Vol.25「権力の墓穴」はこちら。
刑事コロンボがアメリカ西海岸の、特にロサンゼルスが舞台であることを再認識させてくれる作品。今回の事件には、70年代初頭の“不健康なまでに健康を追及する”フィットネスブームが背景にあるからだ。
犯人は、不正な蓄財を行っているためにオーナーから訴追されそうになっているフィットネスクラブ社長(ロバート・コンラッド)。彼はオーナーを、エクササイズ中の事故に見せかけて殺す。
コロンボがこのクラブにやってきた瞬間に作り手の意図がみえる。健康が最優先される(しかも巨額の金をかけてダイエットする)場所に、不健康そのものであらわれる刑事。みごとな肉体をほこる犯人に
「……53才ですかっ!」と驚き
「あたしゃ35から腹が出ちゃってる」と嘆くコロンボがかわいい。
雨がふらないことで有名なロサンゼルスで、常にレインコートを着ている刑事の特異さも際立ち、同時に、西海岸における『健康病』に異議をとなえている。
犯人は頭も筋肉かといえばそんなことはなくて、録音テープなどを用いて警察を翻弄する。コロンボも、自分が靴の紐を結んだときと他人がやったときでは輪が別の位置にくるなどの細かいネタで応戦。
今回の白眉は、コロンボが犯人を最後に追いつめる理屈。なんとめずらしく考えオチなのである。犯人が鉄壁のアリバイをつくりあげたからこそ、ただひとり、犯人自身が追いつめられてしまう……文字どおり自縛の紐(原題はAN EXERCISE IN FATALITY……死のエクササイズ)にからめとられてしまうのだ。見終わって「ん?……あ、そっかー」と納得。たまにはこんな本格っぽいのもいいかも。レベルの高い回です。
Vol.27「逆転の構図」につづく。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます