4月号「扶養手当」はこちら。
4月の初め、学校教育課から電話がかかってくる。
「あの……」
「……はい?」
「どうもすみません」
一瞬にして悟る。“あれ”がやってくるのだと。
◆
あれ、というのは学校事務の業界では有名な市の定期監査。5月中旬という時期がしんどいのと、その内容もまたしんどい。
例年、現金管理に問題があるとか集金の在り方がなっていないとかが指摘され、某校などはほとんど難詰状態、某校ではけんか腰……退職までやってこなければいいなあ、と日頃から邪悪なことを考えていたむくいが。だいたい、去年が県の監査で今年は市って、どこまで狙われてるものだか。
事前に教育委員会の職員が書類をチェックしながら
「うちの監査事務局にはね、フリクション(こすると消えるボールペン)を使っているかひと目で見破る人がいるんです」
「書類をバァーッとながめて、すぐわかっちゃうらしいんだなあ」
そんな超能力者を相手にするのかよ(泣)。日頃さぼっているために、らしくなく残業、らしくなく休日出勤。ふううう。
◆
さあサイキックたちがやってまいりました。簿冊審査には事務職員がひとりで4人の監査員に立ち向かわなければならない。査問か。
「○○の通帳を出してください」
いちばん見られたくない部分からスタート。やっぱり超能力者なのか。ことここに至ってようやく事務補助も事務室でびびっている。
「だいじょうぶだよ」
「なんでですか」
「おれ、このYシャツ着てるから。」
「は?」
「おれさあ、このシャツを着ると、どんな時でもどんなことでもうまくいくんだ。」
「……。」
◆
「避難計画はどうなってますか個人情報保護はちゃんとやってますか不登校の状況は教育支援員の配置と費用対効果は特定の業者の取扱高が大きいようですが財務システムの決裁はどうなってます給食費の未納の実態は収入調書はちゃんと作成してますか学校集金の監査状況は物品の検収の状況を教えてくださいところでこの伝票の紙の色は白すぎないですか」
てな質問の嵐をなんとかいなすことができたのは、やはり勝負服のおかげ。だいたい、いちばんきつい部分の監査にやってきたのが中学の同級生だったなんて奇跡は、なかなか起こるものではありません。
◆
四日後の本監査もこのシャツ着用。実は妻が不在だったため、クリーニングもしないで着ていたんです。どうもすみません。
画像は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」(MARVEL=ディズニー)
監査があろうと映画は観る。原題は「リミックス」ではなくて「Vol.2」。1作目で主人公のお母さんがつくっていたベストテープ(死語)にはVol.2があった!というノリ。グレン・キャンベルの「哀愁の南」とシルバーの「恋のバンシャガラン」に爆笑。50才以下の人は絶対に知らない曲。実はこの映画、なんと最後に泣かせます。
2017年6月期末勤勉手当号「空白の一日」につづく。
でもあれ、わかりません?
めっちゃわかるけどなあ。
机のなかに、インクのなくなったフリクションを持ってて、怪しいやつはこっそりこすってみたりする。
ああ、やな奴です。
「この後ろに消すのがついてるペンで公文書書かんといてください」
ああ、やな奴。
業者にフリクションを使わないでと
言ったこともない。
まず、消せるボールペンを使おうって
根性がおれは許せない……便利そうよね(笑)