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先日お届けした「パリからの通信」の続きが、飛幡祐規さんから届いた。社会がヒステリックになり、国家権力に抑制がきかなくなっているのは世界共通の現象なのだろうか。大義名分があれば、何をやってもいいという国家権力の暴走は、言論の力で押しとどめていく以外にない。フランスも変わってしまった。だからこそ「サルコジ勝利」だったのだろう。新聞・テレビを見ているだけでは伝わってこない『時代のにおい』を飛幡祐規さんから通信は伝えてくれている。

[飛幡祐規さんからメール]

保坂展人さま

先日の話から展開がありましたので、報告しておきます。11月15日、フランス国鉄TGVカテナリーつり破壊の疑いで、「テロリスト」扱いの名目で検挙された5人の若者のうち、「首謀者」と宣伝されている若者とその彼女の2人を除く3人が
12月2日に釈放されました。弁護士は、この検挙に根拠がないこを示しているとコメント、残りの2人の釈放をよびかけました。

2人の若者の親、タルナック村の支援の会の抗議に加え、哲学、法律の専門家や知識人なども、疑いをかけられている事実(人命の危険を引き起こさない鉄道設備の破壊)と「テロリスト」の名目があまりにもかけ離れている異常さを指摘し、「反テロ」の名目で改正された「特例」刑法が言論と表現の自由を奪う危険性をもって
いると批判しています。

また、警察側発表を鵜呑みにして大げさに報道したメディアに対する批判も高まりました。検察側はまだ「テロリスト」扱いの名目を変えていなくて、身柄を拘束されている2人には家族の面会も許可されていない状態ですが、最近たてつづけに起きたいくつかの事件によって、 警察、憲兵、検察の民主主義国家とは思えない行為が明るみに出たために、多くの市民、またメディアにも官憲のいきすぎを危惧する動きが出てきたようで、タルナックの若者たちをテロリストに仕立てる策略は失敗したようです。

・そのうち一つの事件は、リベラシオン紙のジャーナリストで元発行責任者のフィリピ氏が、ある記事に関する名誉毀損の件で大審裁判所に出頭しないという名目で、11月28日の朝6時40分に自宅に警官がきて、14歳と10歳の息子の前で連行された。その郊外の警察署で手錠をかけられ、パリの裁判所では2度も裸にされて「身体検査」を受けた。この名誉毀損の件は既に2度もリベラシオン側が勝っていた、また判事の呼び出しには弁護士がふつう行くことになっている。判事は、3度も呼び出したのに出頭しないから「連行状」を出したと弁解しているが、弁護士によれば呼び出し状は見ていないし、新聞と弁護士に連絡すればいいものを、それはなくて自宅に警官を向かわせた。

早速リベラシオン紙でこの事件が報道され、すぐに与党、野党から批判の声があがり、保守新聞(サルコジの友人所有)のル・フィガロ紙さえ批判の記事を載せた。ところが、ダティ法務大臣と アリオ=マリ内務大臣は「判事は法律どおりの行動をしたにすぎない」とコメント。あまりに非難が大きかったので、サルコジが
「ジャーナリストの動揺はよくわかる、プレス関係の違法行為を刑法ではなく民法で扱うような調査委員会をつくる」とすぐに反応した。

・もう一つのとんでもない事件。11月19日、ジェルス県マルシアックの中学のクラスに「麻薬予防」の名目で犬を連れた憲兵が来た。中学生たちのカバンなどを犬がかいで、疑いのある生徒は廊下に出されて身体検査を受けた。誰からも何も発見されなかったが、 そのうち3年生の女の子は(鼻ピアスをしていたためか?)しつこい身体検査を受け、ブラジャーやパンツの中まで調べられた。それをきいた父親が インターネットにこのことを訴え、ある新聞が報道したことから大々的に問題になった。

この県では検事正の女性がこの「麻薬予防」の方法を進めていて、ほかにも何校かで同じことが起きていた。これについては内務大臣は的確な方法でないと批判を述べた。というようなことが次々に報道され、これらはサルコジが進める一連の「監視せよ罰せよ」の政策と言説によって、警官、 憲兵、検事、判事などが「何をしても大丈夫」と自分の権力にものを言わせる風潮をよんだと解釈できるでしょう。

サンパピエ(滞在許可証のない外国人)に対する非人間的な扱い、外国人や移民二世に対する警官の侮蔑的扱いが、一般市民、さらには一般の人より特権的だと思われている地位のあるジャーナリストにまで及ぶということに、ショックを受けた人が多いのではないかと思います。そして、左派や人権団体にかぎらず一般の市民、さらに与党、保守陣営からも「いきすぎ」という声が出るようになったほど、法治国家から警察国家への移行が進んできているともいえるのかもしれません、

それでは、長くなりましたが、また。

飛幡祐規

[引用終了]



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