事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「俳優 亀岡拓次」 (2016 日活)

2016-03-18 | 邦画

思えば「水曜どうでしょう」(HTB=北海道テレビ放送)はすごい番組だった。

北海道ローカルの、あの無茶ぶり旅番組が全国を制覇。何度見ても面白いんだもの。仕掛人的存在の鈴井(ミスター)貴之の「ダメ人間」「ダメダメ人間」(メディアファクトリー)を読むと、この人は確かにダメ人間で(笑)、奥さんがいなければ何もできないのではと思わせる。しかし彼が札幌で悪戦苦闘した結果、あの大泉洋という天才が出現したのだし、そして安田顕が登場できたわけだ。

「水曜どうでしょう」ではonちゃん(HTBのマスコット)の着ぐるみのなかで大泉にボコボコにされ、「みんな!エスパーだよ!」では神楽坂恵の胸をもみまくっていた(心底、うらやましかったです)あの安田が、この映画でみごとな演技を見せている。

無名というわけではないが主演をはるほどではない俳優、亀岡拓次(安田)の日常を淡々と描いたこの作品は、しかし監督があの「ウルトラミラクルラブストーリー」の横浜聡子だからまともには進まない。亀岡の生活と撮影現場、そして彼の妄想が少しずつにじんでいく、そのあたりが妙味。

そんな設定なので、画面には常に亀岡がいて、他者の視点はいっさい挿入されない。観客を亀岡に強引に同化させるのだ。なさけない亀岡のふるまいは、誰からも愛されるたぐいのもので、だから亀岡は一種の天使、あるいは寅さんのように見える。

しかしそれを否定するかのように、横浜は亀岡にゲップだの、もらいタバコだの、果ては紙おむつまではかせて聖人っぽさを消している。なかなかの計算だと思う。

「ミシェル・ポワカール、あるいはラズロ・コヴァックス」

こんなディープな映画ファン向けのくすぐりもあれば、諏訪の居酒屋の女性(麻生久美子)にプロポーズするために原チャリで向かうという「水曜どうでしょう」マニアへのサービスもあって観客を幸福にしてくれる。

意外な大女優の胸をやっぱりもみしだいたり(神楽坂恵とは違った意味でちょっとうらやましい)、監督役の山崎努がすっかり黒澤明だったりする小ネタも泣ける。観た人はみんなこう思ったはずだ。続篇はできないのかなあと。亀岡がいまどうしているか、みんな気になって仕方がないはず。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ブラック・レインがわからな... | トップ | 真田丸 第十一回「祝言」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

邦画」カテゴリの最新記事