語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読書余滴】世界vs.中国(1) ~世界のオピニオン・リーダーに聞く~

2010年11月04日 | 社会
 「週刊東洋経済」特集:世界vs.中国/KY超大国との付き合い方・・・・のうち、「世界のオピニオン・リーダーに聞く」というインタビュー記事が4編収録されている。ここでは、最初の2編を引く。

1 マーティン・ジャックス(ジャーナリスト、ロンドン大学LSEフェロー、中国人民大学客員教授)
(1)経済大国となる中国
 中国は、米国を抜き世界最大の経済大国になる。
 ゴールドマン・サックスは、米中のGDP逆転は2027年と予測しているが、もっと早い。2020年前後だ。

(2)「文明国家」
 「中国は発展するにつれ、西洋社会のようになっていく」という通説は幻想だ。中国は「国民国家」ではなく、「文明国家」だ。紀元前221年の秦の統一以後中国が「国民国家」だったのは、ここ百年くらいのものだ。
 西洋的「国民国家」と異なる点は、
 (ア)アイデンティティ
  「中国という文明の一員」という点に源泉がある。
 (イ)中国の国土・人口は巨大さ
  国内の富や文化のギャップが大きいため、中央集権的に統治できない。
  香港返還に伴う「一国二制度」がうまく機能している。
 (ウ)国家と人民との関係
  中国人は、政府を中国文明の権化かつ守護者だと見なして尊敬している。
  イタリアでは年中選挙しているが、イタリア人は政府を尊敬していない。
 (エ)民族意識
  中国人の約9割は、漢民族だという意識を有している。

(3)長期的見とおし
 中国は、短期的には模範的行動をとるが、長期的にはこれまで隠していた本来の姿を現す可能性が高い。そのインパクトは、英国から米国への覇権の変遷に比べて大きい。
 中国は海外権益を守るため海軍力を増強するだろうが、目指すのは朝貢制度だ。
 日本は、今の立ち位置を見直さなければならない。「アジアの復興と西洋の没落」という現状を踏まえて、日本は自らを「米国寄りの太平洋のパワー」ではなく、「アジアのパワー」と再定義するべきだ。


2 金燦栄(中国人民大学国際関係学院副院長、中国人民大学教授)
(1)尖閣問題
 なぜ起きたか。日本がルールを変えたからだ。1997年に締結した日中漁業協定を日本側が破ったからだ。
 しかも最近、日本は周辺海域にある離島25島の国有財産化を進めている。こうした動きから「今回の行動は周到に準備されたものではないか」という憶測を中国側に呼んだ。
 加えて、米国への不信感もある(黄海での米韓共同演習、南シナ海領有権問題への介入など)。「日米が組んで中国を取り囲もうとしているのではないか」という陰謀論を唱える人もいる。

(2)外交
 中国側の過度の反応の背景に、政府が直面する巨大なプレッシャーがある。過去30年間で、国家と社会の関係は激変した(「強い国家」と「弱い社会」から「強い国家」と「強い社会」へ)。9億人の労働者のうち9割は民間で稼いでいる。自由経済の進展により、中国の社会はより活発で多様化したものになった。
 かかる傾向は、中国の外交をより複雑なものにした。
 (ア)ネット市民
  インターネット・ユーザーは4.2億人で、その多くは「怒れる若者」たちだ。
 (イ)利益集団
  海外の権益保護を政府に求める。
 (ウ)地方政府
  海外投資の呼びこみから、「どう海外に投資するか」に興味が移った。
 (エ)外交に関連しない省庁
  海事局、漁業局、エネルギーに関連する部局が外交に口出しするようになった。

(3)集団指導体制
 小平以後、中国は最高指導者により統治される国ではなくなった。江沢民政権から、中国はテクノクラートによる集団指導体制へ変わった(過渡期)。胡錦濤から真の集団指導体制へ移行した。
 一人の個人が物事を決定できない。皆に権限がある一方、誰も最終的な責任をとらない。

(4)ナショナリズム
 過激なナショナリストは、人口の1%以下、せいぜい数百万人だ。しかし、海外メディアはこの少数派の国民ばかり焦点をあてる。率直にいって、ナショナリズムは日本、韓国、ベトナムよりも度合いが弱い。そもそも中国とナショナリズムは相性が悪い。
 共産党は、歴史的にナショナリズムと距離をとってきた。
 中国は56の民族が住む他民族国家だ。もし中国でナショナリズムを推進したら、“漢民族至上主義”につながり、少数民族から反発を招く。多くの場合、中国のナショナリズムは、外国からの圧力の反作用にすぎない。
 ナショナリズムは、政府への不満のはけ口になっているのは、確かだ。過去20年間、政府は商業面での利益を優先した政策を採ってきた。その結果、中国経済は急成長したが、社会的不公正、環境破壊、モラル低下が生じた。胡錦濤政権は、これらの問題に対処しようとしたが、あまり成果をあげていない。

(5)習近平政権
 2012年に習近平が国家主席となれば大きな政策転換が見込めるかどうか、わからない。中央政治局常務委員会の9人のメンバー中7人も入れ替わると言われている。きわめて新しい政権が生まれるが、どんなコンセンサスを持つのか、誰にもわからない。
 今後10年、中国は内向きな国になる。中国の誰も対外的に強硬姿勢をとりたいとは思っていない。あくまで最優先は国内問題だ。今後、中国はエネルギーを求めてさらに海外に出て行くが、脅威と見る必要はない。あと10年は大きく成長するとしても、2020年以降は高齢化などにより成長率が3~4%まで下がる公算が大だからだ。


3 エリザベス・エコノミー(米国外交問題評議会(CFR)アジア研究部長)
  (略)

4 ロバート・カプラン(ジャーナリスト、新米国安全保障センター シニア・フェロー)
  (略)

【参考】「週刊東洋経済」2010年11月6日号
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