事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「A.I.」Artificial Intelligence ’01 米

2007-10-18 | 洋画

Ai  いちずな映画少年だった頃、いつも授業の最中にノートのすみに書き込んでいたのは“これから公開される楽しみな映画のタイトル群”だった。一度見つかってしまい、今は(当時)酒田東高の校長をやっている現代国語の教師から「堀、集中しろ。Brinksなんて書いてないで(笑)。」と叱責された。私は翌年に公開される予定のピーター・フォーク主演のBrinks’ Job(邦題『ブリンクス』)を期待していたのだが、授業がおわってから悪い友達に「ホリィ、ぶりんくすってなにやぁ?」(エッチな意味あるんだろ?)と訊かれたのにはまいった憶えがある。

Sq  スタンリー・キューブリックが「A.I.」(人工知能)というSFの企画を発表したのは十年ほど前。結局その企画は「アイズ・ワイド・シャット」が先行したことで延期され、彼が死んでしまったことでこの映画は幻のものになると思われた。キューブリックが本格的なSFを撮るとすれば「2001年宇宙の旅」以来だったわけなので、実は私もすごくがっかりした。でも、その企画をスピルバーグが引き継ぐ!と驚天動地の発表があり、映画ファンを狂喜させたわけだ。あの頃の私だったら、ノートいっぱいにAIAIAIAIAIAIとでも書き込んでいただろうか。それくらいの夢の企画。

 でもこのプロジェクト、スピルバーグもよくのったと思う。うまくいったとしても手柄はおそらくキューブリックに捧げられるだろうし、駄作でも作ろうものなら世の中のキューブリックファン(おそらく映画ファンの中で一番オタク度が高い)から袋叩きだ。
で、どうだったか。

んもう予想を遥かに超えてスピルバーグの映画そのもの。ピノキオを下敷きに(「未知との遭遇」には「星に願いを」が使われてた)、事実上の父の不在(スピルバーグの幼少時代の投影)、少年の孤独を癒す異物(ETとはタイトルまで韻をふんでいる)、人種差別告発(メカと有機……カラーパープル、シンドラーのリスト……ってこれはこじつけが過ぎるな)といった具合に、もうスピ印のキーワードてんこ盛り。うーんどうでしょう。キューブリックフリークの方々は怒らない?いくらなんでもキューブリックの匂いが希薄すぎるというものではないか……。

注:ここからはちょっとネタバレ。

Stevenspielberg 最後の「記憶の部屋」が、まんま「2001年~」だったのは嬉しいし、未来人の移動手段が“モノリスの集合体”だったのには笑ったが、キューブリック印がそれだけなのはなあ。中盤の残酷ショーがやり過ぎだったり、“ブルー・フェアリー”だけが少しも劣化しないとかは、とにかくおとぎ話にしたかったスピルバーグの我がままなのだろう。それは我慢するとしても、嫌味なくらいうまいハーレイ・ジョエル・オスメント(この、のび太に愛されないドラえもん役は、そりゃあもう嫌味だぞ)の幸福な寝顔でおわるラストも、そう後味のいいものではない。平日の午後なのに結構入っていた客(私はまた審査帰り)はみんなグスグス泣いていたので満足して帰ったのかもしれないが、意地の悪いキューブリックファンとは実は私のことで、どうも釈然としない思いで劇場を出たのだった。あ、それから観客の方々にお願い。エンドタイトルは最後まで見よう。今回はキューブリックへのオマージュがあるのは分りきっているでしょうが。声の出演が意外な大物なのにも気づけるし(あーイヤなオタクだな俺は)。

アメリカでは予想したほどのヒットにはならなかったようだけれど、少なくとも日本では大うけすることと思う。ストーリーはひとことで言えば“母をたずねて二千年”。母子モノは日本人向けだから……。

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