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明日何が起きるのか全部見せてくれる「魔法の鏡」があるとしたら、誰もが覗いてみたくなるだろう。古今東西、未来を予め知りたいという欲求は絶えることがなかった。それでも、私たちは「明日」に不安を感じて、「未来」に畏れと期待の入り交じった関心を抱く。大自然の力が人間を打ちのめす天変地異については、正確に知ることは出来ない。しかし、人間の意志判断の働く政治・経済・文化については、専門家が分析を続け豊富な判断材料を提示している。ある程度、ぼんやりとであれば、未来の姿を想像し、その様子・形状から今日の行動を決定することが出来る。

たとえば、2001年9月11日、ワールドトレードセンターに2機目の飛行機が激突する瞬間をソウルのホテルで見た時、「これは戦争になる」と思ったことを覚えている。しかし、この5年間ほどに深刻な事態に転化していくとは思わなかった。この瞬間から「イラク戦争」の準備が始まり、アフガニスタンのタリバン政権打倒は序の口に過ぎず、世界中で「イラク攻撃反対」の声が高まっていたにもかかわらず、2003年3月、米英の有志連合はイラク攻撃を開始した。

「この戦争には出口がない」「憎悪と復讐の連鎖が始まる」と多くの人が指摘した見解を私も持っていた。米国の中間選挙で、上下院で共和党が民主党に破れ、兵士の死者が3000人に達した今、私たちの予測は間違っていなかった。しかし、ブッシュ大統領・ブレア首相・小泉前首相は、どう予測していたのだろうか。「短期的にうまくいくだろう」と考えたとは思えない。アメリカには「ベトナム戦争」の記憶と傷跡があり、「泥沼化」の懸念は当初からあったのではないか。

それでも戦争が必要だった。客観的な情勢分析や合理的判断を超えた「欲望」がアメリカを突き動かした。別の角度から見ると、「9・11」によって軍需産業・軍請負業者・監視産業(対テロ産業)は破竹の勢いで拡大し、大きな利益を確保した。彼らは事業上の「未来予測」を的中させたとも言える。小泉政権と自民党も、先の中間選挙までは「ブッシュ政権」と一体化していることが、経済界をはじめとしたは保守層の「とりあえず得じゃないですか」という御都合主義とマッチしていた。

年末に読んだ一冊を紹介したい。『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』(堤未果著・海鳴社刊)は、「なぜあの国にまだ希望があるのか」とイラク戦争後遺症が始まっているアメリカ社会の苦悩と、高校生を軍にゲットするリクルーターの活動とその裏面に迫っている。堤未果は、「9・11」の瞬間、ワールドトレードセンターの隣にあった米国野村證券のオフィスにいて大混乱の中で脱出した経験を、『グラウンド・ゼロがくれた希望』(2004年・ポプラ社刊)に記している。イラク戦争を支える「兵力」がどうリクルートされて、帰ってきた兵士たちの多くが精神的な後遺症に悩まされて「放置」されている様子が描かれている。

そして、アメリカ版「教育基本法改正=落ちこぼれ防止法」がもたらした生徒情報の軍への提出について詳述している。(続きは明日)

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