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衆議院本会議で教育3法の反対討論に立った。ところが、出来上がってみると、どのように読んでも7~8分はかかる。仕方がないので、赤ペンを直前まで入れて5分の持ち時間に合わせた。ここでは割愛した部分も含めて、元原稿をアップしておく。今日は、法務委員会で裁判員制度に関わる法案、厚生労働委員会で「グリーンピア南紀事業頓挫」に関わる質問をした。詳細は後ほど。

07年5月18日衆議院本会議・反対討論(元原稿)

 社会民主党・市民連合を代表して、教育関連3法案(学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律案)対する反対の討論を行ないます。

 この衆議院本会議で趣旨説明が行われ、代表質問に私が立ったのが1カ月前の4月17日でした。20日に始まった特別委員会では、連日の審議が行われ、「教育」の現状をめぐる議論が行われました。しかし、日本の学校の姿が一変してしまうような重要法案を「スピート審議」で突っ走るのなぜでしょうか。

 それは、参議院選挙を前にして、安倍内閣が「目に見える実績」を形にしておきたいということ以外の何物でもありません。本来、教育問題への取り組みは長期的スパンで評価されるものであり、即席カップ麺のように結果を出すものではないのではないか。

 これからの日本社会の未来を託す教育問題で、「国民にとってインパクトのあるわかりやすい形」を出そうとして大きな混乱を生んでいるのが教育再生会議です。昨年、「いじめ自殺」が連続して大きな問題となった時に、教育再生会議の出した提言を見て、「これをやってしまったら大変なことになる」との危機感を持って自治体独自のいじめ対策に取り組んだというのが愛媛県松山市市長の地方公聴会
における意見陳述でした。政策通の自民党若手議員が有志で発表した『教育再生会議への7つの疑問』の中には、

「委員の中に教育をマクロにとらえる教育社会学や教育行政学の研究者がいない」
「ゆとり教育を見直し学力を向上させる――等の提言が、曖昧で議論に深みがない」
「学力低下の実証的論証がスポイルされている」
「これまでの教育のあり方を全否定しているところから議論を出発させている印象がある」
「規範意識の低下への対応として『高校の奉仕活動義務化』『大学9月入学制』など論理の飛躍と思われる唐突な提案が多い」
「教育ですべての問題を解決出来るという幻想にとらわれている」

 などの指摘をされています。「教育改革」の「改革」が必要だという結論にはまったく同感です。いわんや「親学」の提言に至っては、安倍内閣の迷走は、ここに極まっています。

「子守唄を歌いながら、母乳で育児」をはじめとした親学の提言にそんなに自信があるなら、国会に出てきてその論拠を主張してみたらどうでしょうか。安倍総理にいたっては、「親学緊急アピール」を先送りした理由についても明確に述べず「マスコミ報道でものを言わないで下さい」と逃げ続けました。国会に対しては議事録も論議概要も公開せずに、報道で論じるなとは何たる国会軽視でしょうか。レベルの低い未整理な議論をしている教育再生会議は即刻解散すべきではありませんか。

学校教育法改正では、新たに義務教育の「目標」が規定され、「我が国と郷土を愛する態度を養う」ことなどが目標とされます。これまで学習指導要領に記載されてきた内容まで詳細に書き込んでいますが、元来「徳目」事項は法律になじむものではありません。このようないわゆる「愛国心」の規定は、偏狭なナショナリズムの蔓延につながるおそれが極めて大きく、国家が国民の心の中に自由に出入りすることが出来るという錯誤を植えつける畏れが大です。

 また、校長、教頭の他に、副校長、主幹教諭、指導教諭などを設け、教職員の管理強化を図ろうとしています。佐世保事件など世間が驚愕する事件を取材してみると、問題は「外形的な取り組み」のシンボルである研修が増えて、
職員室で教員同士が語りあう時間や子どもの悩みと向き合って語る時間がほとんどない現実があります。

いま求められていることは、教員のモチベーションや質を高めるための運営能力の向上であり、管理職層を厚くしてピラミッド型の管理体制をつくることで、「教員の集団力」を職階で壊してしまい教師集団を分断することではありません。

 学校評価を導入し、学校間の競争を煽り、格差を拡大させ、こどもそっちのけの上目遣いの教師を増やし、教職員への管理統制を強める学校教育法改正は、教育現場の窒息状況に拍車をかけるものといわざるを得ません。

 地教行法改正は、地方自治法に規定されている「是正要求」を新設し、「指示」する権利を国が持つことによって国による管理を強化するものです。教育の中立性と教育行政の安定性の確保を目的とした教育委員会制度の否定にもつながりかねない、地方分権の理念と根本から対立するものであります。
 そもそも「いじめ自殺」「未履修」「タウンミィーティングやらせ問題」が昨年の教育基本法審議の中で話題になりました。これは、地方の教育委員会の責任に帰すものではなく、いずれも文科省の関与した問題ではありませんか。文科省への是正・指導こそ必要なのです。

教員免許法等改正によって、教員免許が10年毎の更新制となります。
教育免許更新制は教員を萎縮させないか。110万人の教員や415万人のペーパーティーチャーに「教壇への意欲」をそぐような結果にならないか。「特別免許状」の期限を撤廃し修身免許にしたのはつい最近のことで、教員への道を不当に狭めてしまうことになりかねません。

10年続く教員大量退職時代にこそ、教員への門戸を幅広く開けておかねばなりません。すでに教員志望者の減少の兆候が現れており、公教育からの人材流出も懸念されます。今回の免許更新制で志望者が増えるような要素はまったくありません。教育公務員特例法改正による人事管理の厳格化も、任命権者の恣意的な運用が行なわれるおそれが強く賛成できません。

本当に必要なことは、 少人数学級やきめ細かい教育には、教員の配置と予算増です。安倍内閣の教育再生の議論には、財務省の「教育予算」への態度を一変させるような強い姿勢が必要で、「金は出さないが口は出す」式の「教育改革」では現場の荒廃は必至です。

教育の危機、学力の低下は漫然と起きていない。「低学力ゾーン」の子どもたちと「高学力ゾーン」の子どもたちのバックグラウンドに収入・家庭環境の差が歴然としてある。「教育における格差の再生産」を是正するために、どうやって支援するのか。総理が「早寝早起き朝御飯で塾に行っていない子の学力もあがった」と答弁したのは具体性のなさの現れです。最近は、「再チャレンジ」という言葉も聞かなくなりましたが、「子どもの教育における格差の再生産」こそ早期に解消しておかなければならない最優先課題です。

 いま必要なことは教育現場への国の管理統制を強化し教師を圧迫することではなく、教育へ資源を重点配分し、教師が子供と向き合うゆとりをつくることであります。本教育関係3法案はまさに拙速であり、教育を破壊するものにほかならないということを申し上げて、本法案に反対する討論といたします。





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