前号で東宝の好調と東映のどん底ぶりを報告した。これは2003年の9月に記したことを、そのまんまブローアップしただけの事実であることが悲しい。東宝がなんとか持ち直したのにくらべ、東映ときたらもう逆襲どころの話ではないのである……
ことの善し悪しはともかく、日本映画界を今ささえているのはアニメーションだ。「踊る大捜査線2」が興行収入の記録を作ったといっても、これはあくまで実写作品の話。もちろんその上には「もののけ姫」と「千と千尋の神隠し」がそびえている。世界における日本文化とは、今やジャパニメーションが代表で、実はものすごい輸出産業でもある。
大ざっぱに近年の歴史をふりかえると(異議があったら突っ込んでね)、東映動画部が「白蛇伝」や「長靴をはいた猫」などの傑作を作り上げ、「まんがまつり」→「アニメまつり」と黄金時代を築き、人材として宮崎駿などのジブリ系を輩出した。東宝がこの牙城を切り崩したのは、何といっても「ドラえもん」の登場による。一時の勢いはなくなったとはいえ、今でも毎年20~30億かせいでくれる存在は大きい。この四半世紀、東宝は3月の番組をまったく気にすることなく、他の実写作品で安心して赤字をたれ流すことができたのだから。
そして今や、東宝のアニメ戦略は盤石だ。( )内は昨年(2002年)の興行収入。
1月 犬夜叉(15億)
3月 ドラえもん(23億)
4月 名探偵コナン(34億) クレヨンしんちゃん(13億)
7月 ポケットモンスター(27億)
8月 ジブリ系(65億)
12月 とっとこハム太郎(これはゴジラがメインだが……27億)
黄金のラインナップ。昨年の日本映画の興行収入ベスト5はみな東宝のアニメ。実写の出る幕なし。東映がこれに対抗するには、「仮面ライダー」と「ワンピース」をよほど大事に育てるしかない。
しかしこのメンツを見て、少しさみしくなる。【テレビで人気が出たら映画化】【テレビは一種のアンテナショップ】こんなセオリーが固まりつつあるようだが、いくらなんでも映画オリジナルのキャラがジブリだけというのはどんなもんだろう。この状態はアニメの将来を危うくしていると痛切に感じる。将来の観客を育てる上で、「おなじみのキャラを劇場に確認しに行く」だけの風潮は、業界の怠慢とそしられても仕方があるまいに。
だいたいさあ、こども向けの映画は、親もいっしょに見に行くわけだから入場者数は初手から倍は見込めるし、キャラクターグッズの収入も加わるんだからおいしい商売であることは素人にもわかる。それなら、もっと時間と金をかけてせめて丁寧につくらんか!
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