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やはり新年は正月気分でいたいというのが本音で、この事件をとりあげるのは躊躇がある。しかし、東京の真ん中でこのような衝撃的な事件が起きているのは事実であって、事実を頭の中で遠ざけることは出来ても消すことは出来ない。報道によると、東京渋谷区の歯科医宅で短大生の妹(20)の遺体を切断した容疑で、次男(21)が逮捕されたという。「妹から『夢がないよね』となじられた」ことで殺害し、自宅で遺体を切断したと供述している……というところまで、ニュースで聞いた。

安倍総理大臣が今朝の年頭会見で「憲法改正をぜひ私の内閣で目指していきたい」と表明、参議院選挙の争点に掲げる姿勢を打ち出した。また「今年を、私は美しい国づくり元年としたいと思っています。日本が持っている良さ、すばらしさ、美しさを再認識する年にしていきたいと思います」と語ったいる。よほど、去年の記憶を消し去りたいのだろう。06年は「美しい国づくりゼロ年」だったのかと反問したくなる。憲法改正の一里塚として国民投票法案を通常国会で成立させて、参院選で「憲法改正」を争点化することで乗り切れれば、一挙に改憲日程が見えてくるということのようだ。日本経団連の御手洗会長が「美しい国」に呼応して、「希望の国」(御手洗ビジョン)というキャッチ・フレーズを放って、ぐいぐいと改憲・集団的自衛権行使解禁・企業での愛国心・公徳心の涵養などを語っているが、「戦後体制」を政経連携でブッ壊そうというアドバルーンだ。

先の遺体切断事件で「夢がないよね」と言われたことで殺意を抱いたという警察情報が真実だとすると、この時代が抱えてしまった「無力感」と「自虐意識」の底深さを物語っているように思う。「美しい国」と「希望の国」の執行官たちはいとも簡単に結論を出すだろう。「戦後が悪い」「憲法で強調されている過剰な権利感覚が青少年の魂を浮遊させている」「日本もアメリカを対等に助けて、自衛軍が血を流さなければならない」

私は、事件そのものを語ろうとしているのではない。佐世保で小学校6年生が同級生を殺害した晩に、佐世保に遊説に来ていた安倍氏は「教育基本法改正が必要だ」と事実も背景も知らずに明言をした。国会で私がこの根拠を追及すると、スルリと逃げた。しかし、彼らは改憲と集団的自衛権解禁を求める日米両国の「巨大な流れ」に乗っている。政治的メッセージは、その瞬間に人々の脳裏に印象を刻めば足りるのであって、深い分析が慎重な物言いは「国民煽動」には向かない。

私は「予感」に基づいて書いているだけであって、また政治家の誰かがこの種の発言をしたわけではない。残虐で猟奇的な事件が起きると、明快な解説で断言したいという誘惑に引きずられる政治家は数多い。とすれば、私たちは「夢がないよね」の残響が若者たちの深層意識にどのように届いていくのか。多くの若者の声を聞きながら、直視しがたい事実ときちんと向き合っていく覚悟を固めよう。

皆さんから意見も聞きたい。e-mail:info@hosaka.gr.jp



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