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 世田谷発で「デザインナンバー」を

  • 保坂展人
  • 2014年11月17日
     

写真:児童虐待防止を目的としたナンバープレート(米フロリダ州) 児童虐待防止を目的としたナンバープレート(米フロリダ州)

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 11月17日午後1時半、世田谷区役所の中庭前に10台の車が勢ぞろいしました。一斉に幕を引くと、これまでの「品川ナンバー」から付け替えたばかりの「世田谷ナンバー」が並んでいます。ご当地ナンバーとしては、都内ではお隣の杉並区とともに初めての登場となりました。

 私は挨拶の中で「デザイン入りナンバープレート」の導入を訴えました。これは、ナンバープレートにデザインをこらしたもので、125ccまでのオートバイにはすでに各地で採用されています。ただ、私が考えているのは、これを機に、一般の自動車や126cc以上のオートバイにも広げていくというだけではありません。

 アメリカで行われているように、児童福祉、障害者福祉、あるいは環境・みどりトラストなど目的別にデザインされたナンバーを希望・選択して交付を受けると、その一部が寄付される、という仕組みを実現させたいと考えて、いま国に提案しているところです。

 アメリカの各州で広がっている「デザインナンバー」は寄付金とセットになっているものが多く、バラエティに富んでいます。たとえば、カリフォルニア州のヨセミテ国立公園の管理・維持にあてられているデザインナンバーの寄付金収入は年間1億円規模と聞いています。

 調べてみると、「国土交通政策研究第41号」(2005年1月)に掲載されている「NPOによるボランティアの支援方策に関する研究」(国土交通政策研究所)で紹介されていました。

 カリフォルニア州ではスペシャルナンバープレートと呼ばれる「デザイン入り寄付金付ナンバー」を1983年に導入しています。「ヨセミテ基金」「カリフォルニア州芸術協会」「子ども健康安全基金」「退役軍人基金」「消防士記念基金」「タホ湖保全事務所」「カリフォルニア海岸保全協会」「9・11犠牲者と家族のための基金」などがあります。(03年6月当時)

 スペシャルナンバープレートを申請できるのは州政府関連団体か認証NPOで、州議会の審議をへて立法化されます。ナンバー発行にかかわる手数料と配分ルールは、そのつど決められます。「ヨセミテ基金」はナンバー更新手数料から州自動車局の事務費用を差し引いた金額の半分を州環境部の「環境ナンバー基金」、残り半分をヨセミテ基金に支払うという仕組みです。また、「タホ湖基金」の場合は、手数料を差し引いた全額がタホ湖基金に入るという具合です。ただし、こうして議会にはかるという方式は、カリフォルニア州独特のもので、アメリカ各州によって制度設計は違うとのことです。

 こうしたデザインナンバーの実態を知るきっかけになったのは、国土交通省の「デザイン入りのナンバープレートに関するアンケート」でした。9月25日に開かれた「交通政策審議会陸上交通分科会」小委員会でデザイン入りナンバープレートの導入をめぐる議論に際して、かねてからナンバープレート活用に意欲の高い自治体のひとつとして意見を求められたのでした。

 アンケートが送られてくるまで、国土交通省でこのような議論が行われているとは知りませんでした。ただ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、特例の「デザインナンバー」を準備していることは知っていました。デザインが入るだけでなく、寄付金が上乗せされ、また新車に限らず、希望者には付け替えも可能にするというものです 。

 国土交通省からのアンケートに回答するだけでなく、世田谷区からの意見をまとめた要望書を国土交通大臣に提出しました。要望は次の2点に絞りました。

 「デザイン入りナンバープレートの交付が可能となるような制度の導入を早期に実現されたい」
「ナンバープレートのデザインや寄付金の目的・使途について、地元自治体と協議し、その意向を反映するとともに、寄付金が当該自治体の歳入として基金収入となる仕組みを構築されたい」

 ご当地ナンバーを導入した120自治体に送付された「デザイン入りナンバープレートについてのアンケート調査結果」では、「是非導入を検討したい」が34%(41地域)、寄付金付きナンバープレートは「是非導入を検討したい」が29%(35地域)となり、多くの自治体が「制度の具体化ををふまえて今後検討する可能性あり」と答えています。

 国土交通省自動車局に聞いたところ、意見をまとめた要望書を提出したのは世田谷区のみでしたが、具体的には12月以降の審議会小委員会で議論し、決めることになるとのことでした。

世田谷ナンバーのスタートにあたっては、反対の声もあがりました。「ご当地ナンバー」導入を進める全国120自治体で初めてのことでした。人口88万人、自動車保有台数20万台の世田谷区で独自のナンバープレートが生まれることに抵抗があるとしたら、「品川ナンバー」から「世田谷ナンバー」になり、ナンバーを選択できないという点に尽きるようです。

 自動車やオートバイを愛する人たちの中で「品川ブランド」という意識が強い人もいることは理解できますが、「ナンバーを選択できない」としているのは国の制度です。現在も「品川ナンバー」を選択しているわけではなく、地域によって割り当てられているだけです。

 「どこに住んでいるか知られたくない」という声もあがりました。居住地を明確にしたくないということであれば「東京ナンバー」の方がいいのでしょうが、ご当地ナンバー制度は「自動車数10万台以上」というハードルをもうけています。

 七つの県よりも人口が多い世田谷区で、「世田谷ナンバー」をつけることによって居住地を特定されるという問題が生じるとは考えにくいと思っています。というのも、125ccまでのオートバイは長い間、「世田谷区ナンバー」になっていますが、これまで特段の問題が生じたとの事例は聞いたことがないからです。

 世田谷区はこの2011年からの3年間で約1万7千人、今年に入ってからさらに6700人、人口が増加しています。しかも、5歳以下の子どもは5年連続で千人ずつ増え、介護認定で認知症とされた高齢者の方も毎年、千人ずつ増えています。こうした「交通弱者」が年間2千人増加している自治体を運営するにあたって、世田谷ナンバーの導入を機に安全運転の機運を徹底し、「やさしく走ろう世田谷」というキャッチフレーズのもと、死亡事故ゼロと重大事故の抑制をはかることができれば、と考えています。

 また、全国に広がる交流自治体を訪問する際に、「世田谷ナンバー」に対して特典を提供してもらうよう呼びかけ、観光施設やレストランの割引や、特産品プレゼント、宿泊時のワンドリンクサービスなどを、すでに六つの交流都市が決めてくれています。

 価値はつくるものです。硬直したように見える制度も永遠ではありません。世田谷ナンバーのスタートを機に、88万都市としての特性を生かし、「デザイン入りナンバープレート」を導入して市民参加型の寄付金文化を醸成するための取り組みに挑戦したいと考えています。

 ニュースで紹介されていましたが、全国の2286人にたずねた「第32回ご当地ナンバープレート人気ランキング」で、「世田谷ナンバー」は初登場で6位にランクインしたそうです。 これから、新たな価値をつくりだしていきたいと思います。

『世田谷発で「デザインナンハー」を (「太陽のまちから」2014年11月17日)



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