃炉作業を始め、2021年3月までに終了する(予定)。
廃炉に伴う廃棄物のほとんどは放射性物質で汚染されていないか、線量が一般人の年間被曝限度の100分の1のクリアランス廃棄物だ。法的には、許可を得て一般の廃棄物と同じように処理できる。
20万トンの廃棄物のうち、低レベル放射性廃棄物は14%程度と目される。
(5)現行法上、低レベル放射性廃棄物の処分法は3つある。
(a)浅地中トレンチ処分・・・・放射能レベルが極めて低い鉄骨、コンクリートなどを地表近くに直接埋める。
(b)浅地中ピット処分・・・・比較的レベルの低い廃液や消耗品などを地下10m程度に埋める。
(c)余裕深度処分・・・・低レベル放射性廃棄物の中でも比較的レベルの高いものは、十分な余裕を持った深度(地下50~100m)に埋設する。
(6)ただし、低レベル放射性廃棄物のうち、処分場が決まっているのは運転中の原発から出てくる廃棄物だけだ。(5)-(b)のみ。六ヶ所村にある日本原燃の埋設センターが受け入れている。原発の解体作業で出てくる廃棄物は対象外だ。
廃炉で出る廃棄物の処分に向けた(5)-(c)の安全性については、基礎的調査は終わったが、どう処分を進めていくかについては決まっていない。
原子力規制委員会は、2013年、放射性廃棄物の処分について新基準案を整備したが、廃炉に伴う炉内構造物の埋設に向けた基準については「先送り」にした。
基準が決まらないと廃炉が進められないわけではない。敷地内に保管する方法もある。ただし、地元自治体との兼ね合いから、永遠に「一時保管」することはできまい。
(7)扱いが決まっていない低レベ放射性廃棄物の「大型機器」はすでに発生している。
<例1>加圧水型原発で蒸気発生器や原子炉圧力容器で交換された上ぶた・・・・古いものが敷地内のコンクリート製建屋などに保管。
<例2>ウラン加工施設のウラン廃棄物。
<例3>研究炉にある廃棄物。
日本の放射性廃棄物の処分への対応は、パッチワークの連続だった。事業化を見据えた基準はなく、少しでも先のものは、様子見の状態のまま放っておかれてきた。
□服部尚(朝日新聞編集委員)「行き場のない廃棄物」(「AERA」2013年12月30日-2014年1月6日号)に拠る。
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日本は、原発の使用済み核燃料をすべて再処理する方針なので、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す際に生まれる高レベルの放射性廃液をガラスで固めたものが、高レベル放射性廃棄物となる。
できたてのガラス固化体の表面の占領は、1,500Sv/時。7Sv(人が浴びれば100%死に至る)を20秒ほどで被曝するレベルだ。
最終処分場では、このガラス固化体を金属製の筒に入れ、地下300mより深い地下に埋める。
最終処分に係る法律が2000年に制定され、2002年、原子力発電環境整備機構が全国の市町村を対象に受け入れ先の公募を始めた。処分費用は電気料金からまかなわれる仕組みだ。ところが応募はなく、内々に検討していた場所も、東日本大震災で白紙状態に戻った。
かかる状況を受け、政府は2013年、地層処分の進め方の見直しにカンする議論を始めた。
(2)地層処分は、ほんとうに有効なのか。
ことに地震や津波が多い日本のような場所での処分は世界でも例がない。事前の調査で火山や断層を避けるといっても、完全に予測できるほどの技術精度はない。処分場を選定したうえで、安全性を確かめながら勧めていかざるをえない。
(3)廃炉を進めるにしても、放射性廃棄物の問題から逃れられない。
日本の法規制では、原子炉の寿命は原則40年。安全基準に合わせた設備投資を検討すると、経済性の見地から廃炉の決断を迫られる原子炉が出てくるのは必至だ。日本も「廃炉の時代」を迎えざるをえない。
廃炉作業は、運転終了後、使用済み燃料を取り出し、施設内の放射能の分布を確かめ、除染しながら取り壊しを進めていく。基本的な工程は、世界中で同じだ。
(4)国内の商業炉が初めて廃炉を決めたのは、1998年に停止した東海発電所(茨城県東海村、日本原子力発電)。2001年から廃炉作業を始め、2021年3月までに終了する(予定)。
廃炉に伴う廃棄物のほとんどは放射性物質で汚染されていないか、線量が一般人の年間被曝限度の100分の1のクリアランス廃棄物だ。法的には、許可を得て一般の廃棄物と同じように処理できる。
20万トンの廃棄物のうち、低レベル放射性廃棄物は14%程度と目される。
(5)現行法上、低レベル放射性廃棄物の処分法は3つある。
(a)浅地中トレンチ処分・・・・放射能レベルが極めて低い鉄骨、コンクリートなどを地表近くに直接埋める。
(b)浅地中ピット処分・・・・比較的レベルの低い廃液や消耗品などを地下10m程度に埋める。
(c)余裕深度処分・・・・低レベル放射性廃棄物の中でも比較的レベルの高いものは、十分な余裕を持った深度(地下50~100m)に埋設する。
(6)ただし、低レベル放射性廃棄物のうち、処分場が決まっているのは運転中の原発から出てくる廃棄物だけだ。(5)-(b)のみ。六ヶ所村にある日本原燃の埋設センターが受け入れている。原発の解体作業で出てくる廃棄物は対象外だ。
廃炉で出る廃棄物の処分に向けた(5)-(c)の安全性については、基礎的調査は終わったが、どう処分を進めていくかについては決まっていない。
原子力規制委員会は、2013年、放射性廃棄物の処分について新基準案を整備したが、廃炉に伴う炉内構造物の埋設に向けた基準については「先送り」にした。
基準が決まらないと廃炉が進められないわけではない。敷地内に保管する方法もある。ただし、地元自治体との兼ね合いから、永遠に「一時保管」することはできまい。
(7)扱いが決まっていない低レベ放射性廃棄物の「大型機器」はすでに発生している。
<例1>加圧水型原発で蒸気発生器や原子炉圧力容器で交換された上ぶた・・・・古いものが敷地内のコンクリート製建屋などに保管。
<例2>ウラン加工施設のウラン廃棄物。
<例3>研究炉にある廃棄物。
日本の放射性廃棄物の処分への対応は、パッチワークの連続だった。事業化を見据えた基準はなく、少しでも先のものは、様子見の状態のまま放っておかれてきた。
□服部尚(朝日新聞編集委員)「行き場のない廃棄物」(「AERA」2013年12月30日-2014年1月6日号)に拠る。
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